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CO2排出量の算定と回答資料を生成AIで整える|栃木の製造業

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CO2排出量の算定と回答資料を生成AIで整える|栃木の製造業

この記事の要点

取引先から求められるのは、多くの場合「Scope1・2の排出量」「算定の範囲と方法」「削減目標」の3点です。Scope1は自社の燃料使用による直接排出、Scope2は購入した電気・熱の使用に伴う間接排出で、電気・ガス・燃料の請求書があれば算定できます。栃木県は2050年カーボンニュートラルを宣言し、事業者向けに省エネお助け隊の専門家派遣、中小企業向けSBT認定取得支援(追加募集は令和8年10月30日まで)、製造工程脱炭素化促進事業などの窓口を置いています。生成AIに任せてよいのは、質問票の整理と回答文の下書きまでで、排出量の数字と算定範囲は人が決めて入れます。

なぜ栃木の部品メーカーに排出量の質問が来るのか

県は2050年カーボンニュートラルを宣言し、条例を施行している

栃木県は令和2年12月に「2050年までにカーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)実現を目指す」ことを宣言し、令和4年3月29日に「2050年とちぎカーボンニュートラル実現に向けたロードマップ」を策定しました。令和5年4月1日には栃木県カーボンニュートラル実現条例が施行され、ロードマップは令和8年3月に数値の改訂が行われています(栃木県「2050年カーボンニュートラル実現に向けた取組」(2026年3月27日更新))。県は、現在の温室効果ガス排出を9割以上削減する非常に高い目標だと説明しています。

排出量の実績、算定の範囲と方法、削減目標と取り組みの3つの箱から質問票の1つの箱へ矢印が集まる図
質問票は実績・算定の範囲と方法・削減目標と取り組みの3つに分かれる

自動車と医療機器の集積が、要請を実務に変える

栃木県には日産自動車の栃木工場(上三川町)があり、県は自動車産業と航空産業の集積を企業立地の強みとして紹介しています(日産自動車「栃木工場」、栃木県企業立地ガイド「進出企業の声」)。医療機器の生産金額は全国2位で、令和5年は3,057億円、全国比11.4%です(栃木県「とちぎ医療福祉機器産業振興協議会」)。

完成品メーカーが自社のサプライチェーン全体の排出量を把握しようとすると、部品を納める側に質問票が回ってきます。質問票の多くは「排出量の実績」「算定の範囲と方法」「削減目標と取り組み」の3つに分かれ、県の支援も同じ3段階(把握・目標設定・削減)に沿って組まれています。

求められるのはScope1・2の数字と削減目標

栃木県の中小企業向けSBT認定取得支援事業のページは、Scope1を「事業者自らによる温室効果ガスの直接排出」、Scope2を「他社から供給された電気・熱の使用に伴う温室効果ガスの間接排出」、ロケーション基準を「地域・地方・国等の特定の場所における平均的な排出係数に基づき、Scope2排出量を算定する方法」と定義しています(栃木県「中小企業向けSBT認定取得支援事業」(2026年8月7日更新))。取引先が最初に求めるのはこのScope1・2で、原材料や輸送まで含むScope3は次の段階です。

Scope1・2の数字を自社で出す手順

集めるデータは請求書で足りる

Scope1は、工場のボイラーやフォークリフト、社用車で使う都市ガス・LPガス・重油・軽油・ガソリンの使用量です。Scope2は、電力会社から買った電気と、購入した蒸気や熱の使用量です。いずれも月々の請求書か検針票に数量が載っているので、まず1年分を拠点ごとに表にします。

請求書からCO2排出量計算シート、Scope1・2、算定の範囲へ進む4段の流れ図
請求書の数量から計算シートで排出量を出し、最後に算定の範囲を書き残す

栃木県は事業者向けの脱炭素ガイドブックとあわせて、大規模事業者向けと小規模事業者向けのCO2排出量計算シート(エクセル)を公開しています(栃木県「(事業者の皆さま向け)脱炭素ガイドブックのお知らせ」(2026年4月30日更新))。数量を入れれば排出量が出る形なので、最初の1回はこのシートで足ります。

算定方法は環境省の資料に合わせる

排出量の考え方と算定方法は、環境省・経済産業省のグリーン・バリューチェーンプラットフォームが「サプライチェーン排出量算定について」「Scope1、2排出量とは」「排出量算定に関するガイドライン」として公開しています(環境省「グリーン・バリューチェーンプラットフォーム」)。取引先の質問票に「算定方法」の欄がある場合は、このプラットフォームのガイドラインに沿って算定したこと、Scope2はロケーション基準で算定したことを書けば、相手側も照合できます。

算定の範囲を先に決めて書き残す

数字より先に決めるのは範囲です。どの拠点を含めたか、対象期間は暦年か年度か、社用車を含めたか、賃借しているオフィスの電気をどう扱ったか。この4点を1枚にして、回答資料と社内の記録に同じ文を使います。翌年に数字を更新するときに、範囲が変わっていないかを確認できるようにするためです。

栃木県の支援を使う|省エネお助け隊・SBT認定支援・製造工程脱炭素化

省エネお助け隊で現状把握から始める

省エネお助け隊は、県内に事業所を有する中小企業等を対象に専門家を派遣し、省エネの取り組みの段階に応じて現状把握から改善までサポートする事業です。令和8年度に栃木県内を支援対象地域として活動する事業者は、株式会社那須環境技術センター(那須塩原市)と一般社団法人カーボンマネジメントイニシアティブ(佐野市)の2事業者です。支援対象は、製造業なら資本金3億円以下または従業員300人以下の事業者などで、省エネ診断を受診済みまたは事業期間中に受診する事業者であることが条件です(栃木県「省エネお助け隊紹介」(2026年6月15日更新))。

省エネお助け隊、中小企業向けSBT認定取得支援事業、製造工程脱炭素化促進事業の3段を階段で示した図
現状把握、削減目標、設備導入の順に県の窓口が用意されている

「自社の省エネ余地はどこにあるのか」「具体的な省エネの実施方法や計画を知りたい」が相談内容の例に挙がっており、排出量を出したあとの「どこを減らすか」を専門家と決められます。

中小企業向けSBT認定取得支援で削減目標を持つ

栃木県は、県内中小企業者の排出量把握と削減目標の設定を支援する中小企業向けSBT認定取得支援事業を実施しており、令和8年8月17日から追加募集を開始しました。申請期間は令和8年10月30日まで、補助率は補助対象経費の1/3、上限は50万円で、対象経費は削減目標設定等の委託費と認定取得費用です。中小企業向けSBT認定を取得しなかった場合は補助の対象外になります。予算に対する交付決定額の割合は令和8年8月31日現在で約10%、交付決定予定件数は5件程度です(栃木県「中小企業向けSBT認定取得支援事業」(2026年8月7日更新))。

中小企業向けSBT認定の申請要件には、Scope1とロケーション基準のScope2の排出量合計が10,000 tCO2e未満であることなどの必須5項目があります。宇都宮市・小山市・那須塩原市にも同様のSBT認定取得支援の補助金があることが、県の支援一覧に掲載されています(栃木県「カーボンニュートラルに関する取組支援一覧」(2026年5月19日更新))。対象となる場合があります(要件審査あり・支給を保証するものではありません)。

製造工程脱炭素化促進事業と推進融資

県産業労働観光部工業振興課の製造工程脱炭素化促進事業は、製造工程の脱炭素化に向けて企業ごとの課題や設備導入について助言するアドバイザー派遣(令和8年度の受付は4月23日から5月22日)と、派遣を受けた企業を対象とするサプライチェーン脱炭素化モデル事業補助金(補助率は中堅企業1/3以内・中小企業1/2以内、補助上限は一般枠400万円・サプライチェーン枠1,200万円、令和8年7月頃開始予定)、取り組み事例の見学会(令和9年2月頃予定)の3本で構成されています。設備資金・運転資金向けにはカーボンニュートラル推進融資があり、融資限度額1億円、融資期間10年以内、融資利率2.1%以内で随時受け付けています(栃木県「カーボンニュートラルに関する取組支援一覧」)。

技術開発側では、栃木県産業振興センターのとちぎグリーン成長産業創出支援事業が令和8年5月1日から12月25日まで公募中で、FS調査は500万円以内、実用化開発は単体2,000万円以内、助成率は中小企業・中堅企業等で2/3以内です(栃木県産業振興センター「とちぎグリーン成長産業創出支援事業」)。いずれも要件審査があり、支給を保証するものではありません。

取引先への回答資料を生成AIで整える|下書きは任せ、数字は人が入れる

質問票を3つに分類する

取引先の質問票は、まず「実績を聞く設問」「算定方法を聞く設問」「目標と取り組みを聞く設問」に分けます。生成AIには質問票の設問文を渡し、この3分類に仕分けさせ、設問ごとに「必要な社内データ」「担当部署」を表にさせます。この段階では数字を渡す必要がないので、機密の心配なく使えます。

事実の箱から下書き、人が確認の門を経て回答資料に至る流れと、入力しない取引先の名称・部品の単価を示した図
事実の箱の情報だけで下書きし、人が確認してから回答資料にする

回答文の型を作る

回答文は設問の種類ごとに型が決まります。

  • 実績: 対象期間、対象拠点、Scope1とScope2の排出量、算定の単位
  • 算定方法: 準拠したガイドライン、Scope2の基準(ロケーション基準)、使った排出係数の出典
  • 目標と取り組み: 目標年、削減率、実施済みの取り組み、県の支援制度の利用状況

生成AIには「この型で、事実の箱に入っている情報だけを使って文章にする」と指示します。事実の箱に無い数字や取り組みを補わせないことが、回答資料での最大の注意点です。

入れない情報と、人が入れる情報

生成AIに入力しないのは、取引先の名称、部品の単価、生産数量、契約条件です。排出量そのものは事実の箱に入れてよいですが、社外向けの生成AIサービスを使う場合は、社名と組み合わせて入れないようにします。最後に人が入れるのは、排出量の数字、算定範囲の文、削減目標の数値です。この3つを人が確認してから提出します。生成AIの社内ルールは生成AIガイドラインの作り方|A4 2枚・必須6項目で扱っています。

県内の主要業種に当てはめる

自動車部品

自動車部品では、質問票が取引先ごとに書式が違うことが実務の負担になります。回答文の型を1つ作っておき、取引先ごとの書式に転記する形にすると、数字と算定範囲を1か所で管理できます。生産現場の他の書類仕事は栃木の自動車部品製造×生成AI|業務改善5つの実践例を参照してください。

医療機器

医療機器メーカーは、品質文書で「記録と手順を残す」運用が定着しているので、排出量の算定範囲と根拠資料を同じ管理台帳に載せると運用が続きます。品質文書側の考え方は医療機器の品質文書を生成AIで作る4原則にまとめています。

食品製造・農業

食品製造や農業法人でも、小売や外食からの要請で排出量を聞かれる場面があります。ボイラーと冷蔵設備の電気がScope1・2の大半を占めるので、拠点ごとの請求書の整理から始めるのは製造業と同じです。

社内で回す手順

年に1回の更新を前提にする

排出量は年に1回更新し、算定範囲・排出係数の出典・取り組みの実施状況をあわせて見直します。取引先の質問票は前年の回答を土台に更新するので、回答資料と事実の箱を同じフォルダで管理します。

請求書の集計から算定範囲の判断、回答文の下書き、最終確認へ進み集計に戻る循環図
集計、判断、下書き、最終確認を年に1回まわす

担当を分ける

請求書の集計は経理、算定範囲の判断と回答の最終確認は工場長や品質責任者、回答文の下書きは総務や営業事務、という分け方が小規模でも回ります。補助金の申請書を書く段階では、補助金の事業計画書を生成AIで書く5手順の素材シートの考え方がそのまま使えます。

相談先を決めておく

省エネの余地は省エネお助け隊、削減目標はSBT認定取得支援、生産設備の見直しは製造工程脱炭素化促進事業、生成AIの使い方はとちぎビジネスAIセンターと、相談先を最初に決めておくと、質問票が来たときに止まりません。

よくある質問

Q. 排出量の算定を外部に委託しないと回答できませんか。

Scope1・2であれば、電気・ガス・燃料の請求書と県のCO2排出量計算シートで自社算定できます。削減目標の設定や認定取得まで進める場合は、県の中小企業向けSBT認定取得支援事業が委託費を補助対象にしています(要件審査あり)。

Q. 生成AIに排出量の数字を入れてもよいですか。

数字自体は入れてかまいませんが、社外向けサービスでは社名や取引先名と組み合わせないようにします。単価・生産数量・契約条件は入れません。

Q. 取引先から「SBT認定を取ってほしい」と言われました。

中小企業向けSBT認定には、Scope1とロケーション基準のScope2の合計が10,000 tCO2e未満などの申請要件があります。栃木県の支援事業は認定を取得することが補助要件で、追加募集は令和8年10月30日までです。対象となる場合があります(要件審査あり・支給を保証するものではありません)。

Q. Scope3まで聞かれたらどうしますか。

まずScope1・2を出し、Scope3は「算定範囲を検討中」と回答範囲を明示するのが現実的です。算定の考え方は環境省のグリーン・バリューチェーンプラットフォームに整理されています。

Q. 県の支援は毎年同じ内容ですか。

受付期間と内容は年度ごとに変わります。この記事の数字は2026年9月時点で県の支援一覧に掲載されていたもので、申請前に県のページで最新の受付状況を確認してください。

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参考・出典