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栃木の完全失業率の読み方|モデル推計値で何が変わるか

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栃木の完全失業率の読み方|モデル推計値で何が変わるか

この記事の要点

栃木県の完全失業率は、2026年4~6月期平均で2.6%です。全国も同じ4~6月期で2.6%、栃木県の直前の1~3月期は2.4%でした(e-Stat「労働力調査 都道府県別結果(モデル推計値)-四半期平均結果」2026年4~6月期)。

この数字を社内資料に貼る前に押さえるべき点が3つあります。1つ目は、これは栃木県が独自に調べた数字ではなく、総務省統計局が全国の労働力調査の結果を都道府県別に時系列回帰モデルで推計した「モデル推計値」だということ。2つ目は、季節調整値ではないため前期比で「改善した・悪化した」と読めないこと。3つ目は、毎年1~3月期平均の公表時に過去5年分がさかのぼって一部改定されるため、いつ時点の公表値かを書き添えないと数字が合わなくなることです。

以下では総務省統計局・e-Stat・栃木県・栃木労働局の一次情報だけを使って整理します。

栃木県の最新の数字はどこに出ているか

2026年4~6月期平均の6つの数字

2026年4~6月期平均の栃木県の結果は、次のとおりです(単位・千人、完全失業率のみ%。e-Stat「労働力調査 都道府県別結果(モデル推計値)-四半期平均結果」)。

労働力調査から時系列回帰モデルを経て栃木県の完全失業率2.6%が公表されるまでの流れ図
全国の労働力調査の結果を時系列回帰モデルで県別に推計し、e-Statで四半期平均として公表される
項目 2026年4~6月期平均 前年同期増減
15歳以上人口 1,668 -7
労働力人口 1,082 -1
就業者 1,054 -2
完全失業者 28 1
非労働力人口 586 -6
完全失業率 2.6% 0.1ポイント

完全失業率だけを見ると前年同期から0.1ポイント上がっていますが、同時に15歳以上人口が7千人減り、非労働力人口も6千人減っています。母数と内訳が同時に動いているため、率の変化だけを「雇用が悪化した」と説明するのは無理があります。

県のページに数値は載っていない

栃木県の栃木県「労働力調査」のページを開いても、完全失業率の数値そのものは出てきません。載っているのは、労働力調査が統計法に基づく基幹統計調査であること、昭和21年9月以降毎月実施されていること、栃木県では毎月約800世帯に協力してもらっていること、そして総務省統計局へのリンクです。

つまり「県の公式サイトに出ている栃木県の完全失業率」という言い方は正確ではありません。数値の出どころは総務省統計局とe-Statで、県のページは調査の説明と入口の役割です。社内資料や提案書に出典を書くときは、リンク先を県ではなく統計局側にしておくほうが安全です。

四半期平均と年平均の2種類がある

都道府県別結果には四半期平均と年平均があります。今回参照しているのは四半期平均で、最新は2026年4~6月期です。年平均は1年分がそろってから出るため、年度計画のような長い時間軸の資料では年平均、期中の採用判断では四半期平均を使い分けることになります。同じ資料の中で四半期平均と年平均を混ぜると比較にならないので、表の見出しにどちらかを必ず書いてください。

「モデル推計値」とは何か

時系列回帰モデルで推計した値である

統計表の注記には「数値は、労働力調査の結果を都道府県別に時系列回帰モデルによって推計した値である」と明記されています。さらに「ただし、北海道、東京都、神奈川県、愛知県、大阪府及び沖縄県は比推定によって推計した値である」とも書かれています(総務省統計局「<参考>労働力調査(基本集計)都道府県別結果」)。

モデル推計値の中に比推定の6都道府県と時系列回帰モデルの栃木県が分かれて入る層構造の図
栃木県は時系列回帰モデルによる推計で、標本は毎月約800世帯にとどまるため注記付きで扱う

栃木県はこの6都道府県に含まれないため、時系列回帰モデルによる推計値です。推計方法の詳細は総務省統計局「都道府県別結果の新たな統計的手法による推計(時系列回帰モデルによる推計)について」(PDF)にまとめられています。

ここで大事なのは、「栃木県内で集めた調査票だけを集計した実測値」ではないという点です。過去の時系列の動きと全国の結果を使って県別の値を推計しているため、栃木県の数字が動いた理由を県内の出来事だけで説明しようとすると無理が出ます。

都道府県別に表章する設計になっていない

同じ注記の1番目には、さらに強い書き方がされています。「労働力調査は、都道府県別に表章するように標本設計を行っておらず(北海道及び沖縄県を除く。)、標本規模も小さいことなどにより、全国結果に比べ結果精度が十分に確保できないとみられることから、結果の利用に当たっては注意を要する」。

栃木県の標本規模は、県のページにあるとおり毎月約800世帯です。全国で集めた標本の一部にあたるこの規模から県の姿を推し量っているため、小数第1位の0.1ポイントや0.2ポイントの上下を取り出して「改善した」「悪化した」と社内で言い切るのは、統計の作りに合っていません。使うなら、方向が数期そろって同じかどうかを見ます。

数字を1行で書くときの書き方

社内資料に1行で書くなら、次のように出典と注記を同じ行に入れてしまうのが早いです。

栃木県の完全失業率は2.6%(2026年4~6月期平均・モデル推計値、総務省統計局「労働力調査」都道府県別結果)

「2.6%」だけを抜いて貼ると、読んだ人が季節調整値だと思い込んだり、翌年の改定後の値と突き合わせて食い違うことになります。括弧の中身が長くなっても、期・モデル推計値・出典の3点は落とさないでください。

季節調整値ではない|前期比で読めない理由

1~3月期より4~6月期が高い並びになっている

四半期平均の並びを、栃木県と全国で並べると次のようになります(単位・%。e-Stat「労働力調査 都道府県別結果(モデル推計値)-四半期平均結果」)。

栃木県の完全失業率を年と四半期で並べた2行2列の表。2025年は2.1から2.5、2026年は2.4から2.6
2年続けて1~3月期より4~6月期が高く、前期比では改善も悪化も判断できない
期 栃木県 全国
2025年1~3月期 2.1 2.4
2025年4~6月期 2.5 2.6
2025年7~9月期 2.3 2.5
2025年10~12月期 2.2 2.5
2026年1~3月期 2.4 2.7
2026年4~6月期 2.6 2.6

栃木県は2025年も2026年も、1~3月期から4~6月期にかけて上がっています(2.1→2.5、2.4→2.6)。2年続けて同じ向きに動いているものを「今期は悪化した」と読むと、毎年春に同じ結論を出すことになります。

前期比ではなく前年同期比で見る

統計局が都道府県別結果のページで明示しているとおり、ここに載っている四半期平均・年平均の都道府県別結果は季節変動を含んでおり、季節調整値ではありません。全国の月次結果で使われる「完全失業率(季節調整値)」とは別物です。

したがって比べる相手は直前の期ではなく、前年の同じ期です。2026年4~6月期の2.6%は、2025年4~6月期の2.5%と比べて0.1ポイント上、という読み方になります。この0.1ポイントも前述のとおり精度の注記付きで扱う値なので、単独で結論を出す材料にはしません。

全国との差も幅で見る

同じ表で栃木県と全国を並べると、2025年は栃木県のほうが全国より0.1~0.3ポイント低く、2026年4~6月期では両方2.6%で並んでいます。「栃木は全国より失業率が低い県」という説明は2025年の並びでは成り立ちますが、直近の期では差が消えています。県外の取引先や本社向けの資料で全国比を語るなら、1期だけでなく数期を並べて幅で示してください。

毎年1~3月期に過去5年分が改定される

注記に書かれている改定の仕組み

統計表の注記3には「毎年1~3月期平均公表時に、新たな結果を追加して再計算を行い、前年までの過去5年間の四半期平均及び年平均結果を遡って一部改定している」と書かれています。モデルによる推計なので、新しい期のデータが入ると過去の推計値も計算し直されるという作りです。

新たな結果を追加して再計算し過去5年分が一部改定される循環と、公表期・取得日の記録を示す図
新しい期を足して再計算するため過去の値も一部改定される。資料には公表期と取得日を残す

これは誤りの訂正ではなく、あらかじめ決められた手順です。ただし実務上は影響があります。昨年の資料に載せた栃木県の四半期の値が、今年ダウンロードした表では違う値になっていることがあり得ます。

資料に「いつ時点の公表値か」を書く

対策は単純で、表の脚注に取得日と公表期を書くだけです。

  • 出典:総務省統計局「労働力調査」都道府県別結果(モデル推計値)
  • 公表期:2026年4~6月期平均
  • 取得日:2026年9月

この3行があれば、あとで値が違っても「改定前の公表値を引用している」と説明できます。逆にこれがないと、社内で数字が2つ出回ったときにどちらが古いか判別できません。県の統計を継続的に追う場合は、ダウンロードしたファイルを取得日つきのファイル名で残しておくと確実です。

ベンチマーク人口の切り替えも遡及する

注記には、2015年10月から2021年12月までは2020年国勢調査基準のベンチマーク人口に基づいて遡及または補正した時系列接続用数値を使って推計している旨も書かれています。長期の折れ線グラフを作るときは、この接続処理があることを脚注に書いておくと、古い資料と数字が合わない理由を説明できます。10年超の時系列を扱う予定がなければ、四半期平均の直近数年だけを使うのが無難です。

有効求人倍率と何が違うか

母集団と更新頻度が違う

栃木県の雇用の数字としてよく使われるもう1つが有効求人倍率です。完全失業率とは、そもそも数えている対象が違います。

完全失業率と有効求人倍率を左右に並べ、対象・間隔・直近の公表・季節調整の4項目を比べた図
数えている対象・更新の間隔・直近の公表・季節調整の扱いが4点とも違う
項目 完全失業率(モデル推計値) 有効求人倍率
数えているもの 世帯側(働いている人・探している人) ハローワークの求人と求職
更新の間隔 四半期 月次
直近の公表 2026年4~6月期 令和8年7月分
季節調整 季節調整値ではない 季節調整値が公表される

有効求人倍率はハローワークに出された求人と申し込まれた求職から計算するため、ハローワークを通さない採用は入りません。一方の完全失業率は世帯を対象にした調査から推計するので、求人の出し方には左右されません。同じ「栃木県の雇用」の話でも、片方が動いてもう片方が動かないことは普通に起こります。

栃木労働局の資料で月次の動きを追う

有効求人倍率の栃木県分は、栃木労働局「最近の雇用失業状況」に月ごとのPDFが並んでいます。2026年9月28日時点で掲載されている最新は令和8年7月分です。数値はPDFの中にあるため、ページを開いただけでは分かりません。

四半期の完全失業率で大きな流れをつかみ、月次の有効求人倍率で足元を見る、という二段構えにすると、採用の判断材料としては扱いやすくなります。有効求人倍率そのものの読み方は栃木の有効求人倍率1.09倍|統計を生成AIで読み解く手順で扱っています。

県内企業がこの数字をどう使うか

採用計画では「就業者数の減り方」を見る

完全失業率よりも、同じ表の就業者1,054千人(前年同期から2千人減)と15歳以上人口1,668千人(同7千人減)のほうが、県内企業の採用計画には直接効きます。母数が減っている県で、率が横ばいのまま推移しているという読み方です。

自動車部品や医療機器のように県内に生産拠点が集まる業種では、同じ地域の他社と同じ労働力を分け合う前提になります。率の0.1ポイントを追うより、就業者数と15歳以上人口が何年続けて減っているかを追うほうが、募集枠や外注の判断に使えます。

求人票と社内説明に使うときの粒度

求人票の賃金や勤務条件を決めるときに完全失業率を直接使うことはありませんが、社内で「なぜ条件を上げるのか」を説明する材料にはなります。その際も、県の数字だけで説明せず、全国と並べた表で幅を見せるほうが納得されやすいです。求人票そのものの作り方は【2026年最新】求人票と採用文書の生成AI活用6場面|栃木県版にまとめています。

いちご農業・日光の観光業のような季節のある業種では

いちごの収穫期や日光・那須の観光の繁忙期のように、年内の山と谷がはっきりしている業種では、季節調整値でない四半期の数字をそのまま自社の繁忙と重ねないよう注意が必要です。自社の繁忙の山と、県全体の四半期の山は一致しません。県の数字は「県全体の年ごとの傾向」として使い、自社の季節性は自社の実績で見るのが筋です。労働時間の側から自社の負荷を見る方法は栃木の年間総実労働時間1,666時間|書類仕事の減らし方で扱っています。

生成AIに渡すときの線引き

渡してよいもの

公表済みの統計と注記は公開情報なので、生成AIに貼って作業を任せて構いません。具体的には、上の表の数値、統計表の注記文、出典のURL、それらをもとにした社内向け説明文の下書きです。

生成AIへの入力を通すものと止めるものに分けたゲート図。公開統計は通し、個人情報は止める
公表済みの統計と注記文は生成AIに渡してよく、応募者や社員の情報と未公表の計画は渡さない

やらせると早いのは次の3つです。1つ目は、四半期の並びから前年同期比の一覧を作らせること。2つ目は、注記の内容を「社内向けの1行注記」に書き換えさせること。3つ目は、完全失業率と有効求人倍率の違いを、営業所長向けの平易な文に直させることです。

渡さないもの

反対に、応募者の履歴書、社員の評価情報、退職者の氏名や理由、まだ公表していない採用計画の数値は、外部の生成AIサービスに貼らないのが原則です。これらは統計の読み方とは関係なく、渡す必要もありません。

そのまま使えるプロンプト

次のように、数値と注記を自分で貼ってから頼むと、事実の取り違えが起きにくくなります。

以下は総務省統計局「労働力調査」都道府県別結果(モデル推計値)の
栃木県・四半期平均の完全失業率です。季節調整値ではありません。

2025年1~3月期 2.1 / 4~6月期 2.5 / 7~9月期 2.3 / 10~12月期 2.2
2026年1~3月期 2.4 / 4~6月期 2.6

この数字について、
1. 前年同期比を一覧にしてください
2. 前期比で評価しない理由を3行で説明してください
3. 営業所長向けの説明文を200字で書いてください
出典と「モデル推計値」「季節調整値ではない」の注記は必ず残してください。

数字を生成AIに「調べさせる」のではなく、自分でe-Statから取った値を貼って整理だけ任せる。この順番を崩さなければ、公開資料に誤った数値が載る事故は避けられます。

よくある質問

Q. 栃木県の完全失業率は、県のホームページで確認できますか。

数値そのものは載っていません。栃木県「労働力調査」のページには調査の説明と総務省統計局へのリンクがあり、県内では毎月約800世帯が調査に協力していることが書かれています。数値は統計局またはe-Statで取得します。

Q. 「モデル推計値」と書かずに数字だけ使ってはいけませんか。

使ってはいけないわけではありませんが、統計表の注記に「都道府県別に表章するように標本設計を行っておらず、標本規模も小さいことなどにより、全国結果に比べ結果精度が十分に確保できないとみられる」と明記されているため、注記なしで小さな差を論じると説明が持ちません。期と「モデル推計値」の2語は残すことをおすすめします。

Q. 前の期より上がったら雇用は悪化したと言えますか。

言えません。都道府県別の四半期平均は季節調整値ではないため、前期比では判断できません。栃木県は2025年も2026年も1~3月期から4~6月期にかけて上がっており、比べる相手は前年の同じ期です。

Q. 去年引用した数字と今年の表の数字が違います。

注記3のとおり、毎年1~3月期平均の公表時に過去5年間の四半期平均・年平均が遡って一部改定されます。誤りではなく決められた手順です。資料には公表期と取得日を書き添えてください。

Q. 有効求人倍率と完全失業率は、どちらを見ればよいですか。

用途が違うので両方見ます。完全失業率は四半期で県全体の傾向、有効求人倍率は月次で足元の求人と求職の関係を示します。栃木県分の月次資料は栃木労働局「最近の雇用失業状況」に掲載され、2026年9月28日時点の最新は令和8年7月分です。

Q. 生成AIに栃木県の完全失業率を聞いて答えさせてもよいですか。

公開資料に使う数字は、自分でe-Statから取って貼ってください。生成AIに数値を思い出させると、改定前の値や全国の値が混ざることがあります。整理や文章化を任せるのは問題ありません。

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参考・出典