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塾・スクールの教材と連絡文を生成AIで作る|栃木

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塾・スクールの教材と連絡文を生成AIで作る|栃木

栃木県内で塾やスクールを運営していると、授業以外の仕事が一人に集まります。保護者への連絡文、入会案内、時間割の変更通知、講師募集、そして教材。この記事では、そのうちどこまでを生成AIに任せてよいかを、生徒の情報の扱いと特定商取引法の線から整理します。結論を先に言えば、任せてよいのは「生徒に触れない文書の下書き」と「教材のたたき台」までで、契約に関わる書面と最終判断は人が持ちます。

栃木の教育・学習支援業は2,467事業所|事務は誰かの兼務になる

1事業所あたり約9.6人

栃木県がまとめた令和3年経済センサス-活動調査の産業大分類別民営事業所数、従業者数(PDF)によると、県内の「教育,学習支援業」は2,467事業所・従業者23,625人です(事業内容不詳の事業所を除く民営事業所)。1事業所あたりの従業者数はおよそ9.6人になります。

栃木県の教育・学習支援業が2,467事業所・従業者23,625人・1事業所あたり約9.6人であること、うち宇都宮市が759事業所・7,760人であることを示した図
栃木県の教育・学習支援業の規模(令和3年)

この23,625人のうち1,129人は個人業主です。事業所数2,467に対する比率から見ても、個人で教室を開いている割合がかなり高い産業だと分かります。同じ調査で、宇都宮市だけで759事業所・7,760人を占めており、県全体のおよそ3割が宇都宮に集まっています。

事務専任者を置ける教室は限られる

1事業所あたり10人に満たない規模ということは、事務専任者を置ける教室はごく限られるということです。教室長や塾長が、授業をしながら保護者対応と書類仕事を兼務している。ここが生成AIの入り口になります。規模が小さい事業所での進め方全般は栃木の小規模事業者向け生成AIでも扱っています。

文科省のガイドラインは学校向け|それでも塾で使える軸がある

Ver.2.0が整理した3つの場面

文部科学省は初等中等教育段階における生成AIの利活用に関するガイドライン(Ver.2.0)を令和6年12月26日に公表しています。読み手として想定されているのは教職員や教育委員会等の学校教育関係者なので、民間の学習塾やスクールを直接縛るものではありません。

文部科学省のガイドラインが示す3つの場面と、安全性・公平性・情報セキュリティ・透明性・個人情報・著作権という共通して押さえるべき6つのポイントを示した図
ガイドラインが分けた3つの場面と、共通のポイント

ただし、判断の軸として使える整理がされています。ガイドラインの概要(PDF)は、押さえておくべきポイントを主体と場面で分けています。

  • 教職員が校務で利活用する場面:校務の効率化や質の向上につながることが期待される。教職員自身が新たな技術に慣れ親しみ、利便性や懸念点を知っておくことは、児童生徒の学びを高度化する観点からも重要
  • 児童生徒が学習活動で利活用する場面:発達の段階や情報活用能力の育成状況に留意しつつ、リスクや懸念に対策を講じた上で利活用を検討すべき
  • 教育委員会等が押さえておくべきポイント:一律に禁止・義務付けるなどの硬直的な運用は望ましくない

塾に置き換えると、「教室の事務では積極的に使う」「生徒に使わせるかは段階を見て決める」「一律禁止にはしない」という順番になります。

共通して押さえるべきポイントは6つ

ガイドラインは、どの場面にも共通するポイントとして、安全性を考慮した適正利用、公平性の確保、情報セキュリティの確保、透明性の確保と関係者への説明責任、個人情報・プライバシー、著作権の保護を挙げています。基本的な考え方の柱は「人間中心の利活用」で、出力を参考の一つとして、最後は人間が判断し、責任を持つことが重要とされています。

この6つは、塾の社内ルールを1枚にまとめるときの見出しにそのまま使えます。ゼロから項目を考える必要はありません。ルールの作り方そのものは生成AIガイドラインの作り方で手順を追っています。

なお文部科学省は学校現場における生成AIの利活用についてという専用サイトを設け、令和8年度の生成AIパイロット校一覧や公開授業等の予定も掲載しています。近隣の学校がどこまで踏み込んでいるかを知っておくと、保護者からの質問にも答えやすくなります。

先に効くのは、生徒に触れない文書

生成AIを入れるとき、いきなり教材から始めると失敗します。教材は正誤の検証コストが高いからです。最初に効くのは、生徒個人の情報を含まず、型が決まっていて、毎月必ず発生する文書です。

生徒の情報を含まないか、契約に関わらないか、事実は人が上書きするかという3つの関門で、生成AIに下書きを任せてよい文書と人が作る書面を分ける図
下書きを任せてよい文書かどうかを分ける関門

保護者に出す文書

  • 月次のおたより、教室からのお知らせの下書き
  • 講習会・模試の案内文(日程と料金は人が入れる)
  • 台風や大雪で休講にするときの一斉連絡の文面。県内は冬季の路面凍結や夏の雷雨で判断が必要になる場面があるため、あらかじめ3パターン作っておくと当日に迷わない
  • 面談の案内と、面談後に送る「本日お話ししたこと」の要約テンプレート

教室の中で使う文書

  • 講師募集の原稿。求人票の書き方は求人票と採用文書の生成AI活用6場面に整理があります
  • 新任講師向けの引き継ぎメモ、教室運営の手順書
  • 備品発注や施設連絡のメール文
  • 保護者からの問い合わせに対する想定問答(回答の中身は人が決める)

これらは、社外に出るとしても契約に関わらない文書です。事実の部分を人が上書きする前提であれば、下書きを任せて構いません。

教材づくりは「作らせる」ではなく「たたき台を直す」

練習問題は、答え合わせまで人がやる

生成AIに問題を作らせると、体裁の整った問題が短時間で出てきます。ただし、数値が合わない、選択肢に正解が二つある、学年の学習範囲を超えた解法を前提にしている、といったズレが混じります。生成した問題は必ず講師が解き直してください。解き直す時間を含めても短くなる範囲が、生成AIを使ってよい範囲です。

解法が確立している単元を選び、生成AIが類題のたたき台を作り、講師が自分で解き直してから宿題プリントとして配るまでの流れを示した図
教材のたたき台を配るまでの流れ

向いているのは、すでに解法が確立している単元の類題づくり、数値だけを差し替えた宿題プリント、同じ問いを難易度違いで3段階に書き分ける作業です。向いていないのは、最新の入試傾向の分析や、特定の生徒の弱点に合わせた出題の設計です。後者は講師が持っている情報のほうが正確です。

解説文の言い換えは向いている

すでに正しいと分かっている解説を、対象学年に合わせて短く言い換える、専門用語を一つずつ言い換える、といった作業は生成AIが得意です。元の解説が正しい限り、事実が壊れにくいためです。

保護者向けの成績説明も同じで、「偏差値が3上がった」という事実は人が確定し、それをどう説明するかの文案づくりだけを任せます。

他人の教材を入力しない

市販の問題集、他社の教材、教科書の本文、入試の過去問を生成AIに入力して「似た問題を作って」と指示するのは、著作権の観点から避けてください。生成物が元の作品に似ていた場合の扱いや、入力そのものの評価は場面によって変わります。この論点は生成AIで作った画像・文章の著作権で類似性・依拠性の考え方まで整理しているので、教材を扱う前に一度読んでおくことを勧めます。

生成AIに入力してはいけない情報

塾やスクールが扱う情報は、多くが未成年者本人と家庭の情報です。無料の一般向けサービスに次を入力しないでください。

  • 生徒の氏名、学校名、学年とクラス、住所、生年月日
  • 成績、模試の判定、志望校、内申点
  • 面談記録、家庭の事情に関するメモ、通塾できない理由
  • 保護者の氏名、勤務先、連絡先、支払い状況
  • 生徒や保護者とのやり取りの録音、その文字起こし
  • 講師の履歴書、学生講師の在籍大学と時間割

面談記録を要約させたい場合は、氏名を「生徒A」に置き換え、学校名を「県内の公立中学校」に丸め、点数を「前回より上昇」といった表現に変えてから渡します。文部科学省のガイドラインが共通ポイントに個人情報・プライバシーと情報セキュリティを挙げているのは、まさにこの部分です。

学習塾は特定商取引法の対象|契約書面はAIの守備範囲の外

ここが、塾・スクールが他の業種と決定的に違うところです。

期間と金額で線が引かれている

消費者庁の特定商取引法ガイドによると、特定継続的役務提供として指定されているのは、エステティック、美容医療、語学教室、家庭教師、学習塾、結婚相手紹介サービス、パソコン教室の7役務です。教育に関わるものだけ取り出すと、次のようになります。

役務 期間 金額
いわゆる学習塾(事業者が用意する場所で提供) 2月を超えるもの 5万円を超えるもの
いわゆる家庭教師(学習塾以外の場所で提供) 2月を超えるもの 5万円を超えるもの
いわゆる語学教室 2月を超えるもの 5万円を超えるもの
いわゆるパソコン教室 2月を超えるもの 5万円を超えるもの

金額の5万円は受講料だけではありません。同ガイドは、入学金、受講料、教材費、関連商品の販売など、契約金の総額が5万円を超えていると対象になるとしています。教材費を別立てにしていても合算されます。

対象の範囲には細かい但し書きもあります。学習塾と家庭教師には、幼稚園または小学校に入学するためのいわゆる「お受験」対策は含まれません。また学習塾では、浪人生のみを対象にした役務(コース)は対象になりませんが、高校生と浪人生が両方含まれるコースは全体として対象になります。

概要書面と契約書面には法定の記載事項がある

法第42条により、契約の締結前には契約の概要を記載した概要書面を、締結後には遅滞なく契約書面を渡さなければなりません。記載事項は法令で決まっていて、契約書面であれば、役務の内容、対価その他の金銭の額、支払時期と方法、役務の提供期間、クーリング・オフに関する事項、中途解約に関する事項、事業者の氏名・住所・電話番号・代表者の氏名、契約締結を担当した者の氏名、契約締結の年月日などが並びます。

さらに、書面をよく読むべきことを赤枠の中に赤字で記載すること、契約書面のクーリング・オフの事項も赤枠の中に赤字で記載すること、書面の字と数字の大きさは8ポイント以上であることが求められます。

つまり、この2つの書面は様式そのものが法定です。生成AIに「塾の契約書を作って」と指示して出てきたものをそのまま使うことはできません。記載漏れは行政処分や罰則の対象になり得ます。使うとしても、自社の書面と法定記載事項の一覧を突き合わせて、抜けを洗い出すチェックリストを作らせるところまでです。最終確認は人が行い、迷ったら専門家に確認してください。

なお、消費者は法定の書面を受け取った日から数えて8日以内であればクーリング・オフができます(法第48条)。関連商品として、語学教室・家庭教師・学習塾については書籍(教材を含む)、CD・DVDなど、ファクシミリ機器・テレビ電話が指定されており、本体の契約をクーリング・オフした場合は関連商品も対象になります。

チラシとLPで、生成AIが出しやすい表現

誇大広告等の禁止(法第43条)

法第43条は誇大広告等を禁止しています。役務の内容などについて「著しく事実に相違する表示」や「実際のものよりも著しく優良であり、若しくは有利であると人を誤認させるような表示」が禁止されます。

生成AIに募集チラシの文案を書かせると、次のような言い切りが自然に混ざります。書き換えの方向をあらかじめ決めておくと、毎回の確認が速くなります。

出やすい表現 なぜ危ないか 書き換えの方向
必ず成績が上がります 結果を保証する表示になる どんな指導をどの頻度で行うかの事実を書く
合格率No.1 根拠・調査年・範囲がないと裏付けを示せない 調査主体・対象・時点を併記できる場合だけ使う
県内最安 比較対象と時点が不明確 自塾の料金を明示し、比較表現を外す
今だけ半額 常時実施していると有利誤認になり得る 実施期間と通常価格の適用実績を確かめる

書かないことも問題になる(法第44条)

法第44条は、勧誘や契約解除の妨害の際に事実と違うことを告げること、故意に事実を告げないこと、威迫して困惑させることを禁止しています。中途解約の条件を案内文から省くのは「故意に事実を告げない」に近づきます。生成AIは指示されていない不利な条件を自分から書き足さないので、案内文の骨子を人が先に決めておく必要があります。

広告表現の確認の流れそのものは小売・卸売業の生成AI活用と景品表示法と共通しますが、塾の場合は景品表示法に加えて特定商取引法が重なる点が違います。

講師と学生アルバイトに渡す3行のルール

学生講師が個人のアカウントで生成AIを使うことは、実際には止められません。禁止する代わりに、覚えられる短さのルールにします。

  1. 生徒の名前・学校名・点数は、どんなサービスにも入力しない
  2. 生成AIが作った問題と解説は、必ず自分で解いてから配る
  3. 保護者に渡す文と、料金・契約に関わる文は、教室長の確認を通す

この3行を講師控室に貼り、採用時のオリエンテーションで読み合わせる。この程度から始めるほうが、長い規程を作って誰も読まない状態より機能します。

保護者対応が過熱したときの備えは、教室運営とは別の法令の話になります。2026年10月1日からカスタマーハラスメント対策が全事業主の義務になり、指針が言う「顧客等」には施設の利用者及びその家族が含まれます。塾も対象です。詳しくはカスハラ対策は10月1日から義務|栃木の条例と10の措置を参照してください。

進め方の順番

1か月目は、教室で1か月に作る文書を書き出します。おたより、案内文、募集原稿、手順書。数と、1本あたりの所要時間をメモします。

1か月目に文書を書き出し、2か月目に生徒の情報を含まない1種類を選び、3か月目に時間を数え直すという3か月の進め方を階段で示した図
3か月で回す進め方

2か月目は、そのうち生徒の情報を含まないものを1種類だけ選び、下書きを生成AIに任せます。うまくいった指示文は、講師が共有できる場所に残します。ここで欲張って教材に手を出さないことが、続けるコツです。

3か月目に、同じ文書にかかった時間を数え直します。減っていなければ、文書の種類を替えます。ここまで来てから、教材のたたき台づくりに進みます。特定商取引法に関わる概要書面・契約書面は、この順番のどこにも入れません。

県内で相談できる先

相談先 内容
とちぎビジネスAIセンター AI・IoTの導入相談(使い方はこちらの記事で解説)
消費者庁 特定商取引法ガイド 特定継続的役務提供の解釈。サイト内に全国のお問合せ窓口の案内がある
地元の商工会・商工会議所 経営全般、書面の見直しに向けた専門家の紹介
弁護士・行政書士等の専門家 概要書面・契約書面の適合性の確認

契約書面の内容が法定記載事項を満たしているかどうかの判断は、専門家に確認してください。生成AIの出力を根拠にしないことが大切です。

よくある質問

Q. 生徒に生成AIを使わせてよいですか。
A. 民間の塾を直接縛る決まりはありません。判断の材料としては、文部科学省のガイドラインが、発達の段階や情報活用能力の育成状況に留意しつつ、リスクや懸念に対策を講じた上で利活用を検討すべきとしています。また、一律に禁止・義務付けるなどの硬直的な運用は望ましくないとも書かれています。まず保護者への説明の仕方を決めてから、単元を限って試すのが現実的です。

Q. 月謝が5万円以下なら特定商取引法の対象外ですか。
A. 月謝ではなく契約金の総額で判断します。消費者庁のガイドは、入学金、受講料、教材費、関連商品の販売など、契約金の総額が5万円を超えていると対象になるとしています。期間の要件(学習塾は2月を超えるもの)も同時に満たす必要があります。自塾の年間コースがどちらに当たるかは、書面を用意した上で専門家に確認してください。

Q. 面談記録を生成AIで要約させたいのですが。
A. 生徒名・学校名・点数・家庭の事情を外し、匿名化してから渡してください。文部科学省のガイドラインも、共通して押さえるべきポイントに個人情報・プライバシーと情報セキュリティを挙げています。要約したあと、事実の部分を講師が読み直して直すところまでが一つの作業です。

Q. 教材を生成AIで作れば、教材費を下げられますか。
A. 制作時間は下がる可能性がありますが、講師が解き直す時間が必ず加算されます。また、料金の見直しを広告に反映するときは、法第43条の誇大広告等の禁止と、書面の記載事項の変更が同時に関係します。値下げの告知だけ先に出さないでください。

Q. 講師募集の原稿も生成AIに任せてよいですか。
A. 下書きは任せて構いません。ただし、賃金、勤務時間、就業場所などの明示すべき事項は法令で決まっているため、生成された文をそのまま出さず、実際の条件に合わせて人が確定してください。

まとめ

栃木県内の教育・学習支援業は2,467事業所、1事業所あたりおよそ9.6人という規模です。事務は誰かの兼務になり、その人の時間が教室の上限を決めています。

生成AIを入れる順番は、生徒に触れない文書の下書きから。次に、正しいと分かっている解説の言い換え。教材の新規作成はその後で、必ず講師が解き直します。生徒の氏名・成績・志望校・家庭の事情は入力しません。

そして、学習塾・家庭教師・語学教室・パソコン教室は特定商取引法の特定継続的役務提供に当たり得ます。概要書面と契約書面には法定の記載事項があり、赤枠赤字や8ポイント以上といった様式まで決まっています。ここだけは生成AIの守備範囲の外に置いてください。

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出典・参考