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不動産広告に生成AIを使うと出やすい違反表現|栃木

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不動産広告に生成AIを使うと出やすい違反表現|栃木

生成AIに物件紹介文を書かせると、頼んでいないのに「最高の立地」「格安」「完全リフォーム済」といった言葉が出てきます。これらは不動産の表示に関する公正競争規約が、合理的な根拠を示す資料を現に持っている場合を除いて使用を禁じている用語です。栃木県の不動産会社もこの規約の区域に入っています。下書きを任せること自体は問題ありませんが、公開前に落とす言葉が決まっている、というのが実務の答えです。

栃木で不動産を扱う事業所は4,777|文章は毎日書き換わる

県内の事業所数と従業者数

栃木県が公表している令和3年経済センサス-活動調査 産業大分類別民営事業所数(PDF)によると、県内の「不動産業,物品賃貸業」は4,777事業所・16,452人です(事業内容不詳の事業所を除く民営事業所)。宇都宮市だけで1,618事業所・6,396人を占めます。県全体の民営事業所は80,062ですから、およそ17事業所に1つがこの区分に入る計算です。物品賃貸業を含む区分なので、すべてが宅地建物取引業者というわけではありません。

この業種の文章は、他の業種と性質が違います。物件が入れ替わるたびに紹介文を書き直し、同じ物件でも媒体ごとに文字数が変わり、繁忙期には1日に何本も出ます。「型は同じで中身だけ変わる文章を、大量に、早く」という条件は、生成AIが最も向いている形です。だからこそ、落とし穴も同じ場所に集中します。

不動産広告に効く3つのルール

広告文に関わるルールは3層あります。層ごとに、誰が決めていて、破ったときに何が起きるかが違います。

不動産広告に効くルールを、宅地建物取引業法・不動産の表示に関する公正競争規約・景品表示法の3層として示した図
不動産広告に効く3つのルール

宅地建物取引業法

法律です。宅地建物取引業法(e-Gov法令検索)の第32条は誇大広告等を禁じており、宅地建物取引業者は業務に関して広告をするとき、宅地・建物の所在、規模、形質、現在または将来の利用の制限、環境、交通その他の利便、代金や借賃等の対価の額などについて、著しく事実に相違する表示や、実際のものよりも著しく優良・有利であると人を誤認させるような表示をしてはならない、と定めています。

第34条は取引態様の明示です。売買・交換・貸借の広告をするときは、自ら当事者となるのか、代理か、媒介かの別を明示しなければなりません。生成AIは自社がどの立場かを知らないので、この一行は必ずテンプレート側に固定で持たせます。

不動産の表示に関する公正競争規約

業界の自主ルールです。景品表示法第36条第1項に基づき、消費者庁長官と公正取引委員会の認定を受けたもので、公益社団法人首都圏不動産公正取引協議会が運用しています。同協議会の区域は茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、新潟県、山梨県および長野県で、栃木県はここに含まれます。規約に反した表示には、調査のうえで警告、内容によっては違約金を課される場合があると明記されています。

広告文で実務的にいちばん効いてくるのは、この規約です。あとで見るとおり、使ってよい言葉と数え方が具体的に決まっています。

景品表示法

こちらも法律で、優良誤認・有利誤認と、2023年10月1日から適用されているステルスマーケティング規制がかかります。広告であることを隠して第三者の感想のように見せる表現は、業種を問わず違反になります。景品表示法の全体像は小売・卸売業の生成AI活用と景品表示法で扱っているので、そちらもあわせて確認してください。

生成AIがまっ先に出す「最高」「格安」「完全」

根拠資料がなければ使えない4分類

不動産の表示に関する公正競争規約・同施行規則(PDF)の第18条第2項は、次の用語について、表示内容を裏付ける合理的な根拠を示す資料を現に有している場合を除き、使用してはならないと定めています。

最上級・著しく安い・全く欠けるところがない・競争事業者より優位という4分類の用語を、公開前の関門で止める様子を示した図
公開前に落とす4分類の用語
分類 規約が挙げている用語
最上級を意味する用語(第1号) 「最高」「最高級」「極」「特級」等
著しく安いという印象を与える用語(第2号) 「買得」「掘出」「土地値」「格安」「投売り」「破格」「特安」「激安」「バーゲンセール」「安値」等
全く欠けるところがないことを意味する用語(第3号) 「完全」「完ぺき」「絶対」「万全」等
競争事業者より優位に立つことを意味する用語(第4号) 「日本一」「日本初」「業界一」「超」「当社だけ」「他に類を見ない」「抜群」等

生成AIに「魅力的に書いて」と頼むと、この4分類の言葉が高い確率で出てきます。文章を魅力的にするいちばん簡単な方法が最上級と断定だからです。指示文の側で「最上級の表現、断定表現、他社比較を使わない」と先に書いておくと、出現率は下がります。ただしゼロにはならないので、公開前の点検は残します。

第1号・第2号は根拠となる事実を併記する場合に限り使える

同じ第18条第2項には続きがあり、第1号(最上級)と第2号(著しく安い)については、当該表示内容の根拠となる事実を併せて表示する場合に限り使用できるとされています。つまり「最高級」という語を出すなら、何をもって最高級なのかという事実を同じ広告面に書く必要があります。

生成AIはこの「事実の併記」を自分では用意できません。根拠になる事実は社内の資料の中にあるものだからです。ここは人が足す作業として残ります。

そのまま出すと危ない表現と、書き換えの方向

実際に生成AIから出てきやすい言い回しと、規約に沿った方向への直し方を並べます。

生成AIが出しやすい物件紹介文の表現と、公正競争規約に沿った書き換えの方向を左右に並べた対比図
生成AIの出力と、規約に沿った書き換え

生成AIが出しやすい表現と、該当しうる規定

生成AIが出しやすい表現 引っかかる可能性のある規定 書き換えの方向
駅チカ最高の立地 第18条第2項第1号(最上級) 駅から徒歩◯分(道路距離◯メートル)
相場より格安 第18条第2項第2号(著しく安い) 価格と、周辺相場を示す根拠を併記するか、価格のみを書く
完全リフォーム済 第18条第2項第3号(完全) 改装の実施箇所と実施時期を具体的に書く
当社だけの独占物件 第18条第2項第4号(優位性) 取引態様(専任媒介など)を規定どおり明示する
徒歩5分の好立地(実測せず) 第23条第5号(徒歩所要時間を短いと誤認) 道路距離を測り、80メートルにつき1分で算出する
明るい洋室として使える納戸 第23条第10号(居室に該当しない部屋を居室と誤認) 建築基準法上の居室でないものは「納戸」等と表示する
築浅のきれいな建物 第23条第18号(建築経過年数・建築年月を新しいと誤認) 建築年月を書く

違反にあたるかは表示全体で判断される

表の「引っかかる可能性のある規定」は、条文の位置を示すためのものです。個別の広告が違反にあたるかどうかは表示全体で判断されるため、判断に迷う表現は事前相談に回してください。

定義が決まっている表現|徒歩分数・新築・おとり広告

徒歩による所要時間は道路距離80メートルにつき1分

表示規約施行規則は、徒歩による所要時間について「道路距離80メートルにつき1分間を要するものとして算出した数値を表示すること」「1分未満の端数が生じたときは、1分として算出すること」と定めています。端数は切り上げです。

生成AIに「駅からの徒歩時間を書いて」と頼むのは危険です。生成AIは道路距離を知りません。地図サービスの直線距離や、一般的な歩行速度から推測した数字を出してきます。徒歩分数は社内で道路距離を測り、80で割って切り上げた数値をテンプレートに埋める。生成AIには数値を渡す側に回ってもらいます。

「新築」は建築工事完了後1年未満かつ未入居

規約第18条第1項第1号は、「新築」を建築工事完了後1年未満であって、居住の用に供されたことがないものと定義しています。日常語の「新しい」とは範囲が違います。

生成AIは日常語で書くので、築1年を過ぎた物件や一度入居のあった物件にも「新築同様」「ほぼ新築」と付けてきます。物件データベース側で建築年月と入居履歴を管理し、「新築」の語はデータから自動で入る場合だけ使う、という設計にしておくと事故が減ります。

取引できない物件を載せ続けるとおとり広告

規約第21条は、次の3つをおとり広告として禁じています。

  1. 物件が存在しないため、実際には取引することができない物件に関する表示
  2. 物件は存在するが、実際には取引の対象となり得ない物件に関する表示
  3. 物件は存在するが、実際には取引する意思がない物件に関する表示

これは文章の書き方の問題ではなく、掲載を止める運用の問題です。生成AIで紹介文を量産できるようになると、掲載本数が増え、成約後の削除が追いつかなくなります。書く速度を上げるなら、消す手順を先に決めてください。 掲載一覧と成約情報を突き合わせる担当と頻度を、紹介文の作成手順とセットで書いておきます。

物件紹介文をつくる流れ

規約を守りながら生成AIを使うなら、手順の順番が決まります。

物件データを人が埋め、データだけを渡して下書きを出させ、用語を点検し、掲載責任を持つ担当者が読んでから公開するまでの流れを示した図
物件紹介文をつくる流れ

手順1〜2:物件データを人が埋め、そのデータだけで下書きを出す

まず、物件データを人が埋めます。所在地、面積、間取り、建築年月、価格または賃料、取引態様、道路距離から算出した徒歩分数。ここは記録から転記する作業で、生成AIの出番ではありません。

次に、埋めたデータだけを渡して下書きを出させます。このとき指示文に「最上級・断定・他社比較を使わない」「データにない事実を書かない」「徒歩分数は渡した数値をそのまま使う」の3点を毎回入れます。

手順3〜4:用語の点検と、掲載責任者の最終確認

出てきた文章は、用語の点検にかけます。第18条第2項の4分類にあたる語が残っていないかを機械的に探し、残っていれば落とす。ここは検索置換で済みます。

最後に、掲載責任を持つ担当者が読みます。取引態様が入っているか、面積や間取りが物件データと一致しているか、写真や間取り図が当該物件のものか。ここを通ってから公開します。

写真や間取り図を生成AIで作ったり加工したりする場合の権利関係は、生成AIで作った画像・文章の著作権|栃木の印刷・デザイン業で整理しています。実物と異なる印象を与える加工は、表示規約の側でも問題になります。

重要事項説明書は生成AIの守備範囲の外

宅地建物取引業法第35条は、売買・交換・貸借の相手方等に対し、契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士をして、法定の事項について、これらを記載した書面を交付して説明をさせなければならないと定めています。説明する人が法律で指定されている書面です。

生成AIが触れてよい下書きや用語の点検と、点線の向こうにある重要事項説明書と宅地建物取引士の領域を分けて示した図
生成AIが触れる範囲と、宅地建物取引士が持つ範囲

したがって、重要事項説明書の作成そのものを生成AIに任せる、という発想は取りません。調査した内容の要点を社内で共有するためのメモを整えるといった周辺作業なら使えますが、書面に載る事実は調査結果が根拠であり、生成AIが埋めてよい欄はありません。

同じ考え方は、契約書のチェックにも当てはまります。取引先との契約書を外部の助言に近い形で扱うときの線引きは、取引先の契約書チェックに生成AIを使う線引きにまとめました。

生成AIに入力してはいけない情報

不動産の仕事は、個人の生活と資産に直結する情報を扱います。次のものは、社内で契約している業務用のサービスであっても、入力する前に一度止めてください。

  • 売主・買主・貸主・借主の氏名、住所、電話番号、勤務先、家族構成
  • 入居申込書、収入証明、審査に関するやり取り
  • 内見予約者や問い合わせ者の連絡先
  • 指定流通機構(レインズ)から得た会員向けの情報。外部サービスへ入力してよいかは、運営規程と自社の会員規約で確認してください
  • 相続、離婚、債務整理など、売却の背景に関する事情
  • 未公開段階の物件情報や、売主から口外を止められている条件

社内でどこに線を引くかを1枚にまとめる手順は、生成AIガイドラインの作り方|A4 2枚・必須6項目にあります。不動産業の場合は、上の6項目をそのまま「入力しないもの」の欄に写すところから始めれば足ります。

公開前に確認する5つ

  1. 第18条第2項の4分類の語が残っていないか(最高・格安・完全・日本一の系統)
  2. 徒歩分数が道路距離80メートルにつき1分で算出され、端数が切り上げられているか
  3. 取引態様が明示されているか
  4. 「新築」の語が、建築工事完了後1年未満かつ未入居の物件にだけ使われているか
  5. 成約済み・募集終了の物件が残っていないか

この5つは毎回同じなので、チェックリストとして紙かスプレッドシートに置き、担当者が変わっても同じ順で見られるようにしておきます。

県内で相談できる先

広告表示の事前相談:首都圏不動産公正取引協議会

広告表示について迷ったときの一次窓口は、公益社団法人首都圏不動産公正取引協議会です。同協議会は不動産事業者や広告会社から広告企画の事前相談を受け付けており、その件数は年間1万数千件にのぼると公表しています。掲載前に相談できるのが最大の利点です。

景品表示法とステルスマーケティング規制:消費者庁

景品表示法そのものの考え方は、消費者庁「表示規制の概要」で確認できます。特に不実証広告規制は、効果や優位性をうたう表現を出したときに合理的根拠資料の提出を求められる仕組みなので、生成AIが書いた比較表現を扱うときに直結します。ステルスマーケティング規制は消費者庁「令和5年10月1日からステルスマーケティングは景品表示法違反となります。」にまとまっています。

生成AI導入と免許の相談先:県の窓口

生成AIの導入そのものの相談先としては、栃木県が設置したとちぎビジネスAIセンターがあります。相談の進め方はとちぎビジネスAIセンターの使い方|支援3分野と手順にまとめました。宅地建物取引業の免許や監督については、栃木県知事免許であれば栃木県、国土交通大臣免許であれば国が所管します。

よくある質問

Q. 「最高」や「格安」は絶対に使えないのですか。
A. 表示規約第18条第2項は、表示内容を裏付ける合理的な根拠を示す資料を現に有している場合を除いて使用してはならない、という書き方をしています。さらに最上級(第1号)と著しく安い(第2号)については、根拠となる事実を併せて表示する場合に限り使用できるとされています。根拠と事実の併記が用意できないなら使わない、という運用が現実的です。

Q. 生成AIに徒歩分数を計算させてはいけないのですか。
A. 規約は道路距離80メートルにつき1分で算出し、1分未満は1分に切り上げると定めています。生成AIは実際の道路距離を知らないため、数値を出させると根拠のない分数になります。人が道路距離を測って算出し、その数値を渡してください。

Q. ポータルサイトに出す紹介文も規約の対象ですか。
A. 表示規約は不動産の取引について行う表示に関する事項を定めたもので、媒体で区別されていません。自社サイトでもポータルサイトでも、同じ用語の基準と算出方法で書くのが安全です。

Q. 生成AIが書いた文章に、社名や担当者名を出さなくてもよいですか。
A. 広告であることを隠して第三者の感想のように見せる表示は、2023年10月1日から景品表示法のステルスマーケティング規制の対象です。事業者が出す広告は、広告と分かる形にしてください。

Q. 小規模な事務所ですが、何から始めればよいですか。
A. 物件データの入力欄を先に整えることです。所在地、建築年月、道路距離、取引態様の4つが記録から自動で入るようになると、生成AIに渡す材料が固まり、点検の対象が文章の言い回しだけに絞れます。一人や二人で回す進め方は栃木の小規模事業者向け生成AI|一人でも回る5つの型を参照してください。

まとめ

栃木県の「不動産業,物品賃貸業」は4,777事業所。物件が入れ替わるたびに紹介文を書き直す仕事なので、生成AIの効きどころははっきりしています。同時に、危ないところもはっきりしています。

不動産の表示に関する公正競争規約第18条第2項が挙げる「最高」「格安」「完全」「日本一」の系統は、合理的な根拠を示す資料を現に持っている場合を除いて使えません。徒歩分数は道路距離80メートルにつき1分で算出し、端数は切り上げます。「新築」は建築工事完了後1年未満かつ未入居に限られます。取引できない物件を載せ続ければ第21条のおとり広告です。そして重要事項説明は、宅地建物取引士が説明する法定の書面です。

生成AIには、物件データを渡して下書きを書かせるところまでを任せる。用語の点検と、事実の確認と、掲載の可否は人が持つ。この分け方であれば、書く速度を上げながら規約の線の内側にとどまれます。

出典・参考

この記事で確認できていないこと

  • 栃木県内の宅地建物取引業免許業者数。2026年9月時点で県公式の集計を確認できていません。本記事では経済センサスの「不動産業,物品賃貸業」の事業所数を用いており、これは宅地建物取引業者数とは一致しません
  • 表示規約・同施行規則の最終改正年月日。掲載PDFに明示がなく、2026年9月時点で首都圏不動産公正取引協議会サイトに掲載されているものを参照しています
  • 栃木県内で不動産広告に生成AIを使っている事業者の割合。県単位の集計は2026年9月時点で公式に確認できていません
  • 個別の表現が規約違反にあたるかどうかの判断。表示全体で判断されるため、本記事の書き換え例は方向を示すもので、可否の断定ではありません
  • レインズ(指定流通機構)の情報を外部サービスへ入力することの可否。運営規程と会員規約の該当条項は本記事では確認していません