栃木県で働く人の年間総実労働時間は、令和7年で1,666時間でした。全国平均は1,621時間なので、栃木は45時間長いことになります。しかもこの差は、前年の30時間から15時間広がりました。全国が22時間減らしたのに対し、栃木は7時間しか減らなかったためです。時間を取り戻す先は、現場の作業よりも、その前後にぶら下がっている書類仕事にあります。
栃木の労働時間を数字で押さえる
全国との差は45時間に広がった
栃木労働局が令和8年5月にまとめた労働時間の現状(PDF)によると、令和7年の県内労働者1人平均の年間総実労働時間は1,666時間で、前年より7時間減りました。同じ年の全国は1,621時間で、前年より22時間減っています。

その結果、栃木と全国の差は45時間。前年の差は30時間でしたから、1年で15時間開いたことになります。数字の出どころは毎月勤労統計調査(厚生労働省・栃木県、事業所規模5人以上)です。
| 区分 | 栃木県(令和7年) | 全国(令和7年) | 差 |
|---|---|---|---|
| 年間総実労働時間 | 1,666時間(前年比7時間減) | 1,621時間(前年比22時間減) | 45時間 |
| 年間所定内労働時間 | 1,537時間(前年比12時間減) | 1,504時間(前年比19時間減) | 33時間 |
| 年間所定外労働時間 | 129時間(前年比5時間増) | 117時間(前年比3時間減) | 12時間 |
所定内と所定外を分けて見る
差の内訳を見ると、所定内が33時間、所定外が12時間です。所定内は決められた勤務時間そのものなので、就業規則や年間休日の設計を変えないと動きません。一方の所定外、つまり残業は、仕事の中身を変えれば動きます。
そして栃木の所定外は、全国が3時間減らした年に、5時間増えて129時間になりました。全国と逆向きに動いた唯一の項目がここです。手を付ける順番としては、まず所定外から見るのが現実的です。
長いのは建設・運輸・製造|産業別に見る
総実労働時間で県平均を上回る3業種
同じ資料の産業別を見ると、県内で最も長いのは建設業の2,057時間、次いで運輸・郵便業の1,997時間、製造業の1,876時間です。いずれも県内の全産業平均1,666時間を上回っています。

短いほうは、宿泊・飲食サービス業が1,042時間で最も短く、次いで卸売・小売業1,544時間、医療・福祉業1,549時間と続きます。短時間勤務の人が多い産業ほど平均は下がるため、この数字だけで「楽な仕事」と読むことはできません。
全国と比べると、栃木の建設業は全国より139時間長く、運輸・郵便業は65時間長い、という差が出ています。逆に金融・保険業は全国より54時間短く、宿泊・飲食業は14時間短くなっています。全国では運輸・郵便業(1,932時間)が最長で、建設業(1,918時間)がそれに次ぎます。栃木は順位が入れ替わり、建設業が突出しています。
所定外だけを取り出すと差はもっと大きい
残業だけを抜き出すと、差はさらにはっきりします。県内の所定外労働時間は、建設業270時間・運輸・郵便業252時間で、県平均129時間の2倍前後です。反対に医療・福祉業は43時間、宿泊・飲食サービス業は52時間、卸売・小売業は72時間と、県平均を下回ります。
建設業で年270時間ということは、月あたりおよそ22時間。ここには施工計画書、安全書類、日報、報告文といった書類が確実に含まれています。栃木の建設業でどの書類から手を付けるかは、栃木の建設業|生成AIで書類作成を軽くする7場面で場面ごとに整理しています。運輸・郵便業については運送業で生成AIが使える6つの書類業務を先に読むと、法定の記録との線引きが分かります。
人を増やして時間を分ける道は、いま細い
有効求人倍率は1.09倍で全国35位
「人を採って分担すればいい」という手は、いまの県内では取りにくくなっています。栃木労働局の最近の雇用失業状況(令和8年7月分・PDF)によると、令和8年7月の有効求人倍率は季節調整値で1.09倍、全国順位は35位でした。同じ月の全国は1.18倍です。
原数値で内訳を見ると、月間有効求人が35,354人分で前年同月比4.0%減、月間有効求職者が33,298人で前年同月比2.1%増。求人が減り、求職が増えたことで倍率が下がっています。
正社員の0.98倍は、そのままの意味で読まない
正社員に絞った有効求人倍率は0.98倍でした。ただしこの数値には注意書きがあり、分母となるパートタイムを除く常用の求職者には派遣労働者や契約社員を希望する人も含まれるため、厳密な意味での正社員求人倍率より低く出ます。数値をそのまま「正社員の口が足りない」と読むのは行き過ぎです。
いずれにせよ、市場全体の倍率は自社の状況を表しません。募集を出す前に自社を管轄するハローワークの数字を見るところは、求人票と採用文書の生成AI活用6場面で扱っています。この記事では、採用の前にやれる「総量を減らす」側だけを扱います。
法律が決めている上限と、年5日の年次有給休暇
時間外労働の上限規制
厚生労働省の働き方改革特設サイト「時間外労働の上限規制」によると、残業時間の上限は原則として月45時間・年360時間です。臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合でも、年720時間以内、複数月平均80時間以内(休日労働を含む)、月100時間未満(休日労働を含む) を超えることはできません。原則である月45時間を超えられるのは年間6か月までです。違反した場合には罰則(6か月以下の懲役または30万円以下の罰金)が科されるおそれがあると明記されています。中小企業への適用は2020年4月からです。
建設業の年270時間という所定外は、月平均に直すと45時間の枠内に見えますが、繁忙期に寄っている職場では特定の月が枠を超えます。年の合計ではなく月ごとの積み上げで見てください。
年5日の年次有給休暇と管理簿
同サイトの年次有給休暇の時季指定によれば、法定の年次有給休暇付与日数が10日以上のすべての労働者(管理監督者を含む)に対し、使用者は毎年5日、年次有給休暇を確実に取得させる必要があります。基準日から1年以内に、労働者自らの請求・計画年休・使用者による時季指定のいずれかで取得させます。あわせて、労働者ごとに年次有給休暇管理簿を作成し、3年間保存しなければなりません。
この管理簿は法定の記録です。作成そのものを生成AIに任せる話ではありません。ただし「誰が何日残っているか」を見て社内に案内文を出す、という周辺の作業は任せられます。
生成AIに任せてよい文書と、人が作る記録
任せてよいもの
型が決まっていて、事実を後から人が上書きできる文書です。社内向けの案内文、会議メモの要約、手順書の下書き、取引先への連絡文の骨組み、研修資料のたたき台、社内アンケートの設問案。これらは書き出しに時間がかかるだけで、内容の正しさは書いた人が持っています。

人が作るもの
法令が様式や作成者を定めている記録は、人が作ります。年次有給休暇管理簿、36協定の届出、労働者名簿、賃金台帳、労働災害の報告。判断そのもの、たとえば「この残業が上限規制に収まるか」「この作業が安全上の許容範囲か」も人が決めます。生成AIは、自社の36協定の内容も、その月の実績も知りません。
安全衛生の書類まわりでどこまで任せるかは、安全衛生教育の資料づくりに生成AIを使うで法令の条文まで含めて整理しています。
書類を減らす手順
手順1|1か月に書く文書を書き出す
まず量を見えるようにします。1か月のあいだに自部署から出た文書を、名前だけでいいので書き出してください。日報、週報、月次報告、見積の説明文、社内通知、議事録、取引先への連絡文。多くの職場で30種類前後になります。

手順2|型が決まっているものを選ぶ
書き出した一覧を、「毎回ほぼ同じ形で書くもの」と「毎回中身が違うもの」に分けます。前者だけが対象です。ここで欲張って全部を対象にすると、確認の手間が増えて逆に時間が伸びます。最初は1つか2つに絞ってください。
手順3|下書きだけ任せ、事実は人が上書きする
選んだ文書について、過去の良い例を2〜3本、生成AIに読ませて型を作ります。そのうえで、今回の材料(日付・数量・相手先・出来事)を箇条書きで渡し、下書きを出させます。出てきた文章の数字と固有名詞は、人が記録と突き合わせて上書きします。ここを飛ばすと、もっともらしい嘘が社外に出ます。
手順4|所要時間を月単位で数える
始める前に、その文書1本にかかっている時間を測っておきます。1本20分の文書が月に15本あれば、月5時間です。導入後も同じ測り方で数えて比べます。「速くなった気がする」では、翌年の労働時間の統計は動きません。
業種別に、最初に手を付ける書類
| 業種 | 県内の年間所定外労働時間 | 最初に手を付けやすい書類 |
|---|---|---|
| 建設業 | 270時間 | 施工計画書のたたき台、安全書類の整理、工事日報、近隣へのお知らせ |
| 運輸・郵便業 | 252時間 | 安全教育の資料、荷主への連絡文、日報・月次報告の要約 |
| 製造業 | 県平均129時間を上回る(総実1,876時間) | 検査記録の報告文、技術文書の下書き、会議メモの横展開 |
| 卸売・小売業 | 72時間 | 販促文の下書き、商談メモ、社内共有の要約 |
| 医療・福祉業 | 43時間 | 記録ではなく、家族向けの案内文や研修資料 |
製造業の具体例は栃木の自動車部品製造×生成AI|業務改善5つの実践例に、卸売・小売業の販促文で踏みやすい落とし穴は小売・卸売業の生成AI活用と景品表示法にあります。医療・福祉は所定外が43時間と県内で最も短く、時間の問題より「記録に何を入れてよいか」の線引きが先です。こちらは介護の記録と書類に生成AIを使う線引きと7つの用途を参照してください。
生成AIに入力してはいけない情報
労働時間の話は個人の情報に直結します。次のものは、社内で契約している業務用のサービスであっても、入力する前に一度止めてください。
- 個人が特定できる勤怠データ(氏名つきの出退勤記録、残業時間の一覧)
- 健康診断の結果、ストレスチェックの個票、休職・復職に関する記録
- 賃金台帳、個人別の給与額、マイナンバーを含む書類
- 取引先の単価、契約条件、図面や仕様に関する非公開の情報
- 労働災害の当事者が分かる記述
集計済みで個人が特定できない数字(「今月の部署平均残業時間」など)であれば扱いやすくなります。どこに線を引くかを社内で1枚にまとめる手順は、生成AIガイドラインの作り方|A4 2枚・必須6項目にあります。
進め方の順番
1か月目は、書類の棚卸しだけをやります。名前と本数と1本あたりの時間を書き出し、それ以上のことはしません。

2か月目に、型のある文書を1つ選んで下書きを任せます。担当は1人か2人に絞り、うまくいった指示文を社内の共有フォルダに置きます。指示文が個人のメモに残っている職場は、その人が休むと止まります。
3か月目に、時間を数え直します。減っていなければ、選んだ文書が合っていません。別の文書に替えるか、渡す材料の書き方を見直します。ここまでを一巡させてから、2つ目の文書に進んでください。
県内で相談できる先
労働時間そのものの相談先は、栃木労働局と各労働基準監督署です。統計は栃木労働局「各種統計データ」にまとまっており、労働時間の現状も雇用失業状況も、ここから最新版をたどれます。数字は毎月・毎年更新されるため、社内資料に引くときは公表月を必ず添えてください。
生成AIの導入そのものについては、栃木県が設置したとちぎビジネスAIセンターが相談を受け付けています。使い方と当日までの流れはとちぎビジネスAIセンターの使い方|支援3分野と手順にまとめました。従業員が数名の事業所であれば、地域の商工会・商工会議所の経営指導員に相談するほうが早いこともあります。
よくある質問
Q. 年間総実労働時間の1,666時間は、正社員だけの数字ですか。
A. いいえ。毎月勤労統計調査(事業所規模5人以上)の常用労働者全体の1人平均です。パートタイム労働者を含むため、正社員だけの平均より低く出ます。宿泊・飲食サービス業が1,042時間と短いのも同じ理由です。自社の正社員と比べるときは、この前提を踏まえてください。
Q. 栃木の労働時間が全国より長いのは、製造業が多いからですか。
A. 産業構成の影響はあります。ただし栃木の建設業は全国の建設業より139時間長く、運輸・郵便業は65時間長いので、「同じ産業でも栃木のほうが長い」部分も同時に存在します。構成だけでは説明しきれません。
Q. 生成AIを入れれば残業は減りますか。
A. 文書を書く時間は減らせます。ただし減った時間が別の仕事で埋まれば、労働時間の統計は動きません。減らした分をどう使うかを先に決めておく必要があります。測り方を決めずに始めた職場は、効果を説明できずに使わなくなります。
Q. 無料の生成AIサービスを業務で使ってもよいですか。
A. 入力した内容の扱いはサービスと契約プランで変わります。判断は、規約と管理画面の設定を自社で確認したうえで行ってください。設定の確認手順は生成AIガイドラインの作り方にあります。
Q. 一人で経理も総務も兼ねています。どこから始めればよいですか。
A. 毎月必ず出る文書、たとえば社内通知か月次報告のコメントから始めるのが確実です。間接部門の場面別の使い方は総務・経理の生成AI活用7場面に、一人で回す型は栃木の小規模事業者向け生成AI|一人でも回る5つの型にまとめています。
まとめ
栃木の年間総実労働時間は1,666時間、全国は1,621時間。差は45時間で、前年の30時間から広がりました。全国が22時間減らした年に、栃木は7時間しか減らせていません。所定外に限れば、全国が3時間減らす一方で栃木は5時間増えて129時間になりました。
産業別では建設業2,057時間、運輸・郵便業1,997時間、製造業1,876時間が県平均を上回ります。所定外では建設業270時間、運輸・郵便業252時間と、県平均129時間の2倍前後です。一方、有効求人倍率は季節調整値で1.09倍、全国35位。人を増やして分担する道は細くなっています。
残る手は、仕事の総量を減らすことです。まず1か月に書く文書を書き出し、型が決まっているものを1つ選び、下書きだけを生成AIに任せ、事実は人が上書きする。そして所要時間を月単位で数える。法定の記録と、上限規制に収まるかどうかの判断は、これまでどおり人が持ちます。
出典・参考
- 栃木労働局 労働基準部監督課「労働時間の現状(令和8年5月)」(PDF)
- 栃木労働局 職業安定部職業安定課「最近の雇用失業状況(令和8年7月分)」(PDF)
- 栃木労働局「地域別求人倍率(原数値)令和8年7月」(PDF)
- 栃木労働局「各種統計データ」
- 厚生労働省 働き方改革特設サイト「時間外労働の上限規制」
- 厚生労働省 働き方改革特設サイト「年次有給休暇の時季指定」
- とちぎビジネスAIセンター
この記事で確認できていないこと
- 令和8年(2026年)の栃木県の年間総実労働時間。労働時間の現状は年1回のとりまとめで、2026年9月時点の最新版は令和7年分です
- 産業別の労働時間を市町別に分けた数値。栃木労働局の資料は県単位までで、2026年9月時点で市町別は公式に確認できていません
- 栃木県内で生成AIを業務文書に使っている企業の割合。県単位の集計は2026年9月時点で公式に確認できていません
- 生成AIの導入によって労働時間が何時間減るかの一般的な目安。公的な調査で確認できる数値はなく、本記事では自社で測る方法のみを示しています