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クリニック・歯科医院の生成AI活用と線引き|栃木

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クリニック・歯科医院の生成AI活用と線引き|栃木

診療所や歯科医院でも「文章を書く仕事」は毎日発生します。院内掲示、患者向けの案内、求人票、スタッフ会議の議事録、研修の資料。どれも診療そのものではないのに、院長や事務長の時間を確実に削っていきます。生成AIはこの部分に効きます。ただし医療機関には、他の業種にはない前提が1つあります。患者の情報が「要配慮個人情報」だということです。この記事では、その前提を先に確認したうえで、患者情報を一切使わずにできる使い方と、院内で先に決めておくルールを整理します。結論から言うと、線引きは「カルテの中身は入れない、院外に出す文章の下書きは任せる」の1本です。

この記事の要点

  • 病歴などの情報は個人情報保護法上の「要配慮個人情報」にあたる。診療所・歯科医院は通常の個人情報より厳しい前提で扱う。
  • 医療分野には個人情報保護委員会と厚生労働省による専用のガイダンスがあり、医療情報システムについては厚生労働省のガイドラインが別にある。
  • 患者情報を使わない業務だけでも、院内掲示・求人票・研修資料・議事録など7つの場面で生成AIが使える。
  • 院内ルールはA4半ページで足りる。使ってよい用途、入れない情報、確認者、保存場所、相談先の5行。
  • 栃木県内の医療機関は、とちぎ医療勤務環境改善支援センター(栃木県医師会内・電話028-622-2655)に労務や経営管理の相談ができる。

患者の情報は入れない|要配慮個人情報という前提

病歴は要配慮個人情報にあたる

個人情報保護法では、本人の人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴などを「要配慮個人情報」と位置づけ、通常の個人情報より慎重な取扱いを求めています。診療所や歯科医院が日常的に扱うカルテ、問診票、検査結果、レセプトの中身は、この要配慮個人情報にあたります。

患者の情報としてカルテ・問診票・検査結果は生成AIに入れず、院内掲示・患者向けの説明文・求人票の下書きは任せてよいことを左右に分けた図
生成AIに入れない情報と、下書きを任せてよい文章

つまり、一般企業が「顧客名簿を生成AIに貼るのはやめよう」と言っているのと同じ感覚では足りません。患者に関する記述は、氏名を消しても、生年月日と傷病名と来院日が揃えば個人が特定されうる、という前提で考える必要があります。

医療分野には専用のガイダンスがある

医療・介護の分野には、個人情報保護委員会と厚生労働省が示す医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンスがあります。院内の取扱規程や患者への説明文を見直すときは、法律の条文より先にこのガイダンスを見るのが早道です。

生成AIについて個別に書かれているわけではありませんが、「個人データを外部に提供する」「外部に取扱いを委託する」といった場面の考え方はそのまま当てはまります。生成AIサービスにプロンプトとして患者の情報を入力する行為は、この「外部に出す」側で考えることになります。

医療情報システムのガイドラインは別にある

電子カルテやレセプトコンピュータなど、医療情報システムそのものの安全管理については、厚生労働省の医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第7.0版 概説編が指針になります。

院内のシステムに生成AI機能が付いてくるケース(電子カルテベンダーが提供する要約機能など)は、この系統の話です。自分でChatGPTなどのサービスを開いて使う話とは分けて考えてください。ベンダー提供の機能を使う場合は、契約と仕様の確認がスタート地点になります。

患者情報を使わずにできる7つの場面

患者の情報に一切触れずに進められる業務だけでも、生成AIの出番は十分あります。

患者情報を使わずにできる7つの場面として院内掲示・患者向けの説明文・求人票・院内研修の資料・会議の議事録・業者とのやりとり・ホームページの更新を放射状に並べた図
患者の情報に触れずに生成AIを使える場面
場面 生成AIに頼む内容
院内掲示 休診日の案内、受付時間変更のお知らせ、感染対策の掲示文の下書き
患者向けの説明文 一般的な処置や検査の流れを、中学生でも読める言葉に直す
求人票・採用文書 歯科衛生士・医療事務の求人票の文面、面接で聞く質問の候補
院内研修の資料 接遇研修や感染対策研修の骨子、確認テストの問題案
会議の議事録 手元のメモを議事録の形に整える(発言者名は記号に置き換える)
業者とのやりとり 見積依頼、備品の発注メール、断りの連絡文の下書き
ホームページの更新 診療科目や設備の説明文を、古い表現から今の表現に直す

どれも「院外に出す文章」か「院内で使う一般的な文章」です。カルテの要約、紹介状の下書き、症状からの鑑別の相談はこの表に入れていません。

多言語の案内は用途を限る

日光や那須に近い地域の医療機関では、外国人の患者向けに英語や中国語の案内が要る場面があります。掲示物や問診票の様式を訳す用途であれば生成AIで下書きして構いません。

一方で、目の前の患者の症状を訳しながらやりとりする用途は別です。訳し間違いが診療の判断に直結するため、通訳サービスや院内の対応手順を先に決めてください。掲示物の翻訳は下書きとして使い、公開前に日本語と並べて読み合わせる。この2段構えが現実的です。

議事録は「誰が言ったか」を外す

スタッフ会議の議事録は生成AIと相性がいい仕事ですが、人事や勤務の不満が出る場でもあります。メモを渡すときは発言者名をAやBに置き換え、患者を特定できる話題(「先週の◯◯さんの件」など)は行ごと削ってから渡してください。

院内で先に決める5行のルール

規程を作り込む必要はありません。A4半ページ、次の5行で始められます。

院内で先に決める5行のルールとして使ってよい用途・入れない情報・確認者・保存場所・相談先を五段で示した図
A4半ページに書く5行
  1. 使ってよい用途:院内掲示、患者向け案内、求人票、研修資料、議事録、業者連絡、ホームページ原稿の下書き。
  2. 入れない情報:患者の氏名・生年月日・傷病名・検査結果・画像、保険証番号、スタッフの個人情報、業者との契約条件。
  3. 確認者:出力をそのまま使わない。掲示物と患者向け文書は院長、求人票と労務関係は事務長が目を通す。
  4. 保存場所:出力をコピーした先のファイルは院内の共有フォルダに置く。個人のスマートフォンに残さない。
  5. 相談先:判断に迷ったら院長に確認する。制度の解釈は所定の窓口に問い合わせる。

この5行を印刷して受付の内側に貼るだけで、「これは入れていいんだっけ」という都度の迷いがかなり減ります。

無料版と有料版の違いを確認しておく

同じサービスでも、入力内容が学習に使われるかどうかは契約の種別や設定によって変わります。院内で使うアカウントを決めるときは、提供事業者が公開している利用規約とデータの取扱いに関する説明を確認し、確認した日付をメモに残してください。規約は改定されるため、「一度確認したから大丈夫」とは言えません。

なお、どの設定にしても、患者の情報を入れない方針そのものは変えないほうが安全です。設定の確認は「入れないルールの上に重ねる保険」と考えてください。

とちぎ医療勤務環境改善支援センター|栃木県内の医療機関が使える相談先

設置は栃木県、窓口は栃木県医師会内

栃木県は、県内の医療機関における勤務環境改善の取組を支援するため、とちぎ医療勤務環境改善支援センターを設置しています。県のとちぎ医療勤務環境改善支援センターについてによると、窓口は一般社団法人栃木県医師会内(宇都宮市駒生町3337-1 とちぎ健康の森内)、電話は028-622-2655、受付時間は平日の9時から17時まで(土日祝日、年末年始を除く)です。

とちぎ医療勤務環境改善支援センターが一般社団法人栃木県医師会内にあり、電話028-622-2655、平日の9時から17時まで、組織・経営管理や労働時間管理等に関する相談対応を行うことを示した図
とちぎ医療勤務環境改善支援センターの窓口情報

支援内容として、普及・啓発および情報提供、組織・経営管理や労働時間管理等に関する相談対応、医療勤務環境改善マネジメントシステムの導入支援が挙げられています。なお同ページには、新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から当面の間アドバイザー派遣は行わず、電話またはメールでの対応としている旨が記載されています。訪問を前提に段取りを組む前に、現在の対応方法を電話で確認してください。

何を相談すると噛み合うか

生成AIの使い方そのものを教えてくれる窓口ではありません。噛み合うのは次のような相談です。

  • 事務作業の見直しを含めた勤務環境改善の進め方
  • 労働時間管理の整理と、就業規則や労使協定の考え方
  • 職員の定着に向けた組織・経営管理の相談

「事務の負担を減らしたい」という入口は同じでも、制度側の整理はこのセンター、文章づくりの効率化は生成AI、と役割を分けたほうが両方とも進みます。ツールの選定や社内展開の進め方を相談したい場合は、とちぎビジネスAIセンターが窓口になります。

県が公表する名簿と自院の情報|栃木の医療の事情から考える優先順位

県の名簿は令和8年4月1日現在

栃木県は病院・診療所名簿を公開しています。掲載区分は病院、診療所、歯科診療所、救急告示医療機関、公的病院で、令和8(2026)年4月1日現在の情報に基づいて作成されています。県のページには、掲載内容から変更がある場合があるため最新の情報は各医療機関に直接確認するよう注記があります。

県の名簿・自院のホームページ・院内掲示・求人票の4か所を並べて突き合わせ、表現が食い違っている箇所を洗い出す流れを示した図
記載のずれを見つけるための突き合わせ

自院にとって実務的な意味は2つあります。1つは、県の名簿に載っている自院の情報(名称、所在地、診療科目)が今の実態と合っているかの確認。もう1つは、名簿・自院のホームページ・院内掲示・求人票の4か所で、診療時間や診療科目の書き方がずれていないかの確認です。

この突き合わせは生成AIが得意な作業です。4か所の記載をテキストで貼り、「表現が食い違っている箇所を列挙してください」と頼めば、目視より速く差分が出ます。ここには患者の情報は含まれません。

県は医師確保を施策として並べている

栃木県は医師の確保のページで、獨協医科大学・慶應義塾大学医学部・自治医科大学の栃木県地域枠、栃木県医師修学資金制度、栃木県キャリア形成プログラム、とちぎ地域医療支援センター、栃木県地域医療対策協議会といった施策を並べています。

県がここまで施策を重ねているという事実は、県内の医療機関にとって「人を増やすのは簡単ではない」という現実の裏返しでもあります。増員で解決しにくいなら、既にいる人の時間の使い方を変えるしかありません。診療に関わらない書類仕事から先に軽くする、という優先順位はここから出てきます。

先に手をつける順番

診療所の規模では、次の順番が現実的です。

  1. 頻度が高く、患者情報を含まず、失敗しても影響が小さいもの(院内掲示、業者への連絡)
  2. 頻度は低いが時間がかかるもの(求人票、研修資料)
  3. 外部に出る文章で、確認の手間が増えるもの(ホームページ原稿、患者向け説明文)

1から始めて、院内で「思ったより使える」という感触が共有されてから2に進むほうが、結果的に定着します。

使いはじめの1週間で試す順番

7日分の割り当て

  • 1日目 アカウントを1つ決める
  • 2日目 5行のルールを紙に書く
  • 3日目 院内掲示を下書きする
  • 4日目 議事録の形に整える
  • 5日目 求人票の文面を下書きする
  • 6日目 4か所の記載を突き合わせる
  • 7日目 直した箇所を見返す

1日目は、院内で使うアカウントを1つに絞り、利用規約とデータの取扱いに関する説明を読んで確認した日付をメモします。2日目に5行のルールを紙に書いて受付の内側に貼り、3日目は直近の院内掲示を1枚だけ下書きして院長が直し、直した箇所を記録します。4日目はスタッフ会議のメモを議事録の形に整え、発言者名は記号に置き換えます。5日目は求人票の文面を下書きして現在掲載中のものと比べ、6日目は県の名簿・自院のホームページ・院内掲示・求人票の4か所の記載を突き合わせます。7日目は3日目から6日目で直した箇所を見返し、次に頼むときのプロンプトに反映します。

使いはじめの1週間で試す順番を、1日目のアカウント決定から7日目の見返しまで7段の階段で示した図
1日目から7日目までの進め方

1週間後に確かめること

この1週間で扱った情報の中に、患者を特定できるものが1つも含まれていなければ、線引きは守れています。含まれてしまった場合は、その時点で入力内容と保存先を確認し、5行のルールの2行目を具体的に書き直してください。

守秘義務のある職場での線引きは税理士・社労士・行政書士事務所の生成AI活用と守秘義務と介護の記録と書類に生成AIを使う線引きと7つの用途でも同じ考え方で整理しています。院内ルールを文書にする型は生成AIガイドラインの作り方|A4 2枚・必須6項目を参照してください。

よくある質問

Q. 患者の名前を伏せれば、症状の記述を入れてもよいですか。
A. 避けてください。氏名を消しても、年齢・性別・傷病名・来院日などの組み合わせで個人が特定されうるためです。症例の相談は生成AIではなく、院内の体制や専門の相談先で行ってください。

Q. 電子カルテに付いているAI機能は使ってよいですか。
A. 自分でサービスを開いて使う場合とは別の話になります。ベンダーが提供する機能は契約と仕様の確認が起点で、医療情報システムの安全管理に関するガイドラインの系統で考えることになります。導入前にベンダーへ、データの保存場所と学習利用の有無を書面で確認してください。

Q. 歯科医院でも同じ考え方でよいですか。
A. 同じです。診療録や検査画像が要配慮個人情報にあたる点は歯科でも変わりません。院内掲示、予約案内、求人票、技工所とのやりとりの下書きなど、患者情報を含まない文章から始めるのが安全です。

Q. 院内ルールは誰が作ればよいですか。
A. 院長と、事務を統括する人の2人で足ります。A4半ページの5行から始め、実際に使いながら「入れない情報」の行を具体的にしていく進め方が現実的です。

Q. 栃木県内で医療機関向けの相談窓口はありますか。
A. 勤務環境改善や労働時間管理については、とちぎ医療勤務環境改善支援センター(栃木県医師会内・電話028-622-2655・平日9時から17時)があります。生成AIツールの選定や社内展開の相談は、とちぎビジネスAIセンターが窓口です。

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参考・出典