とちぎビジネスAIセンターは、県内企業のAI・IoT導入を支援するために栃木県が設置した拠点施設です。個別相談・セミナー・研修・伴走支援を扱っており、相談は専用フォームから申し込みます。結論として、成果を左右するのは「相談前に自社の業務を棚卸ししてから行くかどうか」です。本記事では公式サイトに掲載されている範囲で、支援内容と相談の進め方を実務目線で整理します。
とちぎビジネスAIセンターとは|栃木県が設置したAI・IoT支援拠点
公式サイトの説明によれば、とちぎビジネスAIセンターは「県内企業におけるAI・IoTの導入利活用を支援するため、栃木県が設置した拠点施設」です。センターを中心にさまざまな関係機関と連携しながら、普及啓発・導入相談・AI人材育成に取り組むと明記されています。
所在地と基本情報は次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 所在地 | 〒321-3226 宇都宮市ゆいの杜1-5-40 とちぎ産業創造プラザ内 |
| 電話 | 028-680-5762 |
| 開所時間 | 9:00-17:00(平日12:00-13:00/土日祝日・年末年始を除く) |
| 体制 | マネージャー1名、サブマネージャー2名、その他スタッフ9名(公式サイト「とちぎビジネスAIセンターについて」より) |
| アクセス | JR宇都宮駅東口から約9km(車で約20分)、LRTゆいの杜西から約1km(徒歩約15分)、東北自動車道宇都宮ICから約20km、北関東自動車道宇都宮上三川ICから約14km |
事業の実施面では、公益財団法人栃木県産業振興センターが「DX推進人材育成ワークショップ」など、とちぎビジネスAIセンターの名を冠した講座の受講者募集を行っています。県の施策として設置された拠点を、県の産業支援機関が実務面で回している構図だと考えてよいでしょう。
できることは3分野|「知る」「相談」「導入」

公式サイトは、センターでできることを3つに分けて示しています。自社が今どの段階にいるかで、入口が変わります。
| 分野 | 掲載されているメニュー | 向いている段階 |
|---|---|---|
| AI・IoTを知る | 体験・体感/セミナー・勉強会/AI活用事例の紹介/人材育成 | 何ができるのか分かっていない段階 |
| AI・IoTの相談 | 個別相談/ベンダーとのマッチング/補助金・助成金 | やりたいことはあるが手段が決まらない段階 |
| AI・IoTを導入 | 伴走支援 | 対象業務が決まり、実装に入る段階 |
ここで重要なのは、3分野が独立したサービスではなく、順番につながっている点です。セミナーで全体像をつかみ、個別相談で自社の課題に落とし込み、伴走支援で実装する。この流れを最初に理解しておくと、いきなり「AIを導入したい」と相談して話がかみ合わない、という事態を避けられます。
2026年度に公開された募集内容から見える年間の動き方
公式サイトのお知らせ欄には、2026年度分の募集チラシが掲載されています。いずれも申込期限が設定されており、期限を過ぎたものは現在募集していませんが、年間でどんな支援が回っているかを知る材料になります。
- DX推進普及啓発セミナー: 2026年6月12日開催、参加無料、定員50名(先着順)。対象は「県内に拠点を有する企業」「県内の支援拠点」。独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の担当者と県内企業経営者による講演で、セミナー後にDX認定制度や関連補助金等の個別相談会も実施すると案内されていました。
- 経営者のためのDX戦略研修: 2026年6月24日10時〜17時、受講料無料、先着20名。DXの基本理解/自社の現状分析/グループワーク/DX戦略の考え方/組織変革の6つのパートで構成されています。
- 実務者向けスキルアップ研修: 「生成AI概論およびChatGPTのハンズオン研修」(第2回 2026年10月22日14〜17時)と「kintoneのハンズオン研修」(第2回 2026年12月24日14〜17時)。県内企業にお勤めの方が対象で、集合形式・PC持参・1人1講座のみという条件がチラシに明記されています。
- DXアドバイザー派遣事業: 費用無料、募集3社。3か月程度の期間でワークショップ形式の支援と業務改善のトータルサポートを行い、As-Is/To-Beの分析からスコープ設定・要件定義、ローコード等を使った実装までを一体で扱う内容です。
費用について、これらの募集チラシにはいずれも「無料」と記載されています。一方、個別相談そのものの費用は公式サイトに記載がないため、申し込み時に確認してください。
どんな企業が、どの段階で相談すべきか
相談申し込みページには、想定される相談内容として次の4つが挙げられています。自社の状況がこのどれかに当てはまるなら、相談の対象と考えてよいということです。
- デジタルを活用して業務を改善したいが、何から着手すればいいかわからない
- AI・IoTの言葉は知っているが、具体的な活用イメージが持てない
- 導入したツールが定着していない、あるいは新規導入を検討したい
- デジタル化に関するセミナーの開催や、社内の人材育成について相談したい
注目したいのは、1つ目と2つ目が「まだ何も決まっていない段階」を明示的に含んでいることです。公的な相談窓口は「計画が固まってから行く場所」と思われがちですが、ここは検討の入口から使える設計になっています。逆に、3つ目の「導入したツールが定着していない」は、すでに何か買ったあとの企業が対象です。ツールを入れたものの一部の社員しか使っていない、という状態も相談材料になります。
一方で、公式サイトの記載範囲では判断できないこともあります。たとえば「どの業種が優先されるか」「相談回数に上限があるか」といった運用面は公開されていません。自社が該当するか判断に迷う場合は、フォームの相談内容欄に現状をそのまま書いて送るのが確実です。
相談前に用意する「業務棚卸しシート」の骨子

公的な相談窓口で最ももったいないのは、「AIで何かできませんか」とだけ聞いて、一般論の説明を受けて終わることです。これを避けるには、相談前に自社の業務を書き出したシートを1枚作っておきます。表計算ソフトで十分です。列は次の6つを推奨します。
| 列 | 書く内容 | 記入例 |
|---|---|---|
| 業務名 | 作業の名前を具体的に | 取引先への月次報告書の作成 |
| 頻度 | 週何回・月何回か | 月1回、担当5名がそれぞれ実施 |
| 所要時間 | 1回あたりの実測時間 | 1件あたり約90分 |
| 担当者 | 誰がやっているか、属人化しているか | 営業事務2名に集中、他は手順を知らない |
| 使っている道具 | 紙・Excel・基幹システム・手書きなど | 紙の日報を見ながらExcelに転記 |
| 困っていること | 時間・ミス・引き継ぎのどれが問題か | 転記ミスが月に数件、確認に手間がかかる |
行は10〜15業務を目安に、「時間がかかっている」と感じるものから順に埋めます。全社の業務を網羅する必要はありません。むしろ、部署を1つに絞って深く書いたほうが、相談の解像度は上がります。
このシートがあると、相談担当者は「どの業務なら効果が出やすいか」を具体的に判断できます。逆にシートがないと、話は「まず生成AIとは何かから説明しましょう」というところから始まってしまいます。所要時間の欄は推測ではなく、可能なら1〜2週間実測してください。実測値があるかどうかで、後の効果測定の精度が変わります。
相談申し込みの前日までに確認しておくこと
- 業務棚卸しシートを1枚作り、優先度の高い業務に印を付けたか
- その業務に関わる書類(報告書・帳票・手順書)の実物を、社外に出せる形で1〜2点用意したか
- 社内で現在使っているツール(Microsoft 365/Google Workspace/基幹システム/グループウェア)を書き出したか
- 予算感と、いつまでに何をしたいかの時期感を1行で言えるか
- 相談内容を社内の誰と共有しているか(決裁者が把握しているか)を確認したか
- すでに他の支援機関や業者に相談した経緯があれば、その内容を整理したか
相談申し込みの手順と、当日までの流れ
相談は公式サイトの「相談申し込み」フォームから送ります。手順は次のとおりです。
- フォームに必要事項を入力する: 必須項目は会社名、所在地(都道府県の選択)、相談者名、電話番号、メールアドレス、第1希望日、希望の相談手段、相談内容です。第2・第3希望日は任意ですが、日程調整を早めるために入れておくことをおすすめします。
- 希望日は「2開所日以降」を指定する: フォームには「希望日は2開所日以降(例:申込日が6月5日(土)の場合6月8日(火)以降)をご指定ください」と注記があります。翌日や当日の相談はできない前提で予定を組んでください。
- 相談手段を選ぶ: 「AIセンターへの来訪」「AIセンタースタッフによる訪問」「Web会議」「電話」の4つから選択します。現場を見てもらいたい製造業なら訪問、資料を画面共有しながら話したいなら Web会議、というように目的で選び分けます。
- 送信後、担当者からの連絡を待つ: 公式サイトには「後日、担当者よりご連絡差し上げます」と記載されています。日程によっては希望に沿えない場合がある旨も明記されているため、余裕を持って申し込んでください。
時間帯は9時・10時・11時・13時・14時・15時・16時から選ぶ形式です。開所時間は9:00-17:00(平日12:00-13:00/土日祝日・年末年始を除く)なので、平日日中に社内の担当者が動ける時間を先に押さえてから申し込むと、日程調整が一度で済みます。
相談内容の欄には、業務棚卸しシートで印を付けた業務を、そのまま文章で書きます。例:「営業事務2名が月1回、紙の日報を見ながらExcelに転記して取引先向けの月次報告書を作成しています。1件約90分かかり、転記ミスも発生しています。この工程にAIやデジタルツールを使えるか相談したいです」。このレベルの具体性があると、初回から実務の話に入れます。
相談後の進め方|研修・伴走支援へどうつなぐか

個別相談は入口であって、ゴールではありません。相談後の進め方は、出てきた課題の性質によって分かれます。
「社内に分かる人がいない」が課題だった場合
まず人材育成に寄せます。センターの「AI・IoTを知る」分野にはセミナー・勉強会・人材育成が含まれており、2026年度も経営者向けのDX戦略研修や実務者向けのハンズオン研修が募集されました。ただし公的な研修は開催時期と定員が決まっており、自社の都合に合わせて設計できるわけではありません。自社の業務文書を教材にした研修が必要なら、民間の研修と組み合わせる判断も出てきます。設計の考え方は「中小企業の生成AI研修設計5ステップ」で整理しています。
「対象業務は決まったが、実装の進め方が分からない」が課題だった場合
伴走支援の枠組みが該当します。2026年度のDXアドバイザー派遣事業は、3か月程度の期間でワークショップ形式の支援を行い、As-Is/To-Beの分析からスコープ設定・要件定義、ローコード等を使った実装までを一体で扱う内容でした。募集3社という規模感なので、募集時期を逃さないことが実務上の要点になります。
「費用の目処が立たない」が課題だった場合
センターのメニューには「補助金・助成金」の案内も含まれています。国の補助金と県内の支援制度は制度ごとに対象と申請時期が異なり、訓練や導入の開始前に手続きが必要なものもあります(対象となるかは要件審査があります)。制度の全体像は「栃木県の中小企業が使えるAI導入補助金・支援制度まとめ」にまとめています。
「どの業者に頼めばいいか分からない」が課題だった場合
「ベンダーとのマッチング」がメニューに挙げられています。自社だけで業者を探すと比較軸が定まらないまま提案を受けることになりがちなので、要件の整理と並行して相談するのが現実的です。
とちぎデジタル戦略2026〜2030での位置づけ
栃木県が2026年3月に策定した「とちぎデジタル戦略 2026〜2030」には、産業分野のDXの取組として次の記述があります。
「とちぎビジネスAIセンターを核とした県内民間企業のデジタル化・DXの加速化に向けた支援や、個別的課題解決のための伴走支援に取り組みます。」
つまりセンターは単発の相談窓口ではなく、県の5年間のデジタル戦略において産業分野の中核に位置づけられた拠点です。同戦略はデジタル人材の育成等も柱の一つとしており、県内民間企業におけるAI・IoT等の新たな技術に対応できる人材の育成や、生産性向上に向けた従業員のリスキリング支援に取り組むと記載されています。
実務的な意味合いは2つあります。1つは、戦略期間である2030年度までは相応の継続性が見込めること。もう1つは、県の施策の方向と自社のテーマが合っていれば、相談・研修・補助制度が同じ方向に並ぶため、支援を組み合わせやすいことです。
よくある質問
Q1. とちぎビジネスAIセンターの相談は無料ですか?
公式サイトの相談申し込みページには費用の記載がないため、無料と断定はできません。ただし、公開されている2026年度のセミナー・研修・DXアドバイザー派遣事業の募集チラシには、いずれも「参加無料」「受講料:無料」「費用:無料」と明記されています。個別相談の費用については、申し込み時に確認してください。
Q2. 栃木県外の企業でも相談できますか?
公式サイトはセンターの目的を「県内企業におけるAI・IoTの導入利活用を支援するため」としており、2026年度のセミナーの対象も「県内に拠点を有する企業」「県内の支援拠点」と記載されています。県内に拠点があるかどうかが基準になると考えられます。相談フォームの所在地欄は全都道府県から選べる形式ですが、対象の可否は申し込み時にご確認ください。
Q3. 何も決まっていない状態で相談してもよいですか?
相談申し込みページには「デジタルを活用して業務を改善したいが、何から着手すればいいかわからない」「AI・IoTの言葉は知っているが、具体的な活用イメージが持てない」が想定される相談内容として挙げられています。検討の入口から使える窓口です。ただし、時間を有効に使うために、本記事で挙げた業務棚卸しシートだけは作ってから行くことをおすすめします。
Q4. 相談はどのくらい先の日程で申し込めますか?
フォームには「希望日は2開所日以降をご指定ください」との注記があり、申込日の翌開所日には設定できません。加えて「日程によっては、ご希望に沿えない場合がございます」とも記載されています。社内の予定を押さえてから、第3希望まで入れて申し込むのが確実です。
Q5. 研修だけを受けたい場合はどうすればよいですか?
セミナーや研修は個別に募集がかかり、公式サイトのお知らせ欄と募集チラシで告知されます。多くは先着順または定員制で、実務者向けスキルアップ研修は「1人1講座のみ」という条件も付いていました。募集を逃さないよう、公式サイトのお知らせを定期的に確認してください。
まとめ|「相談材料を持って行く」だけで結果が変わる
とちぎビジネスAIセンターは、栃木県が設置したAI・IoT導入支援の拠点で、「知る」「相談」「導入」の3分野で県内企業を支援しています。相談は公式フォームから、2開所日以降の希望日と4つの相談手段を選んで申し込みます。
成果を分ける最大のポイントは、相談前の準備です。業務名・頻度・所要時間・担当者・使っている道具・困っていることの6列で業務棚卸しシートを1枚作り、優先度の高い業務に印を付けてから相談すれば、初回から実務の議論に入れます。制度や募集内容は年度で変わるため、最新情報は必ず公式サイトで確認してください。