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生成AIで作った画像・文章の著作権|栃木の印刷・デザイン業

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生成AIで作った画像・文章の著作権|栃木の印刷・デザイン業

生成AIで作ったチラシやSNS画像で問題になる論点は、実は2つに分かれます。ひとつは既存の作品の著作権を侵害していないか、もうひとつはできあがったものが自社の著作物になるかです。この2つは別の問題で、文化庁も混同しないよう明記しています。侵害の判断は「類似性」と「依拠性」の両方がそろうかどうか、自社の著作物になるかは指示の中身と人の加筆で決まります。この記事は、文化庁が公表している資料を一次で確認し、県内で販促物を作っている現場の手順に置き換えたものです。

栃木で販促物を作っているのは、制作会社だけではない

まず、県内でどれくらいの現場が「作る側」にいるかを押さえます。栃木県「令和3年経済センサス-活動調査 製造業に関する統計表」の第1表(産業中分類別)によると、印刷・同関連業は126事業所・2,339人、製造品出荷額等は4,200,894万円(約420億円)です。この表は従業者4人以上の事業所の集計で、内訳は4〜29人が102事業所、30人以上が24事業所。つまり県内の印刷業は、そのほとんどが30人未満の事業所です。

ただし、販促物を作っているのはこの126事業所だけではありません。栃木県「令和3年経済センサス-活動調査 産業大分類別民営事業所数、従業者数」では、県内の民営事業所は全産業で80,062事業所、そのうち卸売業,小売業が19,572事業所宿泊業,飲食サービス業が9,099事業所です。店頭のPOP、季節のチラシ、商品ページ、SNSの投稿画像は、この2万8千を超える事業所が日々作っています。広告業やデザイン業を含む大分類「学術研究,専門・技術サービス業」は3,119事業所・31,355人です。

つまり、この記事の読者は「デザインを仕事にしている人」だけではありません。自分でチラシを作っている小売店や飲食店、農産物の販促文を書いている生産者も同じ立場です。

混同しやすい2つの問題を、先に分けておく

文化庁が公表した「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」(令和6年7月31日)は、業務でAIを使う人向けの章で、従業員への著作権教育について次の趣旨を挙げています。不十分な著作権理解に基づく誤解、たとえばAI生成物の生成・利用に伴い既存の著作物の著作権侵害が生じるかという問題と、AI生成物の著作物性の有無の問題とを混同するといった誤解と、それに伴う不適正な利用を生じさせないよう、従業員に対して著作権制度の理解を確認しておくことが必要だ、というものです。

言い換えると、社内で最初に共有すべきは次の2文です。

  1. 他人の権利を侵していないか(侵害の問題)
  2. できたものが自分の権利になるか(著作物性の問題)

この2つは連動しません。誰の権利も侵していないが自社の著作物でもない、という状態は普通に起こります。以下、順に見ていきます。

侵害の判断は「類似性」と「依拠性」の両方

著作権侵害の判断は類似性と依拠性の両方
著作権侵害の判断は類似性と依拠性の両方

文化庁「AIと著作権に関する考え方について」(令和6年3月15日・文化審議会著作権分科会法制度小委員会)は、既存の判例では、ある作品に既存の著作物との類似性と依拠性の両者が認められる際に著作権侵害となるとされており、生成AIによる生成物についても、生成・利用段階でこれらが認められれば、既存の著作物の著作権者は差止請求や損害賠償請求をし得ると整理しています。故意による著作権侵害には刑事罰の適用があり得るとも書かれています。

類似性については、既存の判例で、表現それ自体でない部分や表現上の創作性がない部分について同一性があるにとどまるものではなく、既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできるものについて認められてきた、とされています。AI生成物の判断も同様だとされ、何が「表現上の本質的な特徴」に当たるかは個別具体的な事例に即して判断される、と留保が付いています。

依拠性については、同資料が、AI利用者が既存の著作物(その表現内容)を認識しており、生成AIを利用してその創作的表現を有するものを生成させた場合は依拠性が認められ、AI利用者による著作権侵害が成立すると考えられる、と整理しています。例として挙がっているのが次の2つです。

  • Image to Image(画像を生成AIに指示として入力し、生成物として画像を得る行為)のように、既存の著作物そのものを入力する場合
  • 既存の著作物の題号(タイトル)などの特定の固有名詞を入力する場合

現場の言葉にすると、「この写真みたいに作って」と他人の写真を投げ込む「◯◯風で」と作品名やキャラクター名を打ち込む——このどちらも、依拠性を認められやすくする行為だということです。前掲のチェックリストでも、こうした入力は依拠性を推認させる間接事実になると説明されています。社内ルールに書くなら、この2行がいちばん効きます。

「生成できた」と「使ってよい」は別

見落とされやすいのが、生成の段階と利用の段階で判断が変わる点です。文化庁のチェックリストは、生成AIによる生成自体は、個人が私的使用の目的で生成する場合(著作権法第30条第1項)や、企業・団体等の内部において権利者から許諾を得て利用することを前提に検討の過程において生成する場合(同法第30条の3)は、これらの権利制限規定の範囲内であれば権利者の許諾なく適法に行うことができる、としています。一方で、AI生成物の利用(インターネットでの配信、複製物の譲渡等)については、権利制限規定の範囲外となる場合が多いと書かれています。

社内の検討用に画像をいくつか生成してみるのと、それをチラシに刷って配る・SNSに投稿する・商品パッケージに載せるのは、別の行為です。印刷にかける前、投稿ボタンを押す前が、確認のタイミングになります。

そして、その確認の方法についても、チェックリストは具体的に書いています。AI生成物については、その利用に先立って、まずは既存の著作物と類似していないかを確認することが必要で、確認手段としてインターネット検索(文章検索・画像検索)の活用が挙げられています。画像なら画像検索、文章なら特徴的な一文を検索窓に入れる。これだけで、明らかに危ない出力はふるい落とせます。

生成物が「自社の著作物」になるかは、指示と修正で決まる

AI生成物の著作物性で考慮される3つの要素
AI生成物の著作物性で考慮される3つの要素

次に、できあがったものの権利です。文化庁の「考え方」は、生成AIに対する指示が表現に至らないアイデアにとどまるような場合には、当該AI生成物に著作物性は認められないと考えられる、としています。そのうえで、著作物性の判断にあたって考慮される要素として次の3つを挙げています。

  1. 指示・入力(プロンプト等)の分量・内容:創作的表現といえるものを具体的に示す詳細な指示は、創作的寄与があると評価される可能性を高める。他方で、長大な指示であっても、創作的表現に至らないアイデアを示すにとどまる指示は、創作的寄与の判断に影響しない
  2. 生成の試行回数:試行回数が多いこと自体は、創作的寄与の判断に影響しない。他方で、生成物を確認し指示・入力を修正しつつ試行を繰り返すといった場合には、著作物性が認められることも考えられる
  3. 複数の生成物からの選択:単なる選択行為自体は、創作的寄与の判断に影響しない

さらに、人がAI生成物に創作的表現といえる加筆・修正を加えた部分については、通常、著作物性が認められると考えられる、とされています(それ以外の部分の著作物性には影響しない、との但し書き付きです)。

実務への含意は、はっきりしています。ボタンを100回押しても権利は生まれません。生まれるのは、どんな表現にしたいかを具体的に指示し、出てきたものを見て指示を直し、最後に人が手を入れた部分です。逆に言えば、「イメージを伝えて出てきたものをそのまま使う」運用では、その成果物を他社に真似されても著作権では止められない可能性があります。ロゴ、看板、シリーズで使い続けるキャラクターなど、長く使う予定のものほど、人の手を入れる工程を残しておく必要があります。

なお同資料は、著作物性がないものであっても、判例上、その複製や利用が営業上の利益を侵害するといえるような場合には、民法上の不法行為として損害賠償請求が認められ得る、とも記しています。著作権で守れないことと、何をされても構わないことは別です。

他人の作品を入力するとき、第30条の4が効かない場合がある

「学習に使うのは自由なんでしょう」という理解も、そのままでは危うい部分があります。文化庁のチェックリストは、生成の指示をする際に既存の著作物を入力する場合(いわゆるImage to Imageにおける既存画像の入力等)について、入力に伴って生じる複製等は、情報解析して生成の指示とするためのものであり原則として著作権法第30条の4が適用されると考えられるとしつつ、「入力した既存の著作物と類似する生成物を生成させる」といった目的で入力を行う場合は、「享受」目的が併存している場合に当たるとして、同条が適用されない場合があるとしています。この場合は、入力に伴う複製等について権利者の許諾を得ることが必要になります。

つまり、他人の写真やイラストを「参考に」入れる行為は、何のために入れるかで扱いが変わります。構図の傾向を調べるために入れるのと、それに似たものを出させるために入れるのとでは、別の話になるということです。現場のルールとしては「他人の作品は入力しない」で統一するのがいちばん事故が少なく、例外を作るなら誰の許諾を取ったかを記録に残す運用にします。

制作物を納品するとき、説明できるようにしておくこと

受注して制作している立場なら、もう一段の備えが要ります。文化庁のチェックリストは、業務利用者向けに次の趣旨を挙げています。

  • AI生成物をライセンス契約等の取引の対象とする場合、それが著作物であるかどうかが取引の重要な要素になる場合がある。著作物であることを前提に取引の対象とする場合には、関係するステークホルダーに対して、AIを利用した生成物であることやその著作物性等について適切に説明することが求められる
  • 既存の著作物の著作権を侵害するものでないこと(特に既存の著作物と類似したものとなっていないこと等)についても、可能な確認措置(インターネット検索等)を行っていることを適切に説明できるようにしておくことが望まれる
  • 依拠性がないことを説明できるよう、生成に用いたプロンプト等、生成物の生成過程を確認可能な状態にしておくよう努めることが望まれる

これは、制作会社と発注者の間で交わす言葉を変えます。「AIは使っていません」と言い切るのではなく、どこにAIを使い、どんな確認をし、どこに人が手を入れたかを説明できる状態にする。プロンプトと生成の履歴を案件フォルダに残す運用は、その日から始められます。逆に発注する側は、この説明を求めてよい立場です。取引の条件として、権利の帰属と、AIを使った場合の確認手順を契約書に書いておくのが確実です。

社内で決める5つのこと

販促物を出すまでに通す5つの関門
販促物を出すまでに通す5つの関門

ここまでの内容を、現場で回る形に落とします。

  1. 使うサービスの利用規約を読む。チェックリストは、AIサービスの利用規約等で著作権侵害のおそれがある利用方法(他人の著作物を入力することの禁止等)が禁止または制限されている場合があり、あらかじめ確認してこれに従って利用することが必要だとしています
  2. 他人の作品を入力しない。例外を作るなら、許諾の記録を残す
  3. 公開前に照合する。画像は画像検索、文章は特徴的な一文で検索
  4. 生成過程を残す。プロンプトと採用した生成物を、案件フォルダに一緒に置く
  5. 人が手を入れる。長く使うものほど、加筆・修正の工程を省かない

あわせて、チェックリストは、生成AIの利用に関する内部的ルールの策定等、著作権侵害に対する適切な予防措置を講じることや、仮に侵害が生じた場合に講じるべき対応(情報共有、サービスの停止・復旧、権利者への対応、原因解明、再発防止措置等)をあらかじめ想定し検討しておくことが望まれる、としています。この2つは、生成AIガイドラインの作り方で示したA4 2枚のガイドラインに、そのまま1項目ずつ足せます。社内での共有の仕方は中小企業の生成AI研修設計5ステップの考え方が使えます。

著作権のほかに、販促物で見るもの

販促物には、著作権以外のルールも重なります。

  • 表示のルール:価格や品質の書き方は景品表示法の対象です。生成AIが足しがちな言い切りや比較表現の扱いは、小売・卸売業の生成AI活用と景品表示法で整理しています
  • 人の顔:実在の人物に見える画像を広告に使う場合、肖像の問題が別に生じます。本記事の範囲外です
  • 商標・意匠:ロゴやパッケージ形状は、著作権とは別の制度で保護されます。本記事では扱っていません
  • 多言語の表示:訳文を機械任せにしない点は、観光業向け生成AI多言語対応4手順で扱っています
  • 農産物・特産品の販促:産地表示や品種名の扱いを含めた例は、いちご農家の生成AI活用6場面にまとめています

ひとりで制作から販売まで回している事業所は、この確認を全部やろうとすると止まります。小規模事業者向けの生成AI活用で書いたとおり、確認手順そのものをテンプレートにして、指示文と同じ場所に置いておくのが現実的です。

県内で相談できる先

よくある質問

Q. 生成AIで作ったチラシの画像を、そのまま印刷して配ってよいですか。
A. 配る前に、既存の著作物と類似していないかを確認してください。文化庁のチェックリストは、利用に先立ってまず類似していないかを確認することが必要とし、確認手段としてインターネット検索(文章検索・画像検索)の活用を挙げています。生成できたことと、外に出してよいことは別です。

Q. 「ジブリ風」「◯◯(作品名)みたいに」と指示するのは問題ですか。
A. 文化庁の資料は、既存の著作物の題号などの特定の固有名詞を入力する場合、AI利用者が既存の著作物を認識していたことを推認させる間接事実になり、依拠性が認められやすくなると考えられるとしています。侵害が成立するには類似性も必要ですが、リスクを自分から上げる指示であることは確かです。作風を伝えたいなら、色数・線の太さ・構図といった要素の言葉に置き換えてください。

Q. 生成AIで作ったロゴに、うちの著作権はありますか。
A. 指示が表現に至らないアイデアにとどまる場合、著作物性は認められないと考えられる、というのが文化庁の整理です。逆に、具体的な指示、生成物を見ながらの指示の修正、人による加筆・修正を重ねた部分については、著作物性が認められる可能性が上がります。長く使うロゴなら、人が手を入れる工程を必ず残してください。

Q. 試行回数を増やせば「自分で作った」ことになりますか。
A. なりません。文化庁の資料は、試行回数が多いこと自体は創作的寄与の判断に影響しないとしています。ただし、生成物を確認して指示を修正しながら繰り返す場合には、著作物性が認められることも考えられる、とされています。回数ではなく、直し方の中身です。

Q. 参考にしたい他社のチラシの写真を、生成AIに読み込ませてもよいですか。
A. すすめません。文化庁のチェックリストは、既存の著作物を入力する行為は原則として著作権法第30条の4が適用されると考えられるとしつつ、入力した著作物と類似する生成物を生成させる目的の場合は「享受」目的が併存するとして同条が適用されない場合があるとしています。社内ルールは「他人の作品は入力しない」で統一するのが安全です。

Q. 制作を外注しています。発注側は何を確認すればよいですか。
A. AIを使ったかどうか、使った場合にどんな確認措置を行ったか、生成過程が確認できる状態になっているかの3点です。文化庁のチェックリストは、取引の対象とする場合に、AIを利用した生成物であることや著作物性等について適切に説明することが求められるとしています。権利の帰属とあわせて、契約書に書いておくのが確実です。

Q. 社員が個人アカウントの生成AIで作った画像を、会社のSNSに使っていました。
A. 利用規約の確認、他人の作品を入力していないか、公開前の照合という3点が抜けている可能性があります。まず社内ルールを1枚作り、どのサービスを業務で使ってよいかを決めてください。運用ルールの作り方は本文の「社内で決める5つのこと」を出発点にできます。

まとめ

栃木県内の印刷・同関連業は126事業所・2,339人(従業者4人以上)ですが、販促物を作っているのはそこだけではありません。卸売業,小売業19,572事業所、宿泊業,飲食サービス業9,099事業所が、日々チラシとPOPとSNS投稿を作っています。

覚えることは2つに絞れます。侵害は「類似性」と「依拠性」の両方がそろったときに成立し、依拠性は他人の作品や作品名を入力したときに認められやすくなります。自社の著作物になるかは、回数ではなく、具体的な指示・指示の修正・人の加筆で決まります。この2つを混同しないことが、文化庁が従業員教育の要点として挙げていることでもあります。

今日から始められるのは、公開前に画像検索と文章検索で照合する一手間と、プロンプトを案件フォルダに残す習慣です。まずは直近に出したチラシ1枚で、この2つを試してください。

出典・参考

この記事で確認できていないこと

  • 個別の生成物が既存の著作物の著作権を侵害するかどうかの判断。類似性の有無は個別具体的な事例に即して判断されるため、疑いがある場合は弁護士に確認してください
  • 特定の生成AIサービスについて、学習データの内容や、生成物の権利の扱い。各サービスの利用規約と提供事業者の説明で確認してください
  • 栃木県内の企業における販促物制作での生成AI利用率。県単位の集計は2026年9月時点で公式に確認できていません
  • 広告業・デザイン業に限定した県内の事業所数。本記事で確認できたのは、製造業の中分類「印刷・同関連業」の値と、広告業等を含む大分類「学術研究,専門・技術サービス業」の値までです
  • 商標・意匠・肖像に関する取扱い。本記事は著作権に関する論点のみを扱っています
  • 経済センサスの数値は令和3年調査の値です。それ以降の事業所数の変動は本記事では確認していません