TOCHIGI AI JOURNAL

記事を読む 栃木のAI活用・補助金・研修設計を実務で使う
業務改善

障害者の法定雇用率2.7%|栃木で始める仕事の切り出し

⏱ 約12分で読めます
障害者の法定雇用率2.7%|栃木で始める仕事の切り出し

2026年7月、民間企業の障害者の法定雇用率は2.5%から2.7%になりました。同時に、障害者を雇用しなければならない事業主の範囲が常時雇用する従業員37.5人以上に広がっています。栃木県内の民間企業の実雇用率は2.50%(令和7年6月1日現在)で、新しい基準にはまだ届いていません。ここで先に手を付けるべきなのは求人ではなく、いまある仕事を工程に分けて、任せられる作業を取り出す作業です。

2026年7月、民間企業の法定雇用率は2.7%になった

法定雇用率と対象事業主の範囲の移り変わり
法定雇用率と対象事業主の範囲の移り変わり

厚生労働省・都道府県労働局・ハローワークのリーフレット障害者の法定雇用率引上げと支援策の強化についてに、引き上げの段階が示されています。

時期 民間企業の法定雇用率 対象事業主の範囲
令和5年度 2.3% 常時雇用する従業員43.5人以上
令和6年4月 2.5% 常時雇用する従業員40.0人以上
令和8年(2026年)7月 2.7% 常時雇用する従業員37.5人以上

対象になった事業主に生じる義務

対象になった事業主には、毎年6月1日時点の障害者雇用状況をハローワークへ報告する義務があります。あわせて、障害者の雇用の促進と継続を図るための「障害者雇用推進者」の選任が努力義務とされています。

2.7%が効いてくるのはいつからか

時期の読み方には注意が必要です。同じリーフレットは、令和8年6月1日時点の報告では法定雇用率2.5%での不足の有無などを確認するとしています。2.7%が効いてくるのは7月以降で、次の6月1日時点の報告からが新しい基準での確認になります。障害者雇用納付金についても、令和8年度分(申告期間は令和9年4月1日から同年5月17日)は、令和8年6月以前は2.5%、令和8年7月以降は2.7%で算定すると案内されています。

つまり、いまは猶予期間ではなく、次の報告に向けた準備期間です。従業員が37.5人前後の会社は、まず自社が対象に入ったかどうかの確認から始まります。

栃木の実雇用率は2.50%|新しい基準にはまだ届いていない

栃木県の民間企業における障害者雇用の状況(令和7年6月1日現在)
栃木県の民間企業における障害者雇用の状況(令和7年6月1日現在)

令和7年の集計結果

県内の状況は、栃木労働局が毎年12月に公表しています。栃木労働局「令和7年 障害者雇用状況の集計結果」(令和7年12月19日)によると、民間企業(40.0人以上規模、当時の法定雇用率2.5%)の状況は次のとおりです。

項目 栃木県 前年 全国
雇用されている障害者の数 6,144.5人 5,881.5人
実雇用率 2.50% 2.48% 2.41%
法定雇用率達成企業の割合 54.7% 54.0% 46.0%

雇用障害者数は前年より263.0人の増加(対前年比4.5%増)で過去最高を更新しました。実雇用率2.50%は全国22位(前年26位)、達成企業割合54.7%は全国21位(前年24位)で、いずれも全国平均を上回っています。

障害種別の内訳と、比べている相手

障害種別の内訳は、身体障害者3,120.5人(対前年比1.7%増)、知的障害者1,558.5人(同2.9%増)、精神障害者1,465.5人(同12.9%増)です。精神障害者の伸び率がもっとも大きいという点は、受け入れ側の準備の中身を左右します。

数字の並びを素直に読むと、栃木は全国平均より上にいます。ただし比べている相手は2.5%です。県全体の実雇用率2.50%は、新しい2.7%をちょうど下回る位置にあります。県内の平均的な会社は、いまのままでは次の報告で不足が出る計算になります。

従業員40〜100人未満の会社が、県内でいちばん多い

規模別の対象企業数と達成割合

同じ集計結果の企業規模別の表を見ると、対象企業の分布がはっきりします。

企業規模 対象企業数 実雇用率 法定雇用率達成企業の割合
40〜100人未満 954社 2.60% 52.1%
100〜300人未満 464社 2.41% 59.7%
300〜500人未満 71社 2.24% 50.7%
500〜1,000人未満 45社 2.63% 64.4%
1,000人以上 26社 2.55% 57.7%

集計結果の本文では、実雇用率は40人以上100人未満規模と100人以上300人未満規模以外で前年を上回り、達成企業割合は100人以上300人未満規模区分以外で前年を上回った、とされています。

対象がいちばん多い層に、新しい義務が乗る

読みどころは2つです。ひとつは、対象企業の数がいちばん多いのは40〜100人未満の区分(954社)だということ。もうひとつは、その区分の達成企業割合が52.1%と、県平均の54.7%より低いことです。従業員が37.5人以上に広がったことで、この層にさらに会社が加わります。県内でいちばん多く、いちばん手が足りない規模の会社に、新しい義務が乗る構図です。

産業別に見ると、雇用は製造業と医療・福祉に寄っている

雇用数と実雇用率

産業別の状況も同じ資料から確認できます。雇用されている障害者の数がもっとも多いのは製造業で1,594.0人(前年より50.5人増)、次いで医療・福祉が1,491.0人(同156.5人増)でした。サービス業は541.0人(同76.0人増)、運輸業・郵便業は261.5人(同9人増)と増えた一方、雇用数の多い卸売業・小売業は982.5人で前年より47.0人減っています。

実雇用率でみると、もっとも高いのは医療・福祉の3.41%、次いでサービス業の2.54%です。

除外率が引き下げられた業種

もうひとつ、業種によっては除外率の影響があります。前掲のリーフレットによると、除外率は令和7年4月1日から各除外率設定業種でそれぞれ10ポイント引き下げられました。建設業・鉄鋼業・道路貨物運送業・郵便業は10%、港湾運送業・警備業は15%、鉄道業・医療業・高等教育機関・介護老人保健施設・介護医療院は20%、道路旅客運送業・小学校は45%といった具合です。これまで除外率が10%以下だった業種は、除外率制度の対象外になりました。自社の業種が除外率設定業種かどうかで、算定の基礎になる労働者数が変わります。

最初にやるのは採用ではなく、仕事の切り出し

仕事の切り出しの4つの手順
仕事の切り出しの4つの手順

ここからが実務です。雇用率の話になると求人を出すところから考えがちですが、順番が逆になると定着しません。受け入れる仕事が決まっていない状態で採用すると、現場が「何を頼めばいいか分からない」まま止まります。

1日の仕事を工程に分けて書き出す

まず、いま誰かがやっている仕事を工程に分解します。「受注処理」ではなく、「メールを開く」「注文内容を台帳に転記する」「在庫を確認する」「出荷指示を出す」という粒度まで下ろします。書き出しは紙でも表計算でも構いません。

判断が要る工程と、手順が決まっている工程に分ける

分解した工程に、判断が要るかどうかで印を付けます。値付け、例外対応、取引先への回答は判断が要ります。転記、仕分け、検数、清掃、資材の補充、印刷と封入は、手順が決まっていれば判断は多くありません。切り出しの候補は後者です。

生成AIに渡す材料と、返ってくるもの

この分解と仕分けの下ごしらえに生成AIが使えます。渡す材料は、担当者が話した1日の流れの書き起こしです。指示は「以下は当社の事務担当者が話した1日の作業の流れです。工程に分解し、判断が必要な工程と、手順が決まっていて判断が少ない工程に分けて表にしてください。材料に書かれていない工程は足さないでください」。

材料にない工程を足させないという一文を必ず入れます。これを書かないと、生成AIは一般的な事務の工程を勝手に補って、実在しない仕事の一覧が出てきます。

出てきた候補を現場で確かめる

表ができたら、現場の担当者と一緒に読みます。「これは実際には他の作業と一緒にやっている」「これは繁忙期だけ」といった補正がここで入ります。切り出す仕事を決めるのは現場であって、生成AIではありません。 生成AIがやったのは、話し言葉を工程の一覧に整えるところまでです。

手順書は「1動作1行」に書き直す

切り出す仕事が決まったら、次は手順書です。既存の手順書は、たいてい「分かっている人向け」に書かれています。1文に複数の動作が入り、社内だけで通じる言葉が混じり、例外処理が本文に埋もれています。

書き直しの3つの方針

書き直しの方針は3つです。1文に動作をひとつだけ入れる。社内の略語を、正式名称と写真に置き換える。例外処理は本文から外して「こうなったら誰に聞く」の一覧にまとめる。

生成AIへの指示の出し方

この書き直しは生成AIが得意な作業です。既存の手順書を渡して、「1文にひとつの動作だけを書く形に直してください。手順にない工程を足さないでください。社内でしか通じない言葉があれば、言い換え候補を別の一覧にしてください」と指示します。言い換え候補の一覧は、そのまま社内の用語集になります。

考え方は、日本語を母語としない従業員向けの文書整備とほぼ同じです。文の構造を単純にすると、読む人の幅が広がります。手順の作り方は外国人材の手順書を生成AIで多言語化する5手順に詳しくまとめてあります。作業の安全に関わる部分は安全衛生教育の資料づくりに生成AIを使うの考え方を重ねてください。

生成AIに入力してはいけない情報

障害者雇用の実務では、扱う情報の性質が変わります。ここは線をはっきり引いてください。

外部サービスに入れないもの

  • 障害名・診断名・通院歴・服薬の情報:これらは個人情報保護法上の要配慮個人情報に当たり得ます。外部の生成AIサービスに入力しないでください
  • 障害者手帳の種類や等級、手帳の画像:同じ理由で入力しません
  • 氏名・住所・連絡先と組み合わせた状態の情報:個人が特定できる形にしないでください
  • 主治医や支援機関とのやり取りの記録:本人と支援者の間の情報です。要約させる目的でも外部サービスに入れないでください

渡してよいのは、仕事の側の情報

生成AIに渡してよいのは、仕事の側の情報です。工程の一覧、作業の手順、必要な道具、作業場所の条件。「誰が」ではなく「何をする仕事か」を渡します。要配慮個人情報の扱いは介護の現場でも同じ論点になるため、介護の記録と書類に生成AIを使う線引きも参考になります。社内での線引きの決め方は生成AIガイドラインの作り方にまとめています。

人が決めること|合理的配慮と雇用率の計算

生成AIに任せてはいけない判断が2つあります。

合理的配慮の内容

ひとつは合理的配慮の内容です。雇用の分野では、障害者への差別の禁止と合理的配慮の提供義務が定められています。何が必要な配慮かは、本人との話し合いで決まります。一般論として出てきた配慮の例を、本人に確認せずに当てはめてはいけません。栃木労働局は事業主向け・働く人向けの合理的配慮の資料を障害者関係法令・制度・対策説明とパンフレット・リーフレットのページで案内しています。

雇用率の計算

もうひとつは雇用率の計算です。算定方法には特例があります。前掲のリーフレットによると、週所定労働時間が20時間以上30時間未満の精神障害者は、当分の間、雇用率上、雇入れからの期間等に関係なく1カウントとして算定できます。また令和6年4月以降、週所定労働時間が10時間以上20時間未満の精神障害者・重度身体障害者・重度知的障害者は0.5カウントとして算定できます。自社の不足数の計算は、除外率と算定特例の両方が絡みます。数え方はハローワークに確認してください。

県内で相談できる先

  • 栃木労働局 職業安定部職業対策課(宇都宮市明保野町1-4 宇都宮第二地方合同庁舎2階・電話028-610-3557):県内の障害者雇用の相談窓口です
  • ハローワークの専門援助部門:栃木労働局は宇都宮ハローワークの専門援助部門・専門相談員の案内資料を公開しています。求人前の相談もここが入口です
  • 障害者就業・生活支援センター:栃木労働局のページに県内の圏域が示されています。就業面と生活面の両方を支える機関です
  • 障害者雇用相談援助事業:令和6年4月以降、相談援助を行う事業者から、原則無料で雇入れや雇用継続に必要な一連の雇用管理の相談援助を受けられるようになりました
  • 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED):障害者雇用納付金関係の助成金の窓口です。職場適応援助者助成金の拡充や、職場実習・見学の受入れ助成の新設が案内されています

栃木労働局は今後の施策として、ハローワークと関係機関が連携した「企業チーム支援」による未達成企業への重点的な支援、県内3地域での合同就職面接会、ハローワーク単位のミニ面接会、セミナーや特別支援学校の見学会、精神・発達障害者の職場定着支援を挙げています。面接会や見学会は、採用を決める前に現場感をつかむ場としても使えます。

よくある質問

Q. 従業員が38人です。うちは対象になりますか。
A. 令和8年7月から、対象事業主の範囲は常時雇用する従業員37.5人以上です。ただし「常時雇用する従業員」の数え方には短時間労働者の扱いなどの決まりがあり、単純な在籍人数とは一致しない場合があります。自社が対象かどうかは、事業所を管轄するハローワークに確認してください。

Q. 令和8年6月1日の報告は2.7%で出すのですか。
A. 厚生労働省のリーフレットは、令和8年6月1日時点の報告では法定雇用率2.5%での不足の有無などを確認する、としています。2.7%が適用されるのは令和8年7月以降です。納付金は令和8年度分について、6月以前を2.5%、7月以降を2.7%で算定すると案内されています。

Q. 生成AIで求人票を作ってもよいですか。
A. 文章のたたき台としては使えます。ただし募集や採用の場面には法令上の決まりがあり、表現を最終的に確認するのは人の仕事です。求人票づくりの注意点は求人票と採用文書の生成AI活用6場面にまとめています。

Q. 切り出す仕事が見つかりません。どうすればよいですか。
A. 「1人分の仕事」を探すと見つかりません。複数の部署から、手順が決まっている短い作業を集めて1つの仕事に組み直すのが実務的な方法です。工程への分解を先にやると、部署をまたいだ組み合わせが見えるようになります。組み方に迷う場合は、ハローワークの専門援助部門や障害者雇用相談援助事業に相談してください。

Q. 支援機関との面談メモを、生成AIに要約させてもよいですか。
A. すすめません。面談メモには障害の状況や通院に関する記述が含まれることが多く、要配慮個人情報に当たり得ます。要約が必要なら、個人が特定できる情報と障害に関する記述を外し、仕事の側の内容だけを残してから扱ってください。

Q. 精神障害のある方の受け入れで、まず何を用意すべきですか。
A. 一般論で決めず、本人と支援機関を交えて話し合うのが前提です。そのうえで会社側の準備としては、仕事の切り出しと手順書の整備、相談先を明確にすること、体調の変動があったときに誰に伝えるかを決めておくことが土台になります。栃木では精神障害者の雇用が対前年比12.9%増と伸び率がもっとも大きく、県内でも実例が増えている領域です。

まとめ

2026年7月に法定雇用率は2.7%になり、対象は従業員37.5人以上に広がりました。栃木県内の民間企業の実雇用率は2.50%(令和7年6月1日現在)で、全国平均の2.41%は上回るものの、新しい基準には届いていません。対象企業がいちばん多い40〜100人未満の区分では、達成企業の割合は52.1%です。

順番を間違えないことが肝心です。求人を出す前に、仕事を工程に分けて、任せられる作業を取り出し、手順書を1動作1行に書き直す。 この下ごしらえのうち、話し言葉を工程の一覧に整える作業、手順書を書き直す作業、用語集を作る作業は生成AIに任せられます。

一方で、切り出す仕事を決めるのは現場、合理的配慮の中身を決めるのは本人との話し合い、雇用率の数え方はハローワークへの確認です。そして障害に関する情報は生成AIに入力しません。

次の報告は令和9年6月1日時点です。まずは自社の1日の作業を、担当者に話してもらって書き起こすところから始めてください。

出典・参考

この記事で確認できていないこと

  • 令和8年(2026年)6月1日現在の栃木県の障害者雇用状況。栃木労働局の集計結果は例年12月に公表されており、2026年9月時点では令和7年分が最新です
  • 法定雇用率2.7%への引き上げ後に、栃木県内で新たに対象事業主となった企業の数
  • 栃木労働局が実施する合同就職面接会・ミニ面接会の2026年度の開催日程と会場。開催の方針は集計結果の資料に記載がありますが、個別の日程は公式に確認できていません
  • 「常時雇用する従業員」の具体的な数え方が自社にどう当てはまるか。短時間労働者の扱いを含め、管轄のハローワークへの確認が必要です
  • 栃木県内の企業が障害者雇用の業務設計や手順書づくりに生成AIを使っている割合。県単位の集計は2026年9月時点で公式に確認できていません