2026年8月時点で、栃木県内の中小企業がAI導入に活用しやすい公的支援の柱は3つです。ITツール・AIツール導入向けの「デジタル化・AI導入補助金2026」(旧IT導入補助金)、人手不足対策の設備投資向けの「中小企業省力化投資補助金」、社員研修費用向けの「人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)」です。加えて県内には無料で相談できる「とちぎビジネスAIセンター」があります。本記事では各制度の対象・上限額・直近スケジュールと、申請前に押さえるべき注意点を整理します。
2026年のAI導入支援は「国の補助金×県内の相談窓口」で考える

総務省「令和8年版情報通信白書」によれば、業務で生成AIを利用している日本企業の割合は86.4%に達しました。栃木県も2026年3月に「とちぎデジタル戦略」(2026〜2030年度)を策定しており、県内企業のデジタル・AI活用は行政側の支援テーマにもなっています。
資金面の支援は国の補助金・助成金が中心で、県・市町は相談窓口や分野特化の補助金で補完する構図です。まず全体像を表で示します。
| 制度名 | 主な対象 | 補助上限など | 直近スケジュール(2026年8月時点) |
|---|---|---|---|
| デジタル化・AI導入補助金2026(旧IT導入補助金) | ITツール・AIツールの導入 | 枠により異なる(公募要領で確認) | 通常枠等の1次締切が2026年9月29日 |
| 中小企業省力化投資補助金(カタログ注文型) | カタログ掲載の省力化製品の導入 | 最大1,500万円 | 交付申請を随時受付 |
| 中小企業省力化投資補助金(一般型) | オーダーメイドの設備導入・システム構築 | 最大1億円 | 第8回公募が2026年8月18日開始(受付は9月中旬〜10月中旬予定) |
| 人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース) | DX等に伴う社員研修の経費・賃金 | 経費助成は中小企業で最大75% | 令和8(2026)年度末までの期間限定措置 |
いずれも申請には要件審査があり、申請すれば必ず交付されるものではありません。最新の締切・要件は必ず各公式サイトで確認してください。
デジタル化・AI導入補助金2026(旧IT導入補助金)
2026年度から、旧IT導入補助金は「デジタル化・AI導入補助金」(正式名称: 中小企業デジタル化・AI導入支援事業費補助金)に衣替えし、名称のとおりAI導入支援が正面に位置づけられました。中小企業・小規模事業者等が対象で、登録されたITツール・AIツールの導入費用が補助されます。
申請枠は次のとおりです。
- 通常枠
- インボイス枠(インボイス対応類型/電子取引類型)
- セキュリティ対策推進枠
- 複数者連携デジタル化・AI導入枠
公式サイトの事業スケジュールでは、通常枠・インボイス枠・セキュリティ対策推進枠の1次締切が2026年9月29日17時、複数者連携デジタル化・AI導入枠の1次締切が2026年10月30日17時と公表されています(以降の締切は確定分のみ順次公表)。生成AIを組み込んだ業務ツールの導入を検討している場合、まず自社が使いたいツールが補助対象に登録されているかをIT導入支援事業者に確認するのが第一歩です。
どの業務にAIツールを入れるべきかを先に整理したい場合は「栃木の自動車部品製造業が生成AIで進める業務改善5つの実践例」も参考にしてください。
中小企業省力化投資補助金|カタログ注文型と一般型

人手不足への対応として省力化設備・システムに投資する中小企業向けの補助金で、2つの型があります。
カタログ注文型
あらかじめカタログに登録された省力化製品(ロボット・自動化機器など)から選んで導入する簡易な型で、補助上限は最大1,500万円、交付申請は随時受付中です。「何を入れるか」が製品単位で決まっている分、申請の難度は相対的に低めです。
一般型
自社の現場に合わせたオーダーメイドの設備導入・システム構築(AI活用を含む)を支援する型で、補助上限は最大1億円です。第8回公募は2026年8月18日に開始され、申請ポータルでの受付は9月中旬〜10月中旬の予定と公表されています。
どちらの型も申請にはGビズIDプライムアカウントが必須です。未取得の場合は先に取得手続きを済ませてください。
人材開発支援助成金|事業展開等リスキリング支援コース
AIツールを入れても使える社員がいなければ成果は出ません。社員研修の費用に対する支援が、厚生労働省の人材開発支援助成金「事業展開等リスキリング支援コース」です。企業内DXの推進などに伴い必要となる知識・技能の訓練が対象で、生成AI活用研修も企業のDX推進に伴う訓練として対象となる場合があります(要件審査あり)。
- 経費助成率: 中小企業75%・大企業60%
- 訓練期間中の賃金助成もあり(金額は最新の支給要領・パンフレットで確認)
- 令和4年12月に創設された期間限定コースで、実施期限は令和8(2026)年度末まで
期間限定措置の最終年度にあたるため、活用を検討する場合は訓練実施前に必要な計画届の提出時期から逆算して早めに動く必要があります。研修そのものの設計手順は「中小企業の生成AI研修設計5ステップ」で解説しています。
栃木県・市町の支援|とちぎビジネスAIセンターと県の補助金
栃木県には、県内企業のAI・IoT導入活用を支援する拠点「とちぎビジネスAIセンター」(宇都宮市ゆいの杜・とちぎ産業創造プラザ内)があります。無料の個別相談のほか、AI技術を活用した機器の体験、企業向けワークショップ・研修講座が提供されており、「どの制度が自社に合うか」を含めて相談できる入口として使えます。県の中小企業支援機関である栃木県産業振興センターも、経営全般の相談窓口を設けています。
県独自の補助金としては、建設産業向けの「インフラDXはじめの一歩補助金」(令和8年度)があります。県内に本社を置く建設会社・測量会社・建設コンサルタント会社・地質調査会社が対象で、ICT建設機械や3次元測量機器・3次元ソフトウェアの導入、人材育成研修への参加が補助対象です。補助上限は1事業者あたり500万円、補助率は補助対象経費の2分の1以内で、令和8年度の受付期間は2026年8月7日〜9月18日と締切が迫っています。
市町レベルでも、真岡市がDX・AI・IoT等のデジタル技術導入に関する中小企業向け相談案内を出すなど、地域の窓口整備が進んでいます。所在市町の商工担当課・商工会議所にも確認してみてください。
申請前に押さえる5つの注意点

- 制度名と年度を確認する: 旧IT導入補助金のように、制度は年度で名称・内容が変わります。古い年度の解説記事ではなく、必ず公式の公募要領を正とします。
- GビズIDプライムを先に取得する: 省力化投資補助金などで必須です。取得に時間がかかるため、締切直前では間に合わないことがあります。
- 交付決定前の契約・発注はしない: 原則として交付決定前に発生した経費は補助対象外です。
- 審査があることを前提にする: どの制度も要件審査があり、申請すれば必ず採択・支給されるわけではありません。
- 助成金は手続きの順序が決まっている: 人材開発支援助成金は訓練前の計画届など、実施前の手続きが必要です。研修を先に始めてからでは使えません。
まとめ|「使えるか」の確認から始める
栃木県内の中小企業がAI導入で使える公的支援は、(1)ツール導入のデジタル化・AI導入補助金2026、(2)設備投資の中小企業省力化投資補助金、(3)研修費用の人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)の3本柱に、とちぎビジネスAIセンターなど県内の無料相談窓口を組み合わせるのが基本形です。制度はいずれも締切と審査があるため、「自社の導入計画がどの制度に合うか」の確認から始めてください。