この記事の要点
- 栃木県鉱工業指数は、県内の製造業と鉱業の生産・出荷・在庫の動きを、2020年の年平均を100とした比率で示す県統計課の月次統計です。
- 2026年6月分(2026年8月27日公表)の生産指数(季節調整済)は104.9で、前月比7.9%の上昇、3か月ぶりの上昇でした。出荷指数は112.9、在庫指数は103.0です。
- 前月と比べるときは季節調整済指数、前年と比べるときは原指数を使います。ここを混ぜると社内資料の数字が食い違います。
- 業種別の表は「前月比」ではなく「寄与率」で読むと、県全体の数字をどの業種が動かしたかが分かります。6月分の生産指数を最も押し上げたのは化学工業、押し下げたのは輸送機械工業でした。
- 生成AIは数字を調べる係ではなく、転記した数字を「自社の受注見通し」の文章に組み立てる係として使います。
栃木県鉱工業指数とはどんな統計か
栃木県鉱工業指数は、県内の製造業、鉱業でどのくらいの生産・出荷が行われ、在庫がどのくらいあるかを、基準年の年平均を100とした比率で示したものです。栃木県生活文化スポーツ部統計課が毎月作成し、県のページで月報と年報を公表しています(栃木県統計課「栃木県鉱工業指数(令和2(2020)年基準)」)。

何を測っている統計か
県の解説資料では、鉱工業指数は「翌々月の月末に公表されるため、県内の経済活動の動きを表す統計のなかでは速報性が高いことが特長」と説明されています。元になっているのは主に経済産業省生産動態統計調査や栃木県生産動態統計調査です(栃木県統計課「栃木県鉱工業指数について」(令和6(2024)年3月26日))。
つまり、県内総生産のような年単位の統計より早く、「県内の工場が今どれだけ動いているか」を月単位で追える数字です。栃木県は製造品出荷額で全国12〜13位前後に位置する工業県で(栃木県「とちぎの魅力(工業)」)、県内の主要業種である自動車部品、医療機器、電子部品の動きが、業種別の表でそのまま見えます。
景気動向指数の材料にもなっている
この指数の結果は、栃木県景気動向指数を始めとして、県内の生産活動や景気の動向を把握する重要な経済指標として、行政、産業界などで広く利用されています。実際、県の景気動向指数のページには「鉱工業指数の年間補正による指数値の遡及改定に伴いCI指数値を遡及して改定しました」という注記があり、両者がつながっていることが分かります(栃木県統計課「栃木県景気動向指数」)。
景気動向指数の読み方は栃木県景気動向指数の読み方で整理しています。鉱工業指数はその一段手前、個別の業種の動きを見るための統計です。
生産・出荷・在庫・在庫率の4つの指数
栃木県鉱工業指数では、生産指数、出荷指数、在庫指数、在庫率指数の4種類を、総合、業種分類別、特殊分類別のそれぞれで算出して公表しています。県の解説資料にある各指数の意味合いは次のとおりです(栃木県統計課「栃木県鉱工業指数について」)。

| 指数 | 何を表すか | 景気との関係 |
|---|---|---|
| 生産指数 | 生産活動の状況 | 景気が良くなれば需要が増え、たくさん生産するため上昇する |
| 出荷指数 | 需要の動向 | 景気の拡大期には需要が増え、たくさん出荷するため上昇する |
| 在庫指数 | 在庫の状況 | 在庫が減ると低下し、在庫を持つために生産は増やされる。在庫がたまると上昇し、生産は抑えられる |
| 在庫率指数 | 在庫を出荷で割った値 | 在庫と出荷の需給のバランスが分かる |
3つを並べて読む
県の解説では、生産指数と出荷指数が上昇し、在庫指数が低下している月は「景気が上向いていると推測できます」と読み方の例が示されています。逆に、生産と出荷が下がって在庫が積み上がっている月は、需要が追いついていない局面です。
1つの指数だけを見て「上がった」「下がった」と言うのではなく、生産・出荷・在庫の向きを3つ並べて、需要と供給のどちらが先に動いたかを読むのがこの統計の使い方です。
採用品目と分類
指数は生産指数187品目、出荷指数187品目、在庫指数106品目、在庫率指数106品目で作られています。分類は、日本標準産業分類の中分類に準拠した「業種分類」(製造業と鉱業を18業種に分類)と、品目の経済的用途に着目した「特殊分類」(最終需要財・投資財・消費財・生産財)の2つです。県内の自動車部品は「輸送機械工業」、医療機器は「業務用機械工業」に含まれます。
2026年6月分の栃木県鉱工業指数
2026年8月27日に公表された令和8(2026)年6月分の数字は次のとおりです。基準は2020年=100です(栃木県統計課「栃木県鉱工業指数 令和8(2026)年6月」(令和8(2026)年8月27日公表))。
| 指数 | 栃木県(季節調整済) | 前月比 | 栃木県(原指数) | 前年同月比 |
|---|---|---|---|---|
| 生産 | 104.9 | 7.9%上昇 | 113.0 | 8.2%上昇 |
| 出荷 | 112.9 | 4.6%上昇 | 123.7 | 10.1%上昇 |
| 在庫 | 103.0 | 4.3%上昇 | 107.0 | 4.2%低下 |
概況の読み方
月報の概況では、生産指数は「3か月ぶりの上昇」、出荷指数も「3か月ぶりの上昇」、在庫指数(季節調整済)は「5か月ぶりの上昇」と書かれています。在庫指数の前年同月比は4.2%の低下で「27か月連続の低下」です。
つまり6月は、生産と出荷が上向いた一方で、季節調整済の在庫も上がった月です。前年と比べれば在庫は2年以上減り続けているので、「在庫が積み上がり始めた」と断定するのは早く、前月に対して在庫が増えた業種がどこかを次の業種別の表で確かめる必要があります。
全国の数字と並べる
同じ月報には全国の数字も併記されています。全国の生産指数(季節調整済)は104.6で前月比1.9%の上昇、出荷指数は101.3で前月比0.2%の低下、在庫指数は97.6で前月比2.8%の上昇です。栃木県の生産の前月比7.9%は全国の1.9%より大きく動いていますが、県の指数は特定の業種の大口品目に左右されやすいため、月ごとの振れが全国より大きくなります。1か月の数字で方向を決めず、3か月程度の推移で見るのが安全です。
業種別の表は寄与率で読む
月報の「業種別の動向」には、指数を上昇方向に押し上げた業種と、低下方向に押し下げた業種が、前月比・寄与率・影響した主な品目とともに載っています。月報の注記にあるとおり、寄与率は「指数全体の変動に対する各業種の影響の割合」で、絶対値が大きい業種ほど各指数の上昇・低下に大きく影響しています(栃木県統計課「栃木県鉱工業指数 令和8(2026)年6月」)。

2026年6月分の生産指数を動かした業種
生産指数は前月に比べ11業種が上昇し、6業種が低下しました。
| 方向 | 業種 | 前月比 | 寄与率 | 影響した主な品目 |
|---|---|---|---|---|
| 押し上げ | 化学工業 | 49.7% | 55.0% | 医薬品、界面活性剤、調合香料 |
| 押し上げ | 業務用機械工業 | 34.2% | 19.5% | 医療用機械器具・同装置、分析機器、精密測定機 |
| 押し上げ | 生産用機械工業 | 20.8% | 16.6% | コンバイン、半導体製造装置、フラットパネル・ディスプレイ製造装置 |
| 押し下げ | 輸送機械工業 | 5.0%低下 | 8.6%(低下方向) | 航空機用機体部品、普通乗用車、懸架制動装置部品 |
| 押し下げ | 情報通信機械工業 | 10.5%低下 | 3.6%(低下方向) | 無線応用装置、カーナビゲーションシステム、放送装置 |
| 押し下げ | 電気機械工業 | 2.2%低下 | 3.3%(低下方向) | 電気冷蔵庫、X線装置、放射性物質応用機器 |
前月比と寄与率は別の話
情報通信機械工業の前月比は10.5%の低下で、輸送機械工業の5.0%より落ち幅は大きいのに、寄与率は輸送機械工業の方が大きくなっています。これは業種ごとの重み(ウェイト)が違うためで、県全体の数字を動かしたのは輸送機械工業の方だと読みます。自社の業種の前月比だけを見て「県全体が悪い」と結論づけないことが、この表の読み方の要点です。
出荷と在庫はどう動いたか
出荷指数は10業種が上昇し、7業種が低下しました。押し上げの最大は化学工業(前月比62.3%上昇、寄与率116.6%)、押し下げの最大は輸送機械工業(前月比14.7%低下、寄与率69.9%)で、普通乗用車、航空機用機体部品、懸架制動装置部品が主な品目です。
在庫指数は10業種が上昇し、6業種が低下しました。上昇に最も影響を与えた業種は輸送機械工業(前月比95.0%上昇、寄与率39.2%、普通乗用車、フォークリフトトラック)です。出荷が減って在庫が増えた業種が輸送機械工業であることが、3つの表を突き合わせると読めます。
季節調整済指数と原指数の使い分け
月報の「利用上の注意」では、季節調整の方法として X-12-ARIMA を採用し、季節要因に加えて曜日・祝祭日要因も調整していると説明されています。季節調整済指数は「原指数 ÷(季節指数 × 曜日・祝祭日指数)」で算出されます(栃木県統計課「栃木県鉱工業指数 令和8(2026)年6月」利用上の注意)。

前月と比べるなら季節調整済、前年と比べるなら原指数
何と比べるかで使う指数が決まります。県の解説資料は、エアコンは夏に生産が増え冬に減るという例を挙げ、「前月と比較する時は季節調整済指数を用い、前年と比較する時は季節調整前の指数(原指数)を用います」と整理しています。月報の表もこの原則どおりで、前月比は季節調整済指数、前年同月比は原指数で計算されています。
社内資料でありがちな誤りは、原指数の6月と5月を並べて「前月比」を自分で計算してしまうことです。6月は季節的に生産が多い月なので、原指数で前月比を取ると実力以上に上がって見えます。前月比は月報の季節調整済の欄をそのまま転記してください。
年間補正と基準改定
2026年6月分の月報公表時に、令和7(2025)年の年間補正が行われ、2025年1月以降の季節調整済指数などが遡及して改定されました。つまり、去年作った資料に載せた2025年の月次の数字は、今の月報では別の値になっている可能性があります。過去の数字を再利用するときは、最新の月報や県ページの指数表から取り直すのが原則です。
基準時は令和5(2023)年11月報から2015年基準が2020年基準に改定され、5年ごとに改定されます。異なる基準の指数値をそのまま1本の折れ線でつなげないでください。長期の推移を見る場合は、県ページにある接続指数表を使います。
栃木県の主要業種に当てはめて読む
栃木県は自動車・航空産業の集積があり、上三川町の日産自動車栃木工場や芳賀町のホンダ四輪R&Dセンターが立地しています(日産自動車「栃木工場」、栃木県企業立地サイト「立地企業の声」)。医療機器の生産金額は全国2位(令和5年 3,057億円)で、県には「とちぎ医療福祉機器産業振興協議会」が置かれています(栃木県「医療機器産業の振興」)。鉱工業指数の業種別の表は、この2つの業種の動きをそのまま映します。

自動車部品の会社が見る欄
自動車部品の会社が見るのは輸送機械工業の行です。2026年6月分では生産が前月比5.0%低下、出荷が14.7%低下、在庫が95.0%上昇で、主な品目は普通乗用車、航空機用機体部品、懸架制動装置部品でした。完成車の生産が減り、在庫が増えた月と読めるので、自社の受注が同じ向きに動いていれば県全体の流れ、逆向きなら自社固有の要因を疑う材料になります。自動車部品の現場での生成AIの使い方は栃木の自動車部品製造×生成AIで扱っています。
医療機器の会社が見る欄
医療機器は業務用機械工業の行です。6月分は生産が前月比34.2%上昇、出荷が41.9%上昇で、主な品目は医療用機械器具・同装置、分析機器でした。ただし、県の出荷額1位品目には歯科用機械器具やX線装置(令和2年)が挙げられていますが(栃木県「とちぎの魅力(工業)」)、鉱工業指数ではX線装置は電気機械工業の欄に入っているように、製品によって業種が分かれます。自社の主力製品がどの業種に分類されているかを、県の解説資料の分類表で一度確かめておくと、毎月の読み間違いが減ります。
問い合わせ先
分類や数字の意味が分からないときの窓口は、栃木県統計課 統計分析担当(電話028-623-2244、県庁舎本館7階)です。次回の月報更新は県のページに「令和8(2026)年9月下旬予定」と記載されています。
受注見通しの社内資料を生成AIで組み立てる手順
鉱工業指数は毎月同じ形式で出るので、資料作りも毎月同じ手順で回せます。生成AIに任せるのは「文章の組み立て」で、数字の転記は人が行います。

生成AIに渡してよいもの・渡さないもの
渡してよいのは、月報から転記した県と全国の指数値、前月比、前年同月比、自社の業種の寄与率と主な品目です。これらは公表済みの統計で、機密ではありません。
渡さないのは、自社の受注金額、取引先名、取引先ごとの内示の数字です。統計と自社の数字を比べる作業は表計算ソフトで行い、生成AIには「県全体の流れ」と「自社は同じ向きか逆向きか」という結論だけを文章にさせます。社内で生成AIを使う前の線引きは生成AIガイドラインの作り方にまとめています。宇都宮市も「生成AI活用ガイドライン」を公表しており(宇都宮市「生成AI活用ガイドライン」)、公開されている線引きの例として参考になります。
4つの段階に分けて進める
- 転記: 月報の1ページ目の表から、生産・出荷・在庫の季節調整済指数と前月比、原指数と前年同月比を表計算に写す。全国の数字も同じ行に置く。
- 業種の抽出: 業種別の動向から、自社に関係する業種の前月比・寄与率・主な品目を写す。押し上げと押し下げのどちらの表に載っているかも記録する。
- 文章化: 生成AIに「以下の数字を使って、県内製造業の6月の動きを300字で説明してください。数字は変えないでください」と指示し、転記した表を貼る。出力の数字が転記元と一致するかを1つずつ確認する。
- 自社との突合: 表計算で自社の出荷数量の前月比を並べ、県の同業種と向きが同じかを見る。逆向きなら、その理由を営業部門に確認する。
県内企業向けの生成AI活用の窓口として、栃木県産業振興センターが運営する「とちぎビジネスAIセンター」(とちぎビジネスAIセンター)もあります。手順を自社の業務に合わせて組み替えるときの相談先の1つです。
賃金や物価の統計にも同じ手順が使えます。県内の賃金と労働時間は栃木の賃金・労働時間データの読み方、物価は栃木の消費者物価指数の読み方を参照してください。
よくある質問
Q. 栃木県鉱工業指数はどこで見られますか。
A. 栃木県統計課の「栃木県鉱工業指数(令和2(2020)年基準)」のページに、月報のPDFと業種分類別の指数表(エクセル)が掲載されています。
Q. 2026年6月分の生産指数はいくつですか。
A. 季節調整済指数で104.9、前月比7.9%の上昇です。原指数は113.0で、前年同月比8.2%の上昇でした(2020年=100)。
Q. 前月比と前年同月比で、どちらの指数を使えばよいですか。
A. 前月比は季節調整済指数、前年同月比は原指数です。月報の表もこの組み合わせで計算されています。
Q. 寄与率が100%を超えているのはなぜですか。
A. 寄与率は指数全体の変動に対する各業種の影響の割合で、押し下げた業種があれば、押し上げた業種の寄与率の合計は100%を超えます。2026年6月分の出荷指数では化学工業の寄与率が116.6%でした。
Q. 自動車部品や医療機器はどの業種に入りますか。
A. 自動車部品は輸送機械工業、医療機器は業務用機械工業に含まれます。X線装置のように電気機械工業に分類される品目もあるため、県の解説資料の分類表で確認してください。
Q. 去年の資料の数字と今の月報の数字が違うのはなぜですか。
A. 2026年6月分の公表時に2025年の年間補正が行われ、2025年1月以降の季節調整済指数などが遡及して改定されたためです。過去の数字は最新の月報から取り直してください。
Q. 数字の意味が分からないときの相談先はどこですか。
A. 栃木県統計課 統計分析担当(電話028-623-2244、県庁舎本館7階)です。
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参考・出典
- 栃木県統計課「栃木県鉱工業指数(令和2(2020)年基準)」(更新日 2026年8月27日)
- 栃木県統計課「栃木県鉱工業指数 令和8(2026)年6月」(令和8(2026)年8月27日公表)
- 栃木県統計課「栃木県鉱工業指数について」(令和6(2024)年3月26日)
- 栃木県統計課「栃木県景気動向指数」(更新日 2026年9月1日)
- 栃木県「医療機器産業の振興」
- 栃木県「とちぎの魅力(工業)」
- 日産自動車「栃木工場」
- 栃木県企業立地サイト「立地企業の声」
- とちぎビジネスAIセンター(栃木県産業振興センター運営)
- 宇都宮市「生成AI活用ガイドライン」
- 経済産業省「鉱工業指数(生産・出荷・在庫、生産能力・稼働率)」