この記事の要点
改正女性活躍推進法が2026年4月1日に施行され、常時雇用する労働者が101人以上の企業は、男女間賃金差異と女性管理職比率の公表が義務になりました。101〜300人の企業はこの2つに加えて1項目以上、301人以上の企業は2項目以上を公表します。初回は、施行後に最初に終わる事業年度の実績を、次の事業年度が始まってからおおむね3か月以内に公表します。
栃木県の令和7年労働環境等調査では、女性を管理職等に登用している事業所は45.4%でした。この記事では、県の数字の読み方、公表に使う計算表、自社の数字と並べるときの注意、生成AIに任せる作業の範囲、県内の相談先を順に整理します。
101人以上の企業に何が義務になったか|2026年4月施行の改正
厚生労働省のリーフレット「女性活躍推進法が改正されました!」(令和8年2月18日改定版)によると、改正法は令和7年6月11日に公布され、省令と指針は同年12月23日に公布・告示されました。法の期限の10年延長とあわせて、情報公表の必須項目が次のように広がっています。

| 企業の規模(常時雇用する労働者) | 改正前 | 2026年4月1日から |
|---|---|---|
| 301人以上 | 男女間賃金差異に加えて、2項目以上を公表 | 男女間賃金差異と女性管理職比率に加えて、2項目以上を公表 |
| 101〜300人 | 1項目以上を公表 | 男女間賃金差異と女性管理職比率に加えて、1項目以上を公表 |
100人以下の企業は、1項目以上の公表が努力義務です。改正では女性の健康上の特性への配慮も盛り込まれ、職場で女性の健康支援に取り組む企業を認定する「えるぼしプラス」という新しい制度もできました。
選んで公表する項目
追加で選ぶ項目は、「女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供」の7項目と、「職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備」の7項目に分かれています。301人以上はそれぞれから1項目以上、101〜300人は2つを合わせた14項目から1項目以上を選びます。前者には採用した労働者に占める女性労働者の割合や係長級にある者に占める女性労働者の割合、後者には男女の平均継続勤務年数の差異、男女別の育児休業取得率、有給休暇取得率などがあります。
初回の公表はいつまでか
初回の男女間賃金差異と女性管理職比率は、改正法の施行後に最初に終了する事業年度の実績を、その次の事業年度の開始後おおむね3か月以内に公表します。リーフレットの例では、令和8年12月末に事業年度が終わる企業はおおむね令和9年3月末まで、令和9年3月末に終わる企業はおおむね令和9年6月末までです。その後も、おおむね1年に1回以上、最新の数値に更新します。
女性管理職比率は、公表時点で得られる最新の情報が求められます。古くとも、公表を行う事業年度の前事業年度時点の情報でなければなりません。
行動計画の届出と公表の場所
101人以上の企業には、一般事業主行動計画の策定・届出の義務もあります。届出先は主たる事業所の所在地の都道府県労働局 雇用環境・均等部(室)で、県内に本社がある企業は栃木労働局 雇用環境・均等室です(厚生労働省「女性活躍推進法特集ページ」)。公表の場所は、厚生労働省の「女性の活躍推進企業データベース」への掲載が最も適切とされ、自社のホームページへの掲載なども妨げられません。
女性管理職比率と男女間賃金差異の計算表
女性管理職比率|「課長級」から上を数える
厚生労働省の通達「管理的地位にある労働者に占める女性労働者の割合の算出及び公表の方法について」(令和8年2月18日)は、「管理職」を、「課長級」と課長級より上位の役職(役員を除く)にある労働者の合計としています。部長などの上位の役職は含め、役員は除きます。

「課長級」は、通常「課長」と呼ばれる者のうち、その組織が二係以上からなるか構成員が10人以上(課長を含む)のものの長と、同じ事業所で職務の内容と責任の程度が課長級に相当する者(一番下の職階ではないこと)です。一般的に、課長代理と課長補佐は課長級に当たりません。つまり、課長と部長は管理職に数える側、課長代理・課長補佐と役員は数えない側です。
比率は、管理職に当たる女性労働者の数を、管理職に当たる労働者全体の数で割って100を掛けます。小数点第2位を四捨五入し、小数点第1位まで示します。男女で算出方法を変えてはいけません。
男女間賃金差異|3つの区分で出す
通達「男女の賃金の額の差異の算出及び公表の方法について」(令和8年2月18日最終改正)では、賃金台帳や源泉徴収簿をもとに、正規雇用労働者、非正規雇用労働者、全ての労働者の3つの区分ごとに、原則として直近の事業年度の賃金総額をその区分の人員数で割り、平均年間賃金を出します。そのうえで、女性の平均年間賃金を男性の平均年間賃金で割って100を掛け、小数点第2位を四捨五入します。
退職手当と通勤手当等は、事業主の判断で「賃金」から除外できますが、その扱いは男女で共通にします。パート労働者の人員数を正規雇用労働者の所定労働時間などで換算した場合は、換算した旨を明記します。
公表前に埋める計算表
| 行 | 埋める値 | 計算 |
|---|---|---|
| ① | 管理職(課長級から上・役員を除く)の人数 | 公表する時点で数える |
| ② | ①のうち女性の人数 | 公表する時点で数える |
| ③ | 女性管理職比率 | ② ÷ ① × 100(小数点第1位まで) |
| ④ | 全ての労働者の平均年間賃金(男性・女性) | 区分の賃金総額 ÷ 区分の人員数 |
| ⑤ | 正規雇用労働者の平均年間賃金(男性・女性) | 同上 |
| ⑥ | 非正規雇用労働者の平均年間賃金(男性・女性) | 同上 |
| ⑦ | 男女間賃金差異(3つの区分) | 女性 ÷ 男性 × 100(小数点第1位まで) |
| ⑧ | 選んで公表する項目 | 101〜300人は1項目以上、301人以上は2項目以上 |
仮に、課長級から上の管理職が18人で、そのうち女性が3人なら、3 ÷ 18 × 100 = 16.66…で、女性管理職比率は16.7%です。管理職が10人の会社では、総数が10人のまま女性が1人から2人に変わるだけで、比率は10.0%から20.0%に動きます。人数の少ない会社ほど1人の異動で数字が大きく動くので、その事情は説明欄に書いておきます。
県の労働環境等調査で見る栃木の女性管理職
調査の対象と読み方の前提
栃木県は2026年3月24日に「令和7(2025)年労働環境等調査の結果」を発表しました。調査基準日は令和7年9月30日で、常用労働者10名以上の県内2,000民営事業所が対象です。回答した809事業所のうち、有効回答の714事業所(有効回答率35.7%)を集計しています。

数字は事業所単位で、企業単位ではありません。規模の区分は「100〜299人」「300人以上」で、法の「101〜300人」「301人以上」とは境目がずれます。調査の「課長相当職」も、法の公表で使う「課長級」と同じ定義とは限りません。
女性を管理職等に登用している事業所は45.4%
報告書の表16では、管理職等に女性を「登用している」事業所が45.4%(令和6年調査は45.6%)、「登用していない」事業所が54.6%でした。役職ごとに、その役職に就いている人に占める女性の割合をみると、役員30.0%、部長相当職23.1%、課長相当職30.1%です。
300人以上は33.1%で、規模別で最も低い
企業規模別の「登用している」は、10〜29人が44.3%、30〜99人が55.7%、100〜299人が49.2%、300人以上が33.1%でした。300人以上は役職ごとの女性の割合も低く、役員14.6%、部長相当職13.6%、課長相当職24.3%です。今回新たに公表が義務になる層に近い100〜299人では、役員21.5%、部長相当職21.8%、課長相当職31.3%でした。
産業別に読む|製造業と医療・福祉で差が大きい
県内の主要な産業で表16を並べると、次のとおりです。役職の列は、その役職に就いている人に占める女性の割合です。
| 産業 | 登用している事業所 | 役員 | 部長相当職 | 課長相当職 |
|---|---|---|---|---|
| 全体 | 45.4% | 30.0% | 23.1% | 30.1% |
| 製造業 | 35.7% | 20.5% | 8.4% | 12.5% |
| 建設業 | 48.5% | 38.9% | 31.8% | 13.1% |
| 運輸業,郵便業 | 30.4% | 33.3% | 42.9% | 33.3% |
| 卸売業,小売業 | 29.5% | 33.3% | 16.1% | 26.7% |
| 宿泊業,飲食サービス業 | 34.6% | 28.6% | 18.8% | 15.8% |
| 医療,福祉 | 79.9% | 33.5% | 46.3% | 64.7% |
製造業は部長相当職8.4%・課長相当職12.5%
自動車部品や医療機器など、県内に工場を持つ製造業では、部長相当職の女性の割合が8.4%、課長相当職が12.5%で、全体の数字を大きく下回ります。製造業の会社が自社の比率を説明するときは、課長級の手前にいる係長級に占める女性の割合や、採用した労働者に占める女性労働者の割合(どちらも選んで公表できる項目)を合わせて見ると、どの段階で差が開いているかを確かめられます。
医療・福祉は課長相当職の64.7%が女性
医療・福祉は「登用している」事業所が79.9%で、課長相当職の64.7%が女性です。一方で役員は33.5%で、課長相当職より低くなります。法の女性管理職比率は役員を除いて数えるため、医療・福祉の事業所では比率が高く出やすい一方、役員に占める女性の割合(選んで公表できる項目)を並べると別の姿が見えます。
回答数が少ない区分は目安にとどめる
産業別の表には、回答した事業所が少ない区分も含まれます。情報通信業のように役員が0.0%となる区分もあるため、細かな上下よりも、産業ごとの傾向を見る材料にとどめます。
女性管理職がいない理由と、県内の事業所の取組
いない理由の上位は「必要な知識や経験、判断力等を有する女性がいない」
表17で女性管理職がいない理由をみると、「必要な知識や経験、判断力等を有する女性がいない」が54.8%で最も多く、「女性が希望しない」24.3%、「在職年数等を満たしている女性がいない」19.9%が続きます。表14-1では、正社員の平均勤続年数は男性13.8年、女性11.9年で、男性のほうが長い事業所が59.2%でした。
経験や在職年数が理由に挙がる会社では、管理職に必要な経験をどの職務で積むのかを、社内で言葉にしておくことが先になります。
100〜299人では「計画を策定」が31.0%、「問題点を調査・分析」は9.7%
表15の女性活躍推進のための取組(複数回答)は、全体では「人事考課基準を明確に定める」31.3%、「両立支援制度を充実」30.5%、「採用担当者に女性を含める」30.0%の順でした。企業規模別にみると、100〜299人では「計画を策定」が31.0%で、30〜99人の7.7%より高い一方、「問題点を調査・分析」は9.7%、「目標値を設定」は12.4%でした。300人以上は「計画を策定」37.8%、「問題点を調査・分析」29.9%、「目標値を設定」27.4%です。
栃木県「女性の職業生活における活躍の推進」のページにあるとおり、101人以上の事業主は、自社の女性の活躍に関する状況把握・課題分析、数値目標と取組を盛り込んだ行動計画の策定・届出・周知・公表、情報の公表を行います。公表する数字を出す作業は、状況把握・課題分析そのものです。計算表を埋めた段階でどこに差があるかを書き出しておくと、行動計画の数値目標につなげやすくなります。
県の数字と自社の数字を並べる手順
1. 管理職の範囲を法の「課長級」に合わせる
社内の役職名ではなく、通達の定義で数えます。課長代理・課長補佐を含めていないか、役員を除いているかを確かめます。

2. 時点と期間をそろえる
女性管理職比率はある時点の人数、男女間賃金差異は事業年度の賃金総額で出します。どの時点・期間の数字かを、公表する文章にも書きます。
3. 県の数字は事業所単位の目安として横に置く
県の調査は事業所単位で、規模の区分の境目も法と違います。自社の比率が県の全体(課長相当職30.1%)や同じ産業の数字より高いか低いかは、自社の状況を説明する材料として使い、法の公表値の代わりにはしません。
4. 説明欄に「なぜその数字か」を書く
通達には、数値に加えて説明欄で自社の実情を補う、任意の追加的な情報公表のしかたも示されています。管理職の人数が少ない、医療・福祉のように職種で構成が偏るといった事情は、数字と一緒に書いておくと読み手に伝わります。
生成AIに任せる作業と、入力しない情報
任せてよい作業
- 県の報告書(PDF)から、表15〜17のうち自社の業種と規模に当たる行を探し、要点を書き出す。数字は報告書の原本で照合します。
- 計算表の見出しや、計算のしかたの説明文を整える。
- 説明欄の下書き。自社で決めた事実を箇条書きで渡し、文章に整えてもらいます。
- 行動計画の取組内容の文案や、社内向けの周知文の下書き。
入力しない情報
一般向けの生成AIサービスには、個人別の賃金、氏名と役職の対応表、人事評価、育児休業を取った人の名前を入力しません。計算は表計算ソフトで行い、生成AIに渡すのは集計した後の数字や、個人が分からない形にした情報だけにします。社内に生成AIの利用ルールがまだない場合は、先にルールを決めます。

人が決めること
誰を「課長級」に数えるか、どの項目を選んで公表するか、数値目標をいくつにするか、説明欄の最終的な文言は、人事の担当者と経営者が決めます。生成AIが出した数字や定義の説明は、通達とリーフレットの原文で確かめてから使います。
栃木県内の相談先と支援
届出と法律の相談は栃木労働局 雇用環境・均等室
栃木労働局「雇用環境・均等関係」のページに、101人以上の公表義務化の案内、栃木県内のえるぼし・プラチナえるぼし認定企業、一般事業主行動計画の策定の案内がまとまっています。問い合わせ先は雇用環境・均等室(028-633-2795)です。
県の支援は労働政策課と人権男女共同参画課
県の労働政策課のページでは、「女性が働きやすい企業推進アドバイザー派遣」の令和8年度の受付が案内されています。行動計画の策定・取組実施・情報公表や、えるぼし・くるみん・県の「男女生き活き企業」認定の取得などについて、社会保険労務士や中小企業診断士などの専門家が企業への訪問またはオンラインで助言します。
人権男女共同参画課 女性活躍推進担当(028-623-3074)は、「男女生き活き企業」の認定申請を随時受け付けています。県内の全ての企業等が対象で、とちぎ女性活躍応援団への登録などの要件を満たしたうえで、30項目の認定項目のうち一定数に当てはまることが基準です。認定を受けると、県制度融資「重点政策推進融資」や栃木県信用保証協会の保証を利用でき、栃木県建設工事入札参加資格の技術評価点数の加点も受けられます。
国の無料の支援
厚生労働省の「民間企業における女性活躍促進事業」では、女性活躍推進アドバイザーが、男女間賃金差異や女性管理職比率の算出、行動計画の策定・情報公表、えるぼし認定の取得などについて、オンラインまたは個別訪問で無料で支援しています(女性活躍推進法特集ページ)。
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よくある質問
Q. 従業員が100人以下の会社も公表が必要ですか。
A. 100人以下の企業は、1項目以上の公表が努力義務です。男女間賃金差異と女性管理職比率の公表義務は、常時雇用する労働者が101人以上の企業が対象です。
Q. 課長代理や課長補佐は管理職に数えますか。
A. 厚生労働省の通達では、一般的に課長代理と課長補佐は「課長級」に当たらないとされています。役員も除いて数えます。
Q. 3月決算の会社は、いつまでに初回の公表をしますか。
A. リーフレットの例では、令和9年3月末に終わる事業年度の実績を、おおむね令和9年6月末までに公表します。
Q. 県の調査の数字と自社の比率をそのまま比べてよいですか。
A. 県の調査は事業所単位で、規模の区分や役職の定義も法の公表とは同じではありません。自社の位置を知る目安として使い、公表する数字は通達の方法で計算します。
Q. 生成AIに賃金データを渡して計算させてもよいですか。
A. 個人別の賃金や氏名を一般向けの生成AIサービスに入力することは避けます。計算は表計算ソフトで行い、生成AIは計算のしかたの説明や説明欄の文章の下書きに使います。
運営元 Uravation より自社に近い業務から着手先を選ぶ材料として、業務別の生成AI活用事例50例を無料で公開しています。 生成AI活用事例 業務別50選を受け取る(無料)
参考・出典
- 厚生労働省「女性活躍推進法が改正されました!」(令和8年2月18日改定版・PDF)
- 厚生労働省「管理的地位にある労働者に占める女性労働者の割合の算出及び公表の方法について」(令和8年2月18日・PDF)
- 厚生労働省「男女の賃金の額の差異の算出及び公表の方法について」(令和8年2月18日最終改正・PDF)
- 厚生労働省「女性活躍推進法特集ページ」(2026年10月6日確認)
- 厚生労働省「女性の活躍推進企業データベース」
- 栃木県「令和7(2025)年労働環境等調査の結果について」(2026年3月24日発表)
- 栃木県「令和7(2025)年労働環境等調査」報告書(PDF)
- 栃木県「女性の職業生活における活躍の推進」(2026年6月11日更新)
- 栃木県「「男女生き活き企業」を募集します!」
- 栃木労働局「雇用環境・均等関係」