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栃木の賃金・労働時間データの読み方|毎月勤労統計の3つの数字

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栃木の賃金・労働時間データの読み方|毎月勤労統計の3つの数字

この記事の要点

求人票の月給欄や賃上げの幅を決めるときに見るのは、現金給与総額ではなく、きまって支給する給与のほうです。令和8(2026)年6月分の県内の現金給与総額は503,662円ですが、この数字をそのまま「県内の月給の平均」と読むと判断を誤ります。現金給与総額は、毎月決まって払う給与と賞与などの特別な給与を合わせた額だからです。同じ6月分でも、きまって支給する給与は294,686円です。賞与を含む前者は、年収の話をするときの材料になります。栃木県は毎月、県内の賃金・労働時間・雇用の動きを「毎月勤労統計調査地方調査結果」として公表しており、最新は令和8(2026)年6月分で、2026年8月28日の発表です。この記事では、県の統計の3つの数字(現金給与総額・きまって支給する給与・実質賃金指数)の違いと、労働時間・雇用の数字の読み方、自社の数字と比べる手順を整理します。数字はすべて県の発表値をそのまま使い、試算をした箇所は試算と明記します。

栃木の賃金データはどこにあるか|県が毎月出している統計

調査の対象は常用労働者5人以上の事業所

県が公表しているのは、厚生労働省が統計法にもとづいて実施する毎月勤労統計調査の地方調査分です。県内の常用労働者数5人以上の事業所が対象で、標本事業所からの報告をもとに、事業所規模5人以上の県内すべての事業所に対応するよう推計した値が公表されます(栃木県「毎月勤労統計調査地方調査結果『栃木県の賃金、労働時間及び雇用の動き(令和8(2026)年6月分)』について」(2026年8月28日発表))。常用労働者数1人から4人の事業所については、年1回の特別調査が別に行われます。

5人以上の事業所から標本事業所、推計、公表へと左から右へ進む4段の流れと、公表の下に置いた2か月遅れのタグを示した図
常用労働者5人以上の事業所を標本で調べ、県内全体に推計して2か月遅れで公表される

ここが最初の注意点です。従業員4人以下の事業所は毎月の数字に入っていません。小規模な事業所が多い業種で「県の平均と自社が合わない」と感じる場合、比較対象がそもそも違っている可能性があります。

公表は2か月遅れで、月ごとに更新される

県は毎月末に、その2か月前の月の結果を公表しています。2026年8月28日に出たのが令和8(2026)年6月分、という並びです。過去の月報・年報は平成17(2005)年1月分以降が一覧になっており、Excel形式でも取得できます(栃木県「毎月勤労統計調査」)。

月ごとの数字は季節の影響を強く受けます。6月と12月は賞与の支払いが重なるため現金給与総額が跳ね上がり、その月だけを切り取ると「県内の賃金が急に上がった」ように見えます。1か月分だけで判断せず、前年同月比と、同じ月の数年分を並べて見るのが安全です。

令和8年6月分の3つの数字|現金給与総額・きまって支給する給与・実質賃金指数

現金給与総額503,662円をそのまま「月給」と読まない

令和8(2026)年6月分の県内の賃金は、一人平均で次のとおりです。

左に積んだきまって支給する給与と特別に支払われた給与の2つの箱から、右の現金給与総額の箱へ矢印が伸びる図
きまって支給する給与と特別に支払われた給与を足したものが現金給与総額
項目 令和8(2026)年6月分 前年同月比
現金給与総額 503,662円 4.7%増加(29か月連続で対前年比増)
きまって支給する給与 294,686円 6.4%増加(31か月連続で対前年比増)
実質賃金指数 145.2 2.8%増加(8か月連続で対前年比増)

数字はいずれも栃木県「栃木県の賃金、労働時間及び雇用の動き(令和8(2026)年6月分)」の公表値です。現金給与総額は、所得税・社会保険料・組合費などを差し引く前の総額で、きまって支給する給与と特別に支払われた給与を合わせたものと定義されています(厚生労働省「毎月勤労統計調査で使用されている主な用語の説明」)。6月は賞与の支払月にあたるため、現金給与総額と、きまって支給する給与の差が大きく開きます。

きまって支給する給与294,686円が毎月の水準に近い

きまって支給する給与は、労働契約・労働協約・事業所の給与規則によってあらかじめ定められた支給条件と算定方法で支給される給与で、超過労働給与(時間外手当など)を含みます。毎月の人件費や、月給ベースの比較に使うならこちらです。

一方で、特別に支払われた給与は、あらかじめ定められた契約や規則によらず臨時・突発的な理由で支払われた給与、または算定期間が3か月を超える給与を指します。賞与はここに入ります。「県内の平均は50万円を超えている」という読み方が実態とずれるのは、この構成の違いを踏まえていないためです。

実質賃金指数は「増えた分が物価に食われていないか」を見る数字

実質賃金指数145.2は、令和2(2020)年平均を100として算出した指数です。県は令和4(2022)年1月分の結果から、この基準で指数を出しています。金額そのものではなく、物価の影響を除いた水準の動きを見るための数字です。名目の給与が増えていても実質賃金指数が下がっていれば、社員の手取り実感は改善していないことになります。逆に6月分は名目・実質ともに増加が続いており、賃金の伸びが物価の伸びを上回っている局面だと読めます。

労働時間と出勤日数|所定外11.4時間が示すもの

総実労働時間147.5時間の内訳

同じ令和8(2026)年6月分の労働時間は、一人平均で次のとおりです。

総実労働時間の枠の中に所定外労働時間と所定内労働時間の2つの帯を上下に積み、右に出勤日数のタグを置いた図
総実労働時間は所定内労働時間と所定外労働時間の合計
項目 令和8(2026)年6月分 前年同月との比較
総実労働時間 147.5時間 3.5%増加
所定内労働時間 136.1時間 3.1%増加
所定外労働時間 11.4時間 8.6%増加
出勤日数 18.7日 0.5日増加

所定外労働時間の伸び(8.6%増加)が、所定内労働時間の伸び(3.1%増加)より大きいのが6月分の特徴です。人を増やさずに仕事量の増加を時間外で吸収している事業所が県内に一定数ある、という読み方ができます。自社の時間外が前年より増えているとき、それが自社固有の問題なのか県全体の動きなのかを切り分ける材料になります。

時間あたりに直して自社と比べる手順

月額のままでは、所定労働時間が違う会社同士を比べられません。同じ月の労働時間で割って、時間あたりに直します。ここからは公表値を使った本記事の試算で、県が公表している数字ではありません。

月あたりの給与額 総実労働時間147.5時間で割った額(本記事の試算)
250,000円 約1,695円
294,686円(きまって支給する給与) 約1,998円
350,000円 約2,373円

自社の「きまって支給する給与にあたる額」を自社の総実労働時間で割り、この表と並べます。差が開いているときは、給与水準そのものの差なのか、労働時間の長さの差なのかを分けて見てください。時間外が長いために時間あたりが低く出ている場合、賃上げより先に手を付けるのは業務量の側です。求人票の書き方まで含めた整理は求人票と採用文書の生成AI活用6場面|栃木県版にまとめています。

雇用の数字|常用労働者753,718人とパート比率26.4%

パート比率が18か月連続で低下している

雇用側の数字は次のとおりです(いずれも栃木県「栃木県の賃金、労働時間及び雇用の動き(令和8(2026)年6月分)」の公表値)。常用労働者数は753,718人、常用雇用指数は106.7で前年同月比0.3%の上昇。パートタイム労働者数は199,237人で、パートタイム労働者割合は26.4%、前年同月差2.3ポイントの低下です。この低下は18か月連続で続いています。入職率は1.73%(前年同月差0.59ポイント上昇)、離職率は1.39%(同0.26ポイント低下)でした。

常用労働者数の大きな箱の中にパートタイム労働者数の小さな箱を置き、それぞれに人数のタグ、下にパートタイム労働者割合のタグを付けた図
常用労働者数の内側にパートタイム労働者数があり、その割合が26.4%

パート比率が18か月連続で下がっているということは、県内の事業所の人員構成が、短時間の労働者から常用・フルタイム側へ寄り続けているということです。パート採用で頭数をそろえる前提の要員計画は、県全体の動きとは逆を向いている可能性があります。

入職率が上がり離職率が下がった月の読み方

同じ発表値のとおり、6月分は入職率が上がり、離職率が下がりました。人が入ってきて、出ていく人が減った月です。ただし入職率・離職率は月ごとの振れが大きく、1か月分で「県内の採用環境が緩んだ」と判断するのは早計です。前年同月差の欄に「3か月ぶりに上昇」「5か月ぶりに低下」と書かれているとおり、方向は月によって反転します。

この統計を自社の3つの場面に落とす|求人票・賃上げ・要員計画

求人票の給与欄を決めるとき

見るのは、きまって支給する給与の294,686円と、総実労働時間147.5時間です。賞与込みの現金給与総額を基準にすると、月給欄が実態より高い前提になります。求人票では月給と賞与を分けて書き、月給側の比較にはきまって支給する給与を使ってください。

中央の毎月勤労統計の箱から求人票、賃上げ、要員計画の3つの箱へ線が伸び、各箱に使う数字のタグを添えた図
同じ統計を、求人票・賃上げ・要員計画の3つの場面で使い分ける

賃上げの幅を検討するとき

きまって支給する給与の前年同月比6.4%増加と、実質賃金指数の2.8%増加を並べて見ます。名目の伸びと実質の伸びの差が、物価に食われた分です。統計の平均値より先に確認するのは、賃金の下限のほうです。令和8年度の栃木県最低賃金は1,068円から1,125円に改定され、発効は2026年10月1日です(栃木労働局「栃木県最低賃金」)。改定の中身と自社の確認手順は栃木県最低賃金1,125円への対応にまとめています。県と国の支援制度を使う場合の入口の賃上げ率は制度ごとに違うので、栃木の賃上げ支援金と助成金の早見表で自社が当てはまる制度を先に確認してから幅を決めると、手戻りが減ります。

要員計画を立てるとき

常用雇用指数106.7の上昇とパート比率26.4%の低下を合わせて読みます。県内全体では常用側に人が寄っています。パート比率の低下が続く中で短時間労働者中心の計画を立てるなら、採用にかかる時間と条件を通常より厚く見積もる必要があります。

生成AIに何をさせて、何を人がやるか

下書きに使ってよいもの

統計の読み取りメモ、社内会議用の説明文、求人票の文章の型、賃上げの検討資料の構成案は、生成AIの下書きで足ります。県の発表ページの本文を貼り付けて「この月の特徴を3点にまとめて」と指示すれば、会議資料のたたき台になります。

左の自社側の数字から集計値の門を通って右の下書きへ矢印が進み、門の下に個人別の賃金額のタグを置いた図
自社側の数字は集計値に丸めてから使い、個人別の賃金額は入力しない

数字は人が入れて検算する

数字そのものを生成AIに出させないでください。統計の値は県の発表ページから人が転記し、割り算は表計算ソフトで検算します。生成AIは年や月をまたいだ値を混ぜることがあり、「令和8年6月分」と書いてあるのに前年の値が入っていても文章としては自然に読めてしまいます。

入力しない情報

個人別の賃金額、氏名、マイナンバー、評価情報は入力しません。統計と比較するときは、自社側の数字を「平均月額」「平均総実労働時間」のように集計値へ丸めてから使います。間接部門の使い分け全般は総務・経理の生成AI活用7場面|栃木の中小企業で整理しています。県内で相談先を探す場合は、栃木県産業振興センターが運営するとちぎビジネスAIセンターがあります。

よくある質問

Q. 現金給与総額503,662円は県内の平均月給ですか。

いいえ。現金給与総額はきまって支給する給与と特別に支払われた給与を合わせた額で、令和8(2026)年6月分は賞与の支払いを含みます。毎月の月給に近いのは、きまって支給する給与の294,686円です。

Q. 従業員3人の事業所もこの統計に入っていますか。

毎月の結果は常用労働者数5人以上の事業所が対象です。常用労働者数1人から4人の事業所は、年1回の特別調査で別に調べられます。

Q. 自社の数字と県の数字が合いません。

事業所規模、業種、所定労働時間、賞与の支給月がそろっていない可能性があります。比較する前に、自社の「きまって支給する給与にあたる額」と「総実労働時間」を同じ定義でそろえてください。

Q. 最新の月分はどこで確認できますか。

栃木県の毎月勤労統計調査のページに、最新の地方調査結果と過去の月報・年報が置かれています。県は毎月末に2か月前の月の結果を公表しています。

Q. 実質賃金指数の145.2はどう読めばよいですか。

令和2(2020)年平均を100とした指数です。金額ではなく水準の動きを示すもので、名目の給与が増えていてもこの指数が下がっていれば、物価の上昇分に給与の伸びが追いついていないことになります。

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参考・出典