令和8年度の全国労働衛生週間は10月1日から7日までで、その前の9月1日から9月30日が準備期間です。準備期間にやることは要綱で決まっていて、日常の労働衛生活動の総点検です。この記事では、8つの重点事項を栃木の事業場の言葉に置き換える手順と、その過程で出てくる文書仕事のどこまでを生成AIに任せてよいかを整理します。結論から言うと、任せてよいのは「点検の枠組みづくりと社内文書の下書き」までで、健康情報そのものは入力しません。
栃木の労働災害は8月末で1,334人|死亡は前年1年分に並んだ
前年同期より7.2%増えている
栃木労働局が公表している署別・業種別労働災害発生状況の令和8年8月末現在の集計(PDF)によると、県内の休業4日以上の死傷者数は全産業計で1,334人です。前年同期の1,244人から90人増(7.2%増)しています。

死亡災害はさらに重い数字になっています。令和8年8月末時点の速報で18人。前年同期は12人でした。そして令和7年の確定値(PDF)を見ると、令和7年の1年間の死亡者数が18人です。つまり1年分の死亡者数に、今年は8月末の時点で並んでいます。
なお令和7年は、休業4日以上の死傷者数が2,200人で、令和6年の2,234人から34人減(1.5%減)でした。減っていた流れが今年は反転している、という読み方になります。
製造業が4分の1、第三次産業が半分
令和8年8月末現在の内訳を業種の大きなくくりで見ると、次のようになります。
| 区分 | 死傷者数 | 全産業計に占める比率 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|
| 全産業計 | 1,334人 | 100.0% | 90人増(7.2%増) |
| 製造業 計 | 345人 | 25.9% | 40人増(13.1%増) |
| 第三次産業 計 | 644人 | 48.3% | 56人増(9.5%増) |
| 建設業 計 | 124人 | 9.3% | 4人増(3.3%増) |
製造業の集積が厚い栃木では、製造業だけで全体の4分の1を占めます。増加率で見ても製造業の13.1%増が目立ちます。第三次産業のなかでは小売業150人(11.2%)、社会福祉施設104人(7.8%)が大きい区分です。自社の業種がどのあたりに位置するかを確認してから、後述の重点事項を読むと優先順位が決めやすくなります。
この統計と労働衛生週間の関係
ひとつ断っておくと、この統計は転倒や挟まれといった業務上の負傷を中心にした労働災害の数字で、全国労働衛生週間が扱う健康障害と完全に重なるわけではありません。労働衛生週間の中心は、健康診断、メンタルヘルス、過重労働、化学物質、熱中症といった「健康」の領域です。
それでも並べて見る意味はあります。安全の数字が悪化している事業場は、たいてい人手が足りず、点検や記録に手が回っていません。労働衛生の総点検が後回しになる条件とほぼ同じです。数字が動いた年こそ、9月のうちに一度立ち止まる価値があります。
全国労働衛生週間2026の日程|準備期間は9月30日まで
期間・スローガン・主唱者
厚生労働省の報道発表令和8年度「全国労働衛生週間」を10月に実施と実施要綱(PDF)によると、令和8年度の全国労働衛生週間は次の通りです。

- 期間:10月1日から10月7日まで
- 準備期間:9月1日から9月30日まで
- スローガン:ひとりひとりが貴重な人材 心も体も健やかに みんな生き生き健康職場
- 主唱者:厚生労働省、中央労働災害防止協会
- 実施者:各事業場
昭和25年の第1回から数えて、今年で第77回です。協賛者には建設業労働災害防止協会、陸上貨物運送事業労働災害防止協会、港湾貨物運送事業労働災害防止協会、林業・木材製造業労働災害防止協会が名を連ねています。
週間中に実施する5つの事項
要綱の「実施者の実施事項」は、週間中(10月1日〜7日)と準備期間中(9月1日〜30日)に分かれています。週間中の5つは次のとおりです。
- 事業者又は総括安全衛生管理者による職場巡視
- 労働衛生旗の掲揚及びスローガン等の掲示
- 労働衛生に関する優良職場、功績者等の表彰
- 有害物の漏えいによる事故、酸素欠乏症等による事故等、緊急時の災害を想定した実地訓練
- 労働衛生に関する講習会・見学会等の開催、作文・写真・標語等の掲示
見ての通り、10月に入ってから準備を始めるものはひとつもありません。掲示物も講習会も巡視のルートも、9月のうちに用意しておくものです。
準備期間にやるのは「総点検」|要綱が挙げた8つの重点
要綱は準備期間中の実施事項を「日常の労働衛生活動の総点検を行う」と定め、重点事項を(ア)から(ク)まで8つ挙げています。順番に見ていきます。

健康の保持増進と、女性の健康課題
(ア)は「事業場における労働者の健康保持増進の指針」等を踏まえた措置です。体制の確立や計画の策定、適切な健康教育の実施に加えて、がん検診、口腔の健康の保持増進、眼科検診など、健康診断以外の産業保健の取組の周知・啓発が挙がっています。
(イ)は女性の健康課題の理解促進です。健康教育や相談体制の整備のほか、産業保健総合支援センターの専門的研修の受講、相談窓口の活用、「女性特有の健康課題に関する問診を活用した女性の健康管理支援実施マニュアル~事業者向け~」の活用が示されています。要綱の趣旨でも、女性の就業率の上昇とともに働く女性の健康問題への対応が課題になっていると書かれています。
両立支援とメンタルヘルス
(ウ)は治療と就業の両立支援です。事業者による基本方針の表明と労働者への周知、研修等による意識啓発、相談窓口の明確化、個人情報保護のための適切な情報管理、休暇・勤務制度の整備などが並びます。
(エ)のメンタルヘルス対策がいちばん項目数の多い重点事項です。「心の健康づくり計画」の策定と評価・改善、4つのメンタルヘルスケア(セルフケア、ラインによるケア、事業場内産業保健スタッフ等によるケア、事業場外資源によるケア)の推進、労働者が産業医等に直接相談できる仕組みの整備、そしてストレスチェック制度の適切な実施(実施結果の労働基準監督署への報告を含む)の徹底と集団分析の活用が挙げられています。9月10日から9月16日の「自殺予防週間」をとらえた取組も明記されています。
要綱の趣旨には、精神障害による労災支給決定件数が過去最多になったことが書かれています。小規模事業場を含めたメンタルヘルス対策の推進が必要、という文脈です。
過重労働・熱中症・小規模事業場・個人事業者等
(オ)は過重労働による健康障害防止です。時間外・休日労働の削減、年次有給休暇の取得促進、勤務間インターバル制度の導入、労働時間の状況の把握と長時間労働者に対する医師の面接指導、そして健康診断の適切な実施と異常所見者についての医師からの意見聴取・事後措置の徹底が並びます。
(カ)は熱中症予防対策です。連絡体制の整備等を内容とする改正労働安全衛生規則に基づく措置義務の徹底、WBGT値の把握と対策、労働衛生教育の実施に加えて、「本年夏季に実施した各熱中症予防対策の取組に関する確認」が挙がっています。夏が終わったこの時期だからこそ、今年の運用を振り返っておく項目です。
(キ)は小規模事業場における産業保健活動の充実です。産業医・産業保健師等の活用、一般健康診断結果に基づく事後措置の徹底、ストレスチェックの実施と集団分析、地域産業保健センターの活用が示されています。(ク)は個人事業者等の安全衛生の確保に関する事項です。
なお要綱の趣旨には、令和6年度から全面施行されている化学物質の自律的管理の定着・推進を引き続き進める必要があるとも書かれています。塗装、めっき、洗浄などの工程を持つ事業場は、この軸も点検対象に入ります。
総点検の前に出てくる文書仕事を生成AIで整える
8つの重点事項を読むと分かる通り、総点検の実体はかなりの割合が「書く仕事」です。点検表を作り、委員会にかけ、社内に周知し、記録に残す。ここが生成AIの入り口になります。

点検表を自社の言葉に置き換える
要綱の重点事項はそのままでは行政文書の言い回しです。「治療と就業の両立支援対策の推進に関する事項」と点検表に書いても、現場の担当者は何を確認すればよいか分かりません。
要綱の項目を貼り付けて、自社の業種と規模を伝えたうえで、現場の担当者が「はい・いいえ」で答えられる文に直させるのが効きます。「相談窓口等の明確化」なら「両立支援の相談先が誰か、従業員が見られる場所に書いてありますか」といった具合です。
この作業に顧客情報も個人の健康情報も要りません。入力するのは公開されている要綱の文と、自社の業種・人数・工程の概要だけです。安全衛生の資料づくり全般は安全衛生教育の資料づくりに生成AIを使うでも手順を追っています。
衛生委員会の議題案と議事録の下書き
常時50人以上の労働者を使用する事業場には衛生委員会があります。準備期間の総点検は、委員会の議題としてかけるのが自然な流れです。
生成AIに向いているのは、議題案の骨子と、議事録の整形です。議題案は、8つの重点事項のうち自社に関係するものを選び、前回からの変更点と決めたいことを並べた1枚にまとめさせます。議事録は、会議中に取ったメモの箇条書きを渡して、決定事項・保留事項・次回までの宿題に仕分けさせると速くなります。
ただし議事録に個人の健康状態や休職の事情が出てくる場合は、その部分を外してから渡してください。仕分けだけ機械にやらせて、機微な記述は人が書き足す順番にします。
社内周知文とスローガンの掲示物
週間中の実施事項にある「スローガン等の掲示」と、従業員への案内文は、準備期間中に作っておくものです。スローガンそのものは主唱者が決めた固定の文言なので改変しません。添える一文だけを自社向けに書きます。
外国人材が働く事業場では、案内文の多言語化も同時に進められます。手順は外国人材の手順書を生成AIで多言語化するにまとめてあります。日本語の原文を確定させてから訳す、という順番だけは守ってください。
健康経営優良法人の認定を取りにいく事業場なら、ここで作る文書がそのまま申請の材料になります。申請時期との関係は健康経営優良法人2027の申請を参照してください。総務・経理まわりの文書仕事全般は総務・経理の生成AI活用7場面で扱っています。
生成AIに入力してはいけない情報
労働衛生の領域は、扱う情報がそのまま要配慮個人情報になります。次のものは、要約させるためであっても入力しません。
- 健康診断の結果、有所見の内容、再検査の指示
- ストレスチェックの個人結果、高ストレス者の氏名や部署
- 医師の面接指導の記録、産業医の意見書
- 病名、治療内容、通院先、服薬の情報
- 休職・復職の事情、家族の状況
- 労災で被災した従業員の氏名や被災状況の詳細
- 個人が特定できる勤怠データ(氏名付きの残業時間一覧)
要綱の(ウ)にも「個人情報保護のための適切な情報管理」が明記されています。生成AIの利用は、この情報管理の範囲の中で設計してください。事業場としてのルールの作り方は生成AIガイドラインの作り方に手順があります。
判断に迷ったら、その文書を社外の業者に清書してもらえるかを基準にすると分かりやすくなります。渡せないものは入力しない、という線です。
小規模な事業場ほど、外の窓口を使う
要綱の(キ)が小規模事業場を独立した重点事項に立てているのは、産業医の選任義務がない規模でも、やるべきことは減らないからです。
県内で使える窓口
県内で使える窓口を挙げておきます。
- 栃木産業保健総合支援センター:公式サイト。事業者・人事労務担当者・産業保健スタッフ向けの研修、メンタルヘルスや治療と仕事の両立支援の相談に対応しています。要綱が繰り返し活用を挙げている窓口です
- 地域産業保健センター:長時間労働者や高ストレス者に対する医師の面接指導など、産業保健サービスを提供しています(要綱(キ)d)
- 栃木労働局 健康安全課:電話028-634-9117。労働災害の統計や安全衛生の相談窓口です。安全衛生関係のページも公開されています
下書きは機械、詰めの判断は専門家
生成AIで下書きを作り、詰めの判断だけ専門家に見てもらう。この組み合わせにすると、相談の時間を「何をどう書くか」ではなく「この内容で足りているか」に使えます。相談に行く前に、点検表と、埋まらなかった項目の一覧を持っていくと話が早くなります。
準備期間の残りでできる順番
準備期間は9月30日までです。残りの日数でやるなら、次の順番が現実的です。

- 自社に関係する重点事項を絞る。8つ全部を同じ深さで点検しない。製造業なら化学物質と熱中症の振り返り、第三次産業ならメンタルヘルスと過重労働から
- 点検表を作る。要綱の文を現場の言葉に直す。ここで生成AIを使う
- 点検を回す。現場に配って回収する。ここは人の仕事
- 衛生委員会にかける。議題案の骨子を生成AIで、決定は委員会で
- 掲示物と案内文を用意する。スローガンは改変しない
- 10月1日からの週間で、職場巡視と講習会を実施する
- 記録を残す。次年度の点検表の出発点になる
よくある質問
Q. 全国労働衛生週間は法律上の義務ですか。
A. 週間そのものは厚生労働省と中央労働災害防止協会が主唱する運動で、実施要綱が事業場に取組を求めるものです。ただし要綱が挙げている個々の内容には、健康診断の実施、ストレスチェック制度、労働時間の状況の把握、熱中症に関する改正労働安全衛生規則に基づく措置など、法令上の義務が含まれています。運動としての位置づけと、法令上の義務は分けて読んでください。
Q. 従業員10人の事業場でも何かやるべきですか。
A. 要綱は(キ)で小規模事業場の産業保健活動を独立した重点事項に挙げています。産業医の選任義務がない規模でも、一般健康診断結果に基づく事後措置の徹底や、地域産業保健センターの活用は想定されています。全部をやるのではなく、健康診断の結果を受けた対応が止まっていないかの確認から始めてください。
Q. スローガンを自社向けに言い換えてもよいですか。
A. 主唱者が定めたスローガンは「ひとりひとりが貴重な人材 心も体も健やかに みんな生き生き健康職場」です。掲示するときはこの文言のまま使い、自社の一言は別行で添えてください。生成AIにスローガン自体を作り直させないように指示を出しておくと事故が減ります。
Q. 点検表づくりを生成AIに任せると、抜けが出ませんか。
A. 出ます。だから出発点を要綱の項目に固定してください。項目を自分で発想させるのではなく、要綱の(ア)〜(ク)を貼り付けて「この項目を現場の質問文に直す」という使い方に限定します。項目の追加や削除は人が決めます。
Q. 熱中症の振り返りは、もう夏が終わったのに必要ですか。
A. 要綱(カ)eに「本年夏季に実施した各熱中症予防対策の取組に関する確認」が明記されています。記憶が残っているうちに、連絡体制が機能したか、WBGT値をどう使ったかを書き留めておくと、来年の運用が変わります。振り返りのメモを箇条書きで渡して、来年の改善案の形に整えさせる使い方が向いています。
まとめ
栃木県内の休業4日以上の死傷者数は、令和8年8月末で1,334人。前年同期比7.2%増です。死亡災害は8月末の速報で18人となり、令和7年の1年間の確定値18人に並びました。
全国労働衛生週間は10月1日から7日まで、準備期間は9月30日までです。準備期間にやるのは日常の労働衛生活動の総点検で、要綱は健康の保持増進、女性の健康課題、治療と就業の両立支援、メンタルヘルス、過重労働、熱中症、小規模事業場の産業保健、個人事業者等の安全衛生という8つの重点を挙げています。
総点検の実体は書く仕事です。点検表を現場の言葉に直す、議題案の骨子を作る、周知文を用意する。ここは生成AIに任せられます。健康診断の結果、ストレスチェックの個人結果、産業医の意見書といった健康情報は入力しません。線を引いたうえで、9月30日までの残りを使ってください。
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出典・参考
- 厚生労働省「令和8年度「全国労働衛生週間」を10月に実施」(第77回・期間10月1日〜7日・準備期間9月1日〜30日・スローガン)
- 厚生労働省「令和8年度全国労働衛生週間実施要綱(PDF)」(主唱者・協賛者・週間中の実施事項5項目・準備期間中の重点事項(ア)〜(ク))
- 栃木労働局「労働災害発生状況・死亡災害発生事例」(健康安全課 電話028-634-9117)
- 栃木労働局「令和8年 監督署別・業種別労働災害発生状況(令和8年8月末現在・PDF)」(全産業計1,334人・製造業345人・第三次産業644人・建設業124人・死亡18人)
- 栃木労働局「令和7年 監督署別・業種別労働災害発生状況(確定値・PDF)」(全産業計2,200人・死亡18人)
- 栃木労働局「安全衛生関係」
- 独立行政法人労働者健康安全機構「栃木産業保健総合支援センター」(研修・相談窓口)