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【2026年最新】医療機器の品質文書を生成AIで作る4原則|栃木県

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【2026年最新】医療機器の品質文書を生成AIで作る4原則|栃木県

栃木県は医療機器の生産金額が全国2位(令和5年・3,057億円)で、品質・薬事の文書業務が重い産業構造です。結論として、生成AIは手順書や不適合報告の「たたき台」づくりには十分使えます。ただし4原則(最終確認は人が行う・機微情報を入力しない・版管理と記録を残す・承認フローを変えない)を外すと、品質管理監督システムそのものが崩れます。

栃木県の医療機器産業で、文書業務が時間を食う理由

栃木県の医療機器の生産金額は令和5年で3,057億円、全国比11.4%の全国2位です(1位は静岡県)。県内総生産に占める製造業の割合は全国2位(令和元年度)、製造品出荷額等は全国13位(令和元年)で、県は歯科用機械器具やX線装置などを全国上位の出荷額品目として挙げています(令和2年)。県内には「とちぎ医療福祉機器産業振興協議会」があり、企業と大学等高等教育機関、産業支援機関のネットワークづくりと各種支援事業が行われています。

この産業の特徴は、つくる作業と同じくらい「書く作業」が多いことです。医療機器の製造販売業者・製造業者には、QMS省令(医療機器及び体外診断用医薬品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令/平成16年厚生労働省令第169号)が適用され、第8条で品質管理監督文書の管理、第9条で記録の管理が求められます。品質管理監督システム基準書(第7条)を頂点に、手順書、記録、報告書が製品ごとに積み上がっていきます。

大手であれば品質保証部門に専任者がいますが、県内に多い受託製造・部品供給の中小企業では、品質保証の担当者が1〜2名で、設計や製造の兼務というケースが珍しくありません。結果として文書が属人化し、改訂が滞り、監査前にまとめて書き直す、という状態になりがちです。生成AIが効くのは、まさにこの「書く時間」の部分です。同じ発想の製造業での使い方は「栃木の自動車部品製造業が生成AIで進める業務改善5つの実践例」でも整理しています。

生成AIを使ってよい文書と、触れてはいけない領域

医療機器メーカーの文書業務で、生成AIを使ってよい領域と使わない領域
医療機器メーカーの文書業務で、生成AIを使ってよい領域と使わない領域

最初に線を引きます。この記事が扱うのは「社内の文書業務」であって、AIを医療機器の機能として製品に組み込む話ではありません。プログラム自体が医療機器に該当する場合(プログラム医療機器・SaMD)は薬機法の規制対象であり、厚生労働省の「プログラムの医療機器該当性に関するガイドライン」(令和3年3月31日・令和5年3月31日一部改正)に沿った判断と、必要に応じてPMDAへの相談が前提になります。社内の文書効率化とはまったく別の話として扱ってください。

業務 生成AIの使い方 人が必ず担う部分
手順書の改訂案 既存手順の読みやすさ改善、抜けている項目の洗い出し 作業内容が実態と合っているかの判断・承認
不適合報告の記述整理 箇条書きのメモを報告書の文章に整形 原因の特定と是正内容の決定
技術問い合わせ回答の下書き 公開済みの仕様・取扱説明の範囲で返信案を作成 数値・型式・添付資料の原本照合
英文技術文書の下訳 用語統一と一次翻訳 規制当局・認証機関に出す文書の最終確認
承認申請書の内容判断 使わない 薬事担当者・専門家の判断領域
リスク評価・適合性の結論 使わない 設計・品質責任者の判断領域

表の下2行が重要です。「AIが問題ないと言ったので出しました」は、規制の世界では説明になりません。生成AIの出力は下書きであって、判断の根拠にはならない、と社内で言い切っておくことが導入の前提になります。

品質・薬事文書で生成AIを使う4原則

品質・薬事文書で生成AIを使う4原則
品質・薬事文書で生成AIを使う4原則

原則1|最終確認は人が行う

QMS省令が求めているのは、組織として文書と記録を管理していることです。第8条は発行時の妥当性の照査、定期的な見直し、最新版の提供、廃止文書の識別などを求めています。生成AIを使っても、この責任の所在は1ミリも移りません。承認記録に名前が載るのは人であり、その人が中身を読んでいることが前提です。「AIが作った文なので目を通していない」という状態を作らないでください。

原則2|機微情報を入力しない

個人情報保護委員会は令和5年6月2日に「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」を公表し、入力した個人情報が事業者側の学習データとして利用される場合があること、その入力が個人情報保護法違反となり得ることを示しています。医療機器メーカーの場合、患者に関わる情報、顧客から預かった図面・仕様、未公開の不具合情報、原価や取引条件がこれに当たります。入力してよい情報の範囲を決め、学習利用の設定を確認したうえで使うのが最低条件です。

原則3|版管理と記録を残す

生成AIで下書きを作ると、文書が短時間で何度も差し替わります。ここで版管理が緩むと、現場が旧版で作業する事故につながります。どの文書の第何版を、いつ、誰が、どういう指示で生成し、誰が確認したか。この4点を既存の文書管理台帳に足すだけで済むはずです。新しい管理システムを買う話ではありません。

原則4|承認フローを変えない

導入時にいちばん壊れやすいのがここです。作成が速くなると「レビューも省けるのでは」という空気が出ますが、下書きの質が上がったぶん、誤りが自然に見えて逆に見落としやすくなります。レビュー担当と承認者、回付の順番は従来のまま維持してください。速くなったぶんは、レビューに時間を回すのが正しい使い方です。

業務別の使い方とプロンプト例

手順書(SOP)の改訂案をつくる

ゼロから書かせるのではなく、既存手順を貼り付けて「読み手が迷う箇所」を指摘させるのが実務的です。

  • 例:「以下は当社の製造手順書の一部です。(1)作業者が判断に迷いそうな表現、(2)主語が曖昧で誰の作業か分からない箇所、(3)記録として何を残すか書かれていない工程、の3点を指摘してください。書き換え案は指摘ごとに1案だけ提示し、元の文と対比する形で示してください。指摘の根拠がない箇所は無理に指摘しないでください。」

「書き直して」ではなく「指摘して」から始めると、確認する側の負担が下がります。全文を書き換えられると差分が追えなくなるためです。

不適合報告・是正処置報告の記述を整える

QMS省令は第60条で不適合製品の管理、第63条で是正措置を定めています。生成AIに任せるのは「事実の文章化」までで、原因分析と是正内容の決定は担当者の仕事です。

  • 例:「以下は不適合の発生状況を担当者が箇条書きでメモしたものです。事実として書かれている内容だけを使って、『発生状況』『影響範囲』『暫定処置』の3つの見出しで報告書の下書きを作成してください。メモに書かれていない原因の推測、対策の提案、程度を表す形容詞(重大な・軽微な等)は一切追加しないでください。判断が必要な箇所は[要確認]と書いて残してください。」

「書かれていないことを足すな」「判断が必要なら[要確認]と書け」を毎回入れるのがコツです。これを外すと、それらしい原因分析が勝手に入ります。

顧客・販売店からの技術問い合わせに答える

QMS省令は第55条の2で苦情処理を定めており、問い合わせ対応は記録が残る業務です。回答の質を一定に保つのに生成AIは向いています。

  • 例:「以下の製品仕様書(公開版)と取扱説明書の抜粋だけを根拠に、販売店からの次の質問への回答文を作成してください。根拠が資料内にない項目は『資料内に記載がないため確認します』と書き、推測で埋めないでください。文体は取引先向けの敬体、300字以内。回答の末尾に、参照した資料名とページ番号を列挙してください。」

参照元を列挙させると、担当者が原本照合しやすくなります。ここを省くと結局は全文を読み直すことになり、時間短縮になりません。

英文の技術文書を下訳し、用語をそろえる

  • 例:「以下の日本語の技術文書を英訳してください。訳語は添付の社内用語集に完全に従い、用語集にない専門用語は訳さず原語のまま残して[用語集未登録]と付記してください。意訳せず、1文を1文で対応させてください。訳出後に、用語集と食い違った可能性がある語を一覧で示してください。」

海外向けの出荷がある企業では、用語のゆれが監査時の指摘につながります。用語集を先に整えてから生成AIに渡す順番を守ってください。

導入前に決めておく社内ルール(チェックリスト)

導入前に決めておく社内ルールの主要4項目
導入前に決めておく社内ルールの主要4項目

研修や試験導入の前に、次の項目を紙1枚で決めておきます。全部そろってから始める必要はありませんが、上から4つは着手前に必須です。

  • 入力してよい情報:公開済みの仕様、社内で作成した一般的な手順の文面、自社の統計値
  • 入力してはいけない情報:患者に関わる情報、顧客から預かった図面・仕様、未公開の不具合情報、原価と取引条件
  • 利用を認めるサービス:会社が契約し、入力内容が学習に使われない設定を確認した環境のみ
  • 確認と承認の責任者:文書種別ごとに、下書きを確認する人と承認する人を明記
  • 生成AIを使った文書の記録:文書名・版・生成日・指示内容の概要・確認者
  • 使ってはいけない業務:承認申請書の内容判断、リスク評価の結論、適合性の判定
  • 誤りを見つけたときの報告先と、プロンプトの改訂手順
  • 用語集・社内テンプレートの保管場所と更新担当
  • 外部委託先・協力会社に生成AIの利用を認めるかどうかの方針
  • 年1回、ルールを見直す時期(監査サイクルに合わせる)

このチェックリストは、社内ガイドラインの目次としてもそのまま使えます。文書化しておくと、認証機関や顧客監査で説明を求められたときに、口頭で取り繕う必要がなくなります。

栃木県内で相談できる窓口と、最初の90日の進め方

県内には、AI活用の相談先として「とちぎビジネスAIセンター」(栃木県産業振興センター運営)があり、ワークショップや研修講座、個別相談が提供されています。医療機器産業に固有のテーマであれば、「とちぎ医療福祉機器産業振興協議会」のネットワークも接点になります。導入費用については、国の補助金や助成金が対象となる場合があります(要件審査あり)。制度ごとの違いは「栃木県の企業が使えるAI導入補助金・支援制度」にまとめています。

期間 やること 成果物
1〜30日 社内ルールの草案作成、対象業務を1つに絞る 入力可否ルールと責任者の一覧
31〜60日 絞った業務で試験運用、プロンプトを社内で共有 使えるプロンプト集(5〜10本)
61〜90日 効果と課題を整理し、対象業務を1つ追加 運用ルールの確定版と次の対象業務

最初から全社展開しないことが、この業種では特に大事です。品質文書は間違いのコストが高いので、影響の小さい業務(社内向け手順書の読みやすさ改善など)から始めて、社内で確認の型ができてから範囲を広げてください。

よくある質問

生成AIで下書きした手順書は、QMS上問題になりますか

QMS省令は文書の作成手段を限定していません。問題になるのは、承認や見直しの手続きが守られていない場合です。第8条が求める妥当性の照査と最新版の管理が機能していれば、下書きに何を使ったかは要件そのものではありません。ただし社内ルールで「生成AIを使った文書はこう扱う」と決めておくほうが、説明の手間が減ります。

顧客から預かった図面や仕様書を、生成AIに入力してもよいですか

原則として入力しないでください。秘密保持契約の範囲を超える可能性があり、個人情報保護委員会の注意喚起が指摘するとおり、入力内容が事業者側で利用される設定になっている場合もあります。どうしても必要なら、顧客の同意と、入力内容が学習に使われない契約環境の両方を確認してからにしてください。

ISO 13485の審査で、生成AIの利用を説明する必要はありますか

2026年8月時点で、生成AIの利用に特化した公的な統一基準は確認できていません。運用は認証機関ごとに異なるため、自社の認証機関に事前に確認してください。少なくとも、文書管理と記録管理の手順がどう変わったかを説明できる状態にしておくと安全です。

無料版と法人向けの契約版、どちらを使うべきですか

業務利用なら、入力内容の取り扱いを契約で確認できる環境を選んでください。無料版は入力内容の利用条件がサービス側の規約に依存し、変更されても気づきにくいためです。品質文書を扱う以上、ここは費用を惜しむ場面ではありません。

まず何人で始めればよいですか

品質保証と製造技術から1名ずつ、合計2〜3名で十分です。人数を増やすより、対象業務を1つに絞って型を作るほうが早く進みます。型ができてから、部門単位の研修に広げてください。

参考・出典

まとめ

栃木県の医療機器産業は、生産金額が全国2位という規模の裏側に、QMS省令とISO 13485が求める大量の文書業務を抱えています。生成AIはこの負荷を確実に下げますが、効くのは「書く時間」であって「判断」ではありません。

導入の順番は、社内ルールを先に決め、影響の小さい文書から試し、記録と承認フローは従来どおり維持する。この3点を守れば、監査で説明できる形のまま業務時間を圧縮できます。自社の文書業務のどこから手をつけるべきか判断がつかない場合は、企業向けの支援内容をご覧いただくか、お問い合わせからご相談ください。