この記事の要点
労働者数50人未満の事業場でも、令和10年(2028年)4月1日からストレスチェックの実施が義務になります。2025年5月に公布された改正労働安全衛生法によるもので、これまでは努力義務でした(厚生労働省「ストレスチェック制度・メンタルヘルス対策」)。
義務になるのは、年1回のストレスチェック(検査)と本人への結果の通知、高ストレスの労働者が申し出たときの医師の面接指導、医師の意見を踏まえた就業上の措置です。集団分析と職場環境の改善は努力義務で、集計の単位が10人を下回る場合は原則として集団分析を行いません。
厚生労働省は令和8年2月に「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」を公表し、プライバシー保護の観点から外部委託による実施を推奨しています。栃木県内では、宇都宮市の栃木産業保健総合支援センターと県内8か所の地域産業保健センターで、相談や医師の面接指導を無料で受けられます。
50人未満の義務化はいつから|令和10年4月1日に施行
努力義務から義務へ
ストレスチェックは2015年から、労働安全衛生法で事業者に実施が義務付けられています。ただし労働者数50人未満の事業場は、当分の間は努力義務とされていました。2025年の労働安全衛生法の改正で50人未満の事業場にも実施が義務化され、施行期日は令和10年4月1日です(厚生労働省「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル スタートガイド」(PDF))。

厚生労働省は周知用のリーフレットで、メンタルヘルス不調になったときの病休期間は平均で約3か月、復職後に再び病休になる割合も約半数と書き、小規模事業場にとって大きな人材の損失になると説明しています(周知用リーフレット(令和8年6月・PDF))。
数えるのは事業場ごとの労働者数
義務の範囲を分ける「50人」は、会社全体ではなく、工場・店舗・営業所といった事業場ごとの労働者数で見ます。本社が50人以上で実施していても、50人未満の営業所や店舗は、令和10年4月から新たに義務の対象になります。どこまでを1つの事業場とみるか迷うときは、労働基準監督署や産業保健総合支援センターに確かめます。
何が変わるか|義務になる3つと努力義務の1つ
早見表
スタートガイドの図をもとに、50人未満の事業場で求められることを並べました。

| 項目 | 位置づけ | 50人未満の事業場で |
|---|---|---|
| 年1回のストレスチェック(検査)と本人への結果の通知 | 義務 | 令和10年4月1日から |
| 高ストレスの労働者が申し出たときの医師の面接指導 | 義務 | 令和10年4月1日から |
| 医師の意見を踏まえた就業上の措置 | 義務 | 令和10年4月1日から |
| 集団分析と職場環境の改善 | 努力義務 | 単位が10人を下回る場合は原則として行わない |
年1回の検査と本人への通知
事業者は1年ごとに1回、ストレスチェックを実施します。ストレスチェックは、労働者がストレスに関する質問票(選択式)に回答し、自分のストレスがどのような状態にあるかを知るための簡単な検査です。個人の結果はプライバシー保護の観点から本人に直接通知され、基本的に事業者には提供されません(厚生労働省「ストレスチェックの『集団分析』を適切に実施しましょう!」(PDF))。
医師の面接指導と就業上の措置
高ストレスの労働者が申し出たときは、医師の面接指導の機会を設け、医師の意見を踏まえて必要な就業上の措置をとります。スタートガイドは、制度の目的はメンタルヘルス不調の未然防止で、不調者の発見ではないと明記しています。
集団分析は努力義務、10人を下回る単位では原則行わない
個人結果を職場などの集団ごとに集計・分析し、職場環境の改善につなげるのは努力義務です。厚生労働省は2026年6月30日に、集団分析の実施方法について労働安全衛生規則を改正しました。集計・分析の単位が10人を下回る場合は、個人が特定されるおそれがあるため、原則として集団分析を実施してはいけません。10人を下回っても、個人が特定されるおそれのない方法であれば実施できます。
準備の手順|小規模事業場マニュアルに沿った5つのステップ
ステップ1と2:方針を表明し、労働者の意見を聴く
スタートガイドは、労働者に安心して受けてもらうために準備が重要だとしています。最初に、事業者が実施責任者として制度導入の方針を表明します。次に、社内の実施体制と実施方法について労働者の意見を聴きます。マニュアルには方針表明のモデル例と、意見を聴く方法の事例が載っています。

ステップ3:社内ルールを作り、周知する
社内ルール(規程)を作り、従業員に知らせます。厚生労働省「労働者数50人未満の小規模事業者の方」のページから、マニュアルに載っている「社内ルール例」と「社内規程例」をWord形式でダウンロードでき、事業場ごとに加工して使えます。
ステップ4:実務担当者を決め、委託先を選ぶ
事業場の中では、委託先との契約や連絡調整を受け持つ実務担当者を指名します。スタートガイドは、実務担当者には衛生推進者または安全衛生推進者を選ぶことが望ましいとしています。委託先は、外部機関に「サービス内容事前説明書」を作成・説明してもらい、各サービスの内容と料金をもとに比べます。
ステップ5:面接指導の依頼先と実施時期を決める
ストレスチェックと集団分析を委託先に任せるか、医師の面接指導をどこに頼むかを決めます。面接指導は、外部機関のオプションのほか、50人未満の事業場を対象に無料で行う地域産業保健センターにも頼めます。実施時期は、繁忙期を避けて決めます。
外部委託が推奨される理由|健康情報を社内で扱わない
個人の結果は外部機関で完結させる
スタートガイドは、労働者のプライバシー保護の観点から、原則として外部委託による実施を推奨しています。個人結果などの健康情報の取り扱いは外部機関で完結させ、事業場の中では取り扱いません。小さな事業場ほど、誰が誰の結果を見たかが分かりやすく、従業員が本音で答えにくくなります。外部委託は、受検する人の安心のための仕組みでもあります。

委託先を比べるときに見るところ
事前説明書を受け取ったら、次の点を表にして比べます。
- ストレスチェックと集団分析を、その外部機関に委託するか
- 医師の面接指導を、どこに頼むか
- 紙で受けるか、Webで受けるか
- 各サービスの料金
栃木で使える無料の支援|産保センターと県内8か所の地域産業保健センター
栃木産業保健総合支援センター
栃木産業保健総合支援センターは、宇都宮市大通り1丁目4番24号 MSCビル4階にあります(電話028-643-0685)。厚生労働省のページによると、産業保健総合支援センターは、ストレスチェック制度を含むメンタルヘルス対策の相談対応や、事業場への訪問による制度導入支援などを無料で提供しています。栃木のセンターのページでも、メンタルヘルス対策にかかる訪問支援を案内しています。

地域産業保健センターは県内8か所
地域産業保健センターは、労働者数50人未満の小規模事業場を対象に、長時間労働者や高ストレス者に対する医師の面接指導などを無料で提供しています(全国350か所)。県内の8か所は次のとおりです(栃木産業保健総合支援センター「地域産業保健センター一覧」)。
| 名称 | 所在地 | 電話 |
|---|---|---|
| 宇都宮地域産業保健センター | 宇都宮市戸祭4-1-15 宇都宮市医師会内 | 028-622-1880 |
| 足利地域産業保健センター | 足利市本城3-2022-1 足利市医師会内 | 0284-22-4065 |
| 栃木地域産業保健センター | 栃木市境町27-21 下都賀郡市医師会内 | 0282-23-5626 |
| 佐野地域産業保健センター | 佐野市植上町1678 佐野市医師会内 | 0283-20-8727 |
| 上都賀地域産業保健センター | 鹿沼市千手町2506-8 上都賀郡市医師会内 | 0289-62-4234 |
| 大田原地域産業保健センター | 大田原市本町1-3-1 B別館 那須郡市医師会内 | 0287-23-5414 |
| 塩谷・南那須地域産業保健センター | さくら市桜野1319-3 塩谷郡市医師会内 | 028-682-2626 |
| 真岡地域産業保健センター | 真岡市田町1246-1 芳賀郡市医師会内 | 0285-82-3185 |
電話とWebの窓口、団体経由の助成金
厚生労働省は、ストレスチェック制度の導入・実施の相談に専門スタッフが答える「ストレスチェック制度サポートダイヤル」(0570-031050・全国統一ナビダイヤルで通話料がかかる・平日10時〜17時、土日祝日と12月29日〜1月3日を除く)と、ポータルサイト「こころの耳」を用意しています。中小企業などを支援する団体が、傘下の中小企業に産業医や保健師などの産業保健サービスを提供した場合に費用の一部を助成する「団体経由産業保健活動推進助成金」もあります(厚生労働省「労働者数50人未満の小規模事業者の方」)。
栃木の業種に当てはめた準備例|工場、介護事業所、宿と観光施設
交替勤務のある工場
自動車部品や医療機器などの県内の工場で、交替勤務や夜勤がある事業場は、受検の時期と方法(紙かWebか)を勤務表に合わせて決めます。ラインごとに10人を下回る職場が多い場合は、集団分析の単位を複数のラインにまとめるか、個人が特定されない方法を委託先に相談します。
介護事業所とクリニック
夜勤のある介護事業所や小さなクリニックは、職員が10人に満たないことも多く、集団分析は原則として行わない単位になりやすい職場です。まず年1回の検査と面接指導の体制を整え、面接指導の依頼先は近くの地域産業保健センターを候補にします。記録や書類への生成AIの使い方は、介護の記録と書類の記事で整理しています。
日光・那須の宿と観光施設
栃木県の「令和7(2025)年 栃木県観光客入込数・宿泊数推定調査結果」(PDF)によると、2025年の県内の観光客入込数は9,076.2万人で、日光市が1,073.5万人、那須塩原市が830.6万人でした。年末年始や大型連休に繁忙期を迎える宿や観光施設は、実施時期を繁忙期から外し、受検の時間を勤務時間の中に確保します。
生成AIで整える下書き|社内ルールと周知文まで
任せてよいもの
- 方針表明の文案
- 厚生労働省の社内規程例をもとにした、自社向けの言い回しの調整。実施時期・担当者・委託先名の欄は空けておきます
- 従業員向けの周知文。目的は未然防止であること、個人の結果は本人に直接届き事業者には提供されないこと、面接指導の申し出の方法を書きます
- 委託先を比べる表の枠。事前説明書の項目を写して使います
- 労働者の意見を聴く場の議題案
入力しないもの
スタートガイドが示すとおり、個人結果などの健康情報は外部機関で完結させ、事業場の中では扱いません。生成AIに入力する場面もありません。

- 個人のストレスチェックの結果、高ストレス者の氏名や部署
- 面接指導の記録、医師の意見
- 病名、通院先、休職や復職の事情
社内での生成AIの使い方の線引きは、生成AIガイドラインの作り方で整理しています。
指示文の例
あなたは従業員30人の介護事業所の総務担当です。
ストレスチェックを始めることを職員に知らせる周知文を、A4で1枚に収まる長さで書いてください。
入れること:
- 目的はメンタルヘルス不調の未然防止で、不調の人を見つけるためではないこと
- 個人の結果は本人に直接届き、事業所には提供されないこと
- 実施の時期と方法は【 】として空けておくこと
- 相談先は【 】として空けておくこと
書かないこと: 法令の条文番号、数字、医学的な説明
人が確かめること
- 社内規程は、厚生労働省のモデル規程とマニュアルに照らして確かめる
- 委託先の料金とサービスは、事前説明書の原本で確かめる
- 周知文の表現は、実務担当者と委託先の両方で読み合わせる
令和10年4月までの段取りの例
時期ごとのやること
| 時期 | やること |
|---|---|
| 2026年度(今から) | 方針を決め、実務担当者を選ぶ。産業保健総合支援センターに相談する |
| 2027年4月〜9月 | 労働者の意見を聴き、社内ルールを作る。委託先の事前説明書を集めて比べる |
| 2027年10月〜2028年3月 | 委託先と契約し、面接指導の依頼先を決める。努力義務のうちに一度試す |
| 2028年4月1日以降 | 1年ごとに1回実施する。集団分析は、単位と方法を委託先と決めてから行う |
健康経営に取り組む会社は前倒しで
健康経営の認定を目指す会社は、評価項目とあわせて実施の時期を前倒しで検討します。申請の流れは健康経営優良法人2027の記事で整理しています。
よくある質問
Q. 50人未満の事業場のストレスチェック義務化はいつからですか?
A. 令和10年(2028年)4月1日からです。2025年5月に公布された改正労働安全衛生法で、これまで努力義務だった50人未満の事業場にも実施が義務化されました。
Q. 従業員が10人ほどの事業場も対象ですか?
A. 対象です。50人未満の事業場は規模にかかわらず義務になります。ただし集団分析は努力義務で、集計の単位が10人を下回る場合は、個人が特定されない方法でない限り行いません。
Q. 会社は従業員の結果を見られますか?
A. 個人の結果はプライバシー保護の観点から本人に直接通知され、基本的に事業者には提供されません。スタートガイドは、個人結果などの健康情報の取り扱いを外部機関で完結させることを推奨しています。
Q. 費用を抑える方法はありますか?
A. 外部機関の料金は委託先によって違うため、事前説明書で比べます。地域産業保健センターは50人未満の事業場に医師の面接指導を無料で提供し、産業保健総合支援センターは相談や訪問による導入支援を無料で行っています。
Q. 栃木県内の相談先はどこですか?
A. 宇都宮市大通りの栃木産業保健総合支援センター(028-643-0685)と、宇都宮・足利・栃木・佐野・上都賀・大田原・塩谷・南那須・真岡の地域産業保健センターです。電話ではストレスチェック制度サポートダイヤル(0570-031050)も使えます。
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参考・出典
制度と窓口は2026年10月7日に、次の公表資料で確認しました。
- 厚生労働省「ストレスチェック制度・メンタルヘルス対策」
- 厚生労働省「労働者数50人未満の小規模事業者の方」
- 厚生労働省「労働者数50人未満の事業者も令和10年4月1日からストレスチェックが義務になります」(周知用リーフレット・令和8年6月・PDF)
- 厚生労働省「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」(令和8年2月公表・PDF)
- 厚生労働省「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル スタートガイド」(PDF)
- 厚生労働省「ストレスチェックの『集団分析』を適切に実施しましょう!」(省令改正リーフレット・PDF)
- 独立行政法人労働者健康安全機構 栃木産業保健総合支援センター
- 栃木産業保健総合支援センター「地域産業保健センター一覧」
- 栃木県「令和7(2025)年 栃木県観光客入込数・宿泊数推定調査結果」(PDF)